第12話 連行

アイリスが丁寧に男達を背負って外に置く中、


俺は手に持ったら放り投げ、


アメルも魔法で浮かしては外に吹っ飛ばすという雑な対応で


何とか死傷者を0に抑えられた


......はずである。



そうして全員外に出てものの数分で、


目の前で轟々と全てを焼き尽くす炎をを見て


改めて火事とは恐ろしいものだと感じた。



そんな風に他人事で野次馬と共に燃ゆる火を眺めていると


治安維持活動に当たるこの街の騎士達が現れた。



「皆さん下がって下さい!」


「消化隊が駆けつけますので道を開けて下さい!」



馬に乗った騎士たちが銀色の鎧に包まれて人の波を分けて行く。


大きい街だけあって格好も立派なものだ、


馬にも装備がなされている。



そんな騎士様の先導の下、


後から防火用の赤い法衣を纏ったアメルと同じトンガリ帽子の人たちが現れて


背丈ほどある杖から腰くらいまでしかない

大小さまざまな長さの杖で宙に弧を描いて


魔法陣からドッと水があふれ出た。



中には白く泡な様なものを出す人もいて、


消火剤を出すことも出来るみたいだ。



故郷は辺境の孤立した村だけあって火事など起こったところは見たことが無く、


あったとしても魔法も使えないそこの村人達が解決しなければならないのだから


一旦火の手が上がれば収集はつかないだろう。



そんなことを思うと最後に見た自分の村の有り様を思い出す。


どの家も目の前の火事と同じような状態であった様に思う



もはや7年経った今では灰すら残ってはいないのではないだろうか......?



火の弾ける音と焦げた臭いに包まれて茫然としていると


背後に聞こえるアイリスと誰かが話す声で我に返る。



「なるほど、ではこの者達が?」


「はい、そうです」



振り返ると消火隊の人と同じように

法衣を着た人が事情聴取のようなことをしている。


しかし法衣の色は黒で、どうやら役割が違うらしい



周辺を見ると倒れているならず者達を虫眼鏡のような大きなレンズで、


もう片方の手をかざして文字を浮かび上がらせて検視している。



この火元の原因を探る情報を見つけ出す、


現場調査係と思われる人もいつの間にか駆けつけていたのだ。



アイリスと話していた人がこちらに気付くと


一旦話を切り上げて俺の方に歩み寄って来た。



「どうも、検査魔法部隊の者です。


 捜査のご協力宜しいでしょうか?」


「は、はい」



ハキハキとした口調に承諾を思わずしてしまうと、


その人も大きなレンズを取り出して俺の頭から足先までを調査される。



一体それで何が分かるのか疑問に思っていると、


青く表示される文字が俺の腕を調べている時に赤く変色した。



「あなたは......つい最近右腕で魔法を使いました?」


「......はい?」



急な質疑と身に覚えのない詮索で驚く。


そこにすぐさまアイリスが来てくれた



「ああ、違うんです


 彼はあの者達との戦闘の際に魔法を被弾しただけで――」



「ハッキリと彼の腕からは火炎(フュー)系の魔分の反応が出ております。


 それも発火や火傷を引き起こしやすい有害性の高い部類に入るものですね」



擁護する彼女の意見を遮って、


その人は淡々と事実を説明する。



「念のため、彼を連行します」


「え?」



そう言うとすぐさま両手をグッと掴まれて


青白い光を放つ透明な太い手錠な様なものを魔法で掛けられた。



「ま、待ってください!


 彼は被害者なんですよ!」


「重要参考人として、とりあえず連れて行くだけです。


 安心してください勇者様。


 貴女のように仲間のこの方も高潔な方であれば、


 潔白がすぐに明るみに出ることでしょう......では」



歩きだしたその人に連られて


俺も鎖に繋がれているように身体を引かれる。



背後にアイリスが俺を呼ぶ声が聞こえて振り返ろうとしたが、


視界は段々と白み始めた。



真っ白な光が差して思わず目を瞑って


再び目を開けると




目の前は堅牢な


いかにも広い牢獄のような場所だった。


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