第11話 ならず者共VS村人

「へっへっへ......」



気味の悪い自信家共がうじゃうじゃと寄ってくる。


栄えている街だからこそ、こういう虫けら共も明かりに吸い寄せられるように


集まっているのか



穏便に済ますために人を掃けさせようとして


喧嘩の種を蒔いてしまった。



「あんまり大ごとにすんなよ~」



後ろからアメルの気の抜けた声が聞こえる。


この程度の相手には怖気つくような女ではないらしい、


どころか先ほどチラッと見えたのは呆れ顔だった。



もしかしたらアイリスの実力が見たかったというのに、


俺がしゃしゃり出てきてしまったがために辟易としているのかもしれない。



「うらぁ!」



無駄なことを考えていたために勇んで殴り掛かってくる奴への対処が遅れた、


かに思えたが片腕はもう敵の拳を受け止めていた。



そして出来るだけ軽く出した右腕のボディストレートは


相手の男を周囲に出来た人ごみまで飛ばしてしまった。



次に迫る敵のフックも上体を下げて難なくかわして


今度は最小限の力で体当たりをしたつもりだが、


近くのテーブルを壊す勢いで吹っ飛ばしてしまった。



「ほら、力抜けよ~」


「わ、分かってるよ!」



アメルが神経を逆撫でするように野次を飛ばしてくる。



敵を軽々倒しているというのに腹が立つ、


全くもってこの力


制御が利かない。



その後も様々に試したが、


気付けば辺りは大荒れに。


散らばって寝転がる男共と所々損壊した店の内部。



誰一人向かって来る者がいなくなると


響き渡る拍手の音、


見世物のショーをやったかのような歓声に


怒る気力も失った。



「派手にやったもんだね~


 お供2号さん?」



俺の肩に手を乗せてご機嫌なアメルの顔は嘲笑するかのようだ。


きっと自分の力のコントロールも出来ない俺を見て、


自分の方が勇者の右腕として相応しい


とでも言わんばかりの感じだ。



「お前はもう少し上手くやれたって言うのかよ?」


「そりゃあ、当然。


 アタシなら華麗に得意の――」


「危ないッ!」



自慢げに話す彼女の話を聞いていたら


突然アイリスの叫びが耳に入った。


それと同時にこちらに迫る熱気を感じた



すると駆け寄る鎧の音と熱気を持つ何かが

アメルに当たりそうになったのを見た直後、


フッと意識が消えて


また意識が戻ると、目の前に火の玉が飛んでくるのが分かって


咄嗟にそれを右腕で弾いた。



火の玉はしっかりと俺の払った腕に捉えられて


遠くに弾き飛ばされた。



一瞬焦げた臭いが懐かしかったが、


煙も熱さも一瞬にして消えた。



その先に術者と思われる男は気を失って倒れた。


先ほど俺に軽々とやられて自棄になった奴の最後っ屁だったのだろう



「俺を狙うならまだしも連れを狙うなよな......」



アメルの無事を確認しようと振り向くと


二人とも目を丸くしていた。


いつの間にか俺は二人の前に立っていた



「大丈夫か? 二人とも」



ゆっくりと頷く二人が何か滑稽に見えるが、


無事でよかった。


一息ついて元の席に座る俺をまだ驚いて見てくる。


そんなに驚くようなことだったのだろうか?



そう一人、変に落ち着き払っていると


今までガヤガヤしていた観衆の一人が叫んだ。



「も、燃えてるぞ!」



その声に



「え?」



思わず振り向いた先は、


どう見ても俺がさっき弾いた魔法が出火元の位置だった。



それが周りも分かると大パニックになって大勢の人が出口に殺到する。



「おいおい、嘘だろ!?」



自分も慌てて席を蹴っ飛ばして逃げ出そうとした時、


誰かに腕を掴まれた。



「待ってください、ウィン!


 手伝ってください!」



そう助けを呼ぶアイリスの腕にはすでにならず者の男が担がれている。


奥ではアメルが魔法で何人かの男を宙に浮かしている。



「たとえ荒んだ者達でも、見殺しには出来ない!」



パチパチと火が爆ぜる音と黒煙に包まれる中、


彼女はそう叫ぶと救助活動を再開した。



それを聞いて俺も大きく息を吐いて


勇者様の優しさに感服しながら、


近くにまだ埋まっている事の発端の男から助け始めた。

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