第72話 天空の城 レベル1
「やっと来たぞー、レベル1!」
「まあジローさん、レベル1で喜んでるなんて初心者みたいね」
「だって初心者だもの、仕方ないでしょ? 愛ちゃん、じゃなくて……」
「あ! そうか、私の名前を教えて無かったわね。ごめんなさい、ジローさん、じゃ無くて剣士ジジさん」
「初めまして、私の名前は、剣士サキです」
「え! 前と同じ名前にしたの?」
「だって、既にこの名前馴染んじゃってるから。新しい名前を付けても混乱するだけでしょ? 出来る限りリアルの名前から連想出来る様にするという、ジジさんと同じ考え方ですよ」
「お! そう来ましたか。了解でーす。剣士サキさん」
「それでは、剣士サキさん、僕たちはこれからどういう行動を取れば良いのですか?」
「そうねー、先ずは聞き込みからね。私もこの世界は初めてだからジジさんと同じ情報しか持ってないから……。最初はとにかく情報を集めるの。イキナリ、町から外の戦闘フィールドに出るのは危険というより無謀なの」
「ふーん、そうなんだ。勉強になるなあ。僕らからしたら、すべての情報は手に入るけど、プレイヤーはゼロからのスタートだものなあ」
「そうよ、この世界ではどれだけ情報を手に入れるかが基本なの。それに同じ情報と言っても、質の良い情報をね」
「え? 何それ? 情報にも色々あるの?」
「ええ、そうよ。昔のRPGでは、断片的な情報しか手に入らないけど、情報にはウソが入っていなかったの。だから、それと同じで初期のVRMMOでも、正しい情報を断片的に提供する方式だったんですって」
剣士サキは剣士ジジに経験者らしく人差し指を左右に振りながら語たる。
「だけど、今のゲームでは、それに満足しないプレイヤーが偽の情報を流すことがあるのよ。いわゆる、悪意のプレイヤーね」
「ふーん、そうなんだ。でもさ、それは運営管理者が取り締まれば良いんじゃないかな?」
「何言ってんの? ジジさん。ゲーム世界でプレイヤー同士の駆け引きには、管理AIですら干渉してはいけないのでしょう?」
「そうか、嘘の情報を流すのもプレイヤー同士の戦いの範疇になっちゃうんだね」
「そうなの。だから、信頼出来る仲間を探す事はすごく大事なの。私はそれが嫌で、ソロプレイヤーの立ち位置を取り続けてたの」
「そうか、そうだよなー。自分の背後を任せられるプレイヤーを探すのには時間かかるものね」
「NPCの情報は正確で嘘がない事は分かるけど、多分限定的な情報しか無いんだよね」
「そうよジジさん。だってそう作っているんでしょう?」
「シナリオ作成部門に知り合いはいないけど、もしも僕がシナリオ書くのならやっぱりそうするものね。ゲームとしては、その方が面白いからね。少ない情報を自分で考えて、あちらこちらにあるヒントを探しながら進むのがRPGのだいご味だものね。その中に、仲間からの共有情報も含まれるという事だね。仲間以外の情報を吟味するもの、確かにゲームの面白さにつながるのか。ふむふむ」
「ナニ言ってんのジローさん、じゃなくて剣士ジジさん。取り敢えず人の集まる場所に行きましょう! 先づは情報収集しないと、あっという間にお試しログインが終了しちゃうわよ!」
「ああ、そうだね。お試しログインはログイン時間に制限があるから、あまり余計な事に時間をかけられないものね」
「とりあえずは、酒場にいるバーテンダーNPCにチームのメンバーを募集する場所を聞いてこようか」
「ここのNPCも、コッソリと運営管理の人間がAIの代わりに入れ替わってたりするのかなあ? 外から見ても、区別できないもんなあ。まさか僕にだけ素性を教えてはくれないだろうし。何しろ、いつもは管理側の人間だけど、今は一般のプレイヤーと同じ立場になっているんだものね。もしも僕が、酒場のNPCが管理側の人間にすり替わっているのに気付いちゃっても、サキさんに教えたらアウトだよね」
「取り敢えず、行きましょう! 剣士ジジさん」
「そうだね、剣士サキさん!」
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