昇らせてから、落とす。#19
母を入院させることになった。
目的は、市販の下剤を飲み過ぎるのをやめさせ、必要な薬をだけをきちんと飲む服薬管理、今までの下剤飲み過ぎで胃腸がおかしくなっているようだったらそれも治療する、便通についてのこだわりや思い込みをなくし(必要なら眠剤だけでなくメンタル系の薬を使用?)、退院後にまた元の状態に戻らないように意識づけする、規則正しい睡眠と適切な食事をさせて健康を取り戻し、できれば、進みつつあるように見える認知症を少しでも健常な方へ引き戻すか、これ以上進まないように心身によい刺激を与える、と同時に入院によって足腰が弱るのも防ぐ、など。
FAXで送った書類——母の病歴や現況とこちらの心配や希望を書いたもの——にも、そんなようなことを書いた。
病院スタッフやほかの患者さんと常に接する環境で、デイケアのような場もあり、体も治せるのだから、入院はベストの方法と今さらながら納得し、期待していた。
病院からは、用意ができたら連絡すると言われていた。電話を待つ期間が、すごく長く感じた。一刻も早くという思いだった。
こっちの気持ちは万全で、母も折りに触れて「いつ入院するの?」と訊いてくる。最初はあんなに全力で拒否していたのに、本人も今のまま一人で自分の状況と闘い続けるのがつらくなっていたのだと思う。
そして、ついに電話が来た。
それ以前の電話の段階では、だいたい○日ごろと具体的日程を言われていて、それまでに病院側がベッドを確保できるか調整する、確保ができたらその日に入院の用意をしてきて、まずは診察を受けて、そのまま入院という段取りだった。
その日の電話では、まず前回言われていた日に病院に来てもらうというところまでは確定したとのことだったけれど、ホッとしたのも束の間、「先生が、その日にまずは診察してみて、本当に入院が必要かどうか、それがうちでいいのかなどを、そのあとで判断したいと言っている」と言われたのだ。
驚いて、「てことは、行っても『入院必要なし』となったら、そのまままた家に帰るってことですか?」と訊いたら、その可能性が高そうです、と、前回までは親身になってくれていたソーシャルワーカーの困ったような、でも先生がそう言うのだからどうしようもないという感じの答えが返ってきた。
そうなると、私にはその診察すら必要ないような気がしてきた。別の病院で、今のメンタルクリニックと同じことを繰り返すだけではないか。それどころか、時間も手間もお金も二度手間のムダに終わり、時間だけをロスする結果に終わる予感。
ガク然とした。
私たちも本人も、すっかりその気になって心待ちにしていたのだ。
特に、一人で奔走していた私は、母が心配な気持ちはもちろん、どうしたらいいか、何をしたらいいかわからない焦燥感、何かやってみてもいっこうに結果が得られない手詰まり感、なにより、行動してみても毎回「跳ね返される」感覚が重なって、すでに心が折れていた。
だから、入院できそうとなって、救われた思いで心底ホッとしていたのだ。
落胆はあまりに大きく、もう本当に終わったと思って涙が出た。
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