入院先を自分で探す?#16

かかりつけのメンタルクリニックで、いきなり入院の方向へ動きそうになった母の「思い込み便秘と下剤による下痢」。


ソーシャルワーカーの方が入院設備のある精神科リストを持ってきてこう言った。

「ご家族が通いやすいとかいろいろ希望があるでしょうから、この中から『ここがいい』という病院を選んで、いつ入院するかなどをお決めになってください。その後、ご連絡いただければ紹介状を書きますから」

そして、公共交通機関の駅から近いとか、妹の住むところから近いとか、リストを見ながら簡単な情報をくれた。自分で交渉するのか…とは思ったけれど、しょうがない。


妹にことの顛末を相談すると、母が入院を受け入れたことに驚くとともに、そんな入院が可能なのかとやはり半信半疑な様子。でも、病院のようなところで治療もしながら生活もきちんと管理されるなら、願ったり叶ったりじゃないか、とのこと。


というわけで、ソーシャルワーカーの情報を参考に、近場と便利そうな場所の3軒ほどに電話してみた。


1軒目は、そういう方は受け入れられないとの返事。


2軒目は、認知症患者を長期的に受け入れてる病院らしく、かなりの重症者が多いと言う。

先方によると、うちの母くらいの軽度の認知症の人は、その雰囲気に違和感を感じて「早く退院したい」とすぐに出たがる例もありますが、大丈夫ですか? とのこと。

それに対しては、入院すると本人が覚悟したからには、それくらいは私たちで何とか説き伏せる、とにかく今すぐ体の状態を治したくて、もう一刻も現状のまま置いておきたくない、ここまでですでにだいぶ時間をロスしてきているから、と説明した。


その中で、例の、指を入れて搔き出そうとする件も伝えた。指では届かないと思って長い棒を入れる例もあり、そうなると外科的な大事に至ることもある、絶対にやめさせた方がいいと、先日の介護相談センターに言われたからだ。他人事じゃないと不安だった。


すると、なんと、「そういうことなら、拘束具をつけることになりますね」と当たり前のように言う。


こ、拘束具!?


多くの重症の認知症患者を見てるため、一人一人にきめ細かく目を届かせ、手をかけることができないそうだ。母はギリギリ入院は受け入れたが、拘束具までは到底受け入れるわけがないし、理解もしないだろうし、私もそんなことはイヤだった。

全部の話を総合して、そこは諦めることにした。


3軒目。

実は、以前に、かかりつけのメンタルクリニックが頼りにならないので、母や妹の住所から近いということもあって、相談の電話をしたことのある病院だった。その時は、診察してみてほしい、助けてほしいという相談だったのだけど、便秘がらみ(内科)の話ということもあり、あまり積極的な対応が見られなかったので、乗り気(?)じゃないのだろうと思って話を終えていた。

なので、再度電話するのは気が重かった。


今度は、かかりつけ医から入院をすすめられ、入院先リストに貴院があったので、と言った。すると、ソーシャルワーカーが担当の医師に確認を取り、具体的な時期まで決定した。


心底心底、ホッとした。あとは、それまでの2週間ちょっとを何とか乗り切ることだけ考えよう。

ただし、その病院も認知症患者用の病床が少ないながらもあると言うので、2軒目のように間違っても拘束具という話にならないように、母のこれまでの状況、今の状態について、さかのぼって順を追ってていねいに説明する企画書のようなものを書いてFAXを送った。家族の希望や不安に思ってることなども添えた。

すごい手間だったが、行き違いや誤解があって、こんなはずじゃなかったとなると、せっかくの母の決心も無になる。それを思えば、どんなに念を入れても入れ過ぎということはないはず。このチャンスを絶対に生かす! と思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る