第76話 剣士で魔法使い、でも本当は…
「ハイ! それじゃあ今日はここまでにしましょうね! みなさん、オツカレさまでした」
メアリーが告げると、一緒に習ってる男どもはバラバラに散って行った。
剣士ジジも、もうヘトヘトだった。
なんだ、魔法ってもう少し楽かと思ったけど、意外に体力使うんだよなー
言葉だけでは、認識エンジンが作動しないのかなあ? とジジが色々と考えながら、サキのいる剣士練習場に移動しようとした時だった。
背後からいきなり豊かな胸が当たって来た。
え! これはメアリーさんの胸? ジジは驚いた。
慌てて振り返るとそこにはメアリーがニコニコしながら立っていた。
「さすがジローさんね、背中からの接触感覚でメアリーの胸を判別出来たのね」
ジジは一瞬メアリーが何を言っているのか分からなかった。
「何でメアリーさん、僕の本名知ってるの?」
「ゴメンナサイね。仲間の女の子のプレイヤーさんと引き離す形にしちゃって。初めまして。私は、運用管理第五課のメアリーと言います。アメリカ人の父と日本人の母を持つハーフです。メアリーはプレイヤー名であり、かつ本名です。一応ボディサイズは、ほぼ現物と一緒よ。胸も拡張してないの」
メアリーはそう言いながらジローに向かって胸を張りだす。薄いスポーツシャツ一枚を羽織った彼女の胸は張り裂けそうだ。しかもブラジャーを付けてないのがハッキリわかるのだ。ジローの目は、彼女の胸のポッチにくぎ付けだ。
「今日は君がここでお試しをするってシステム管理のマサさんから聞いていたから、実は狙ってたの。あの、噂のジローさんてどんな人なのかな? と思ってね」
「えー! 五課の人はNPCじゃなくてプレイヤーとして参加しちゃってるの?!」
「シー」
彼女はそう言って、ジローの口元に彼女の人差し指を立てる。石鹸のいい匂いがジローの鼻孔をくすぐる。
「これは未だ試験段階だから秘密よ。NPCの場合は、出現場所が限定されてしまうので自由に動けないの。そこで試験的に、管理者をプレイヤーとして参加させる方法を検討しているの」
彼女は周りを気にしながら、ジローの耳元で囁く。ジローの耳は完全にダンボ状態だった。
「ただし、本当のプレイヤーとの戦いは出来ないから戦闘フィールドには出られない制約は残るけどね。でも、街中はほぼ制限なしで移動出来るから、かなりの運用活動が行えると思っているわ」
「ふぇー、そんな話課長からは聞いてないんですけど」
「だって最初から喋っちゃったら面白く無いでしょ? 第五課は、ジローさんがいた第六課とは違うのよ。そこら辺の話は課長からは聞いてないの? まあ、ウチの課長もチョット変わってるから言ってないのかもね」
メアリーはジローの目と鼻の先まで近づいて、悪戯っぽく笑う。ハーフらしい青い目と少し色素の少ない顔が印象的な感じだ。
「ジローさんがいた六課は課長さん含めて真面目な人が多いけど、五課は結構個性が強い人が多くてね。仮想世界の規模が大きいとある程度独自裁量で処理しなければならない事が多いの。そういう仕事には個人の資質というか自分のポリシーというか、そういう物が大きく依存するのね」
メアリーは、今度はいきなり真面目な顔をする。しかし、ジローの顔の真正面にそれこそ口づけするぐらいの勢いで迫って来る。
「ある程度自分で処理するとか、対応するとか、そういう環境に合う人には良いけど、生真面目な人には結構プレッシャーになっちゃうんだよね。ジローさんの代わりに五課を移動した人は、大学の成績が優秀な人でね、そこを認められて第五課に配属になったんだけど、頭が良すぎたのね」
そこで、ふっとジローから離れる。
「軽いノイローゼになっちゃったんだよね。それでどうしようか? っていう時に、懲罰委員会とケンカした奴がいるという話をウチの課長が聞きつけて来たの」
そして、拳銃でも打つ感じで、いきなりジローに向かって人差し指を向ける
「それなら、五課と六課で人事交換ね、という事になった、と聞いてるわ」
まあ、メアリーさんの言ってる事は大体は当たってるかなあ……とジローは心の中で考えていた。
「まあ、それやこれやで、興味があったのでジローさんを誘惑したら、モノの見事に釣れちゃった、という訳っ。ゴメンね、ジローさん。後で相棒のプレイヤーさんに謝っておいてね」
そう言いながら、両手を合わせてジローにむかって拝むふりをする。
「あ! そうか。相方プレイヤーも可愛い子だものね、もしかしてジローさんの彼女さんかな? 悪い事しちゃったかもね。でも私が五課の人間だという事は秘密だからね。そこんとこ、ヨロシク!」
そこまで言うと、メアリーは自慢の胸をはち切れそうにしてジローの元から去って行った。
結局は、僕は胸の誘惑に負けた剣士崩れのダメダメ魔道士というキャラになるのかなあ? ……ジローは自問する。
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