第62話 週末の二人

 うーんっ! 今日も朝日がまぶしいわ。おはようございます、朝日さんっ!


 今日は、いよいよジローさんとの初デートだわ。やはり、清楚な服の方が、ジローさんは喜んでくれるかしら。薄青色の長めのワンピースに、赤い靴かしら。

 お化粧はファンデーションに、ピンクの口紅を付けて。コンタクトも良いけど、メガネ女子の方がジローさんの好みかな? あ、どうしようメガネフレームの色、黒ぶちかピンクか? ジローさんはクロが好きかな、それとも学校で使っているピンクにしようか。すごーく迷う。攻めるならピンクかな!


 持ち物は、ポシェットに口紅とハンカチとティシュッを入れて、と。それと歯ブラシセットもね。あ、お財布は忘れないようにしなきゃッ。

 それと、一応安全日だけど生理用品も持っていこうかな。お友達の中で、初デートで緊張し過ぎて、いきなりあの日になっちゃって、大変だったって聞いた事があるから、用心するに越したことはないわよね。

 女の子って、本当に持ち物多くて大変なのよね。


 そうそう、スマホケースは可愛いくてお気に入りのネコミミちゃんにしようかな。

 それで、持ち合わせ時間の1時間前ぐらいに着いていたいなあー。


 あと、これは秘密だけど……、今日は勝負下着で行くの。だって何があるかは分からないでしょう? 相手はジローさんだし、今日はこれからゲームの話をするためにケーキ屋さんに行くだけだけど。

 だけど、女の子としては、大好きな人とデートする時は、どんな時でも勝負の時なの。


 先週、学校帰りに都心のお店に行ってコッソリと買ってきたのよね。今日のパンティーとブラジャーはそこのお店のお揃いの物なの。高校生らしい可愛いピンク色にワンポイントが入ってるけど、チョットだけ冒険して縁取りは真っ赤なの。

 本当は、黒のお揃いも買っちゃったけど、流石にまだクロの上下お揃いを履く勇気は無いわ。


 あ! でもパンティストッキングはクロよ。でも、ジローさんには今日は絶対に見せないつもり。それでも、下着も綺麗にしていくのは乙女のたしなみよね。きっとそんなこと男の人には分からないかもだけどね。


 最後に歯を磨いて、マウスウオッシュで口臭までチェックしてと。


 ああ、忘れちゃう所だった、うなじには、柔らかめの香水を付けていかなくちゃね。最後のポイントよ! あまり強い香水は、人によっては嫌う人もいるから、弱めにしておくのが、女子高生らしいかな。


 良し! 完璧よ、愛!


 これで、ジローさんもメロメロにしちゃおうっと。


 さてとッ。いざ出陣ー!

 パオー(これは法螺貝かな?)


 * * *


 ここは、待ち合わせの駅。待ち合わせの時刻の一時間前。

 でも、なぜかあちらから嬉しそうに歩いてくるのはジローさん?


 え? ワタシ、時間間違えた? 慌ててスマホのメールを見返す。

 ……

 合ってる。待ち合わせは1時間後のここの場所。


 でも、向こうから来るのは確かにジローさん。瓜二つの他人でも、ジローさんのドッペルゲンガーでも無い。

 もしかしたら、ジローさんが時間を間違えたのかしら?


「サーキーちゃーん!!!」


 地面から5センチメートルくらい飛び跳ねながら、ジローさんが私のところまで嬉しそうにやって来た。


 挨拶も抜きに、サキはイキナリジローに聞いた。


「ジローさん、時間間違えてませんか? まだ1時間早いですよ?」


「うん! そうだよ! だって遅刻したらマズイじゃないか。だからちょっと早めに来たんだ」

 ジローは、にこにこしながら答える。


「ジローさん、早すぎですよー。1時間早いですよー」

 サキは、ジローに仕方なさそうに言う。


「え? だって、サキさんもここにいるじゃん!」

 ジローは、サキの質問の内容が不思議でたまらない顔をする。


「だって、ワタシは女子高生だから……、若い子が遅れて来たらダメでしょ? だから早めに来たんでスゥー」

 サキは少し胸を張りながら、ジローに答える。


「あ! それと、さん付けはやめて下さい。ワタシはジローさんより年寄りじゃないですから、サキちゃんか愛ちゃんのどちらかでお願いします」


「了解しました! それでは……、愛ちゃん、かな」


 そこで、一度言葉を切ってから。改めてサキを真正面に見る様にしながら頭をさげる。


「宜しくお願いします、愛ちゃん!」


「ハイ! ジローさん、こちらこそ。これから、長ーくお願いします!」


 其処には嬉しそうにほほ笑むサキとジローが居た。

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