第43話 帰り道
今日は、スーんごく疲れたなあ。
朝ご飯を食べてたら、トラブル発生でスナイパーのサキさんを助けて。その後は懲罰委員会に拉致されて、査問会でクビを言い渡されて。最後にセブンシスターズに助けてもらって。
これ、たった1日の話だもんなあー。
あ、お昼ご飯食べてないじゃん。家に戻るまで持たないから、目の前のファミレスに突撃だあー。当然ご飯は大盛りね。
ブルブル、ブルブル。
ファミレスでご飯を食べ終わって帰る道すがら、携帯に着信が入った。サキさんのお兄さんからだった。
「はい、ジローです。先程は、大変失礼しました。感情が表に出ちゃって。見ず知らずの人に、あそこまで言うのは自分でも珍しいんです。お兄さんの優しい声がなんか嬉しくって、つい。でも、やはり失礼ですよね。本当に申し訳ありませんでした」
そう言って、僕は思わず携帯電話に向かって頭を下げていた。
「イエイエ、良いんです。僕は気にしませんよ。だって、妹を助けるために一生懸命だったじゃないですか。もう、僕にとっては、あなたは見ず知らずの人じゃあ無いですよ。そんな貴方が感情的に話してくれるなら、僕は全然気にしませんよ。ところで、その後どうなりました? 解雇は取り消されましたよね」
お兄さんは、突然僕の解雇取り消しの話を聞いてきた。
「え? なんで、お兄さんはそんな事知ってるんですか。あ、定食屋のおっちゃんから聞いたのですか?」
「イヤ、違います。僕が社長に対して、不当解雇だから取り消してくださるようにお願いしました」
お兄さん、凄い事をさらりと言う。
「え! もしかして、お兄さんてセブンシスターズなんですか?」
僕はビックリして聞き返す。
「はい。ただしこれは、ここだけの話にして下さいね。あまり公にはしたくないのです」
そう言ってから、僕の救出(?)劇について話してくれた。
「定食屋のご主人から、君の件で相談を受けたんです。明らかな不当逮捕で懲罰委員会に拉致されたらしいって。このままでは、彼は会社のスケープゴードにされる可能性が非常に高いから、何とか対応してあげて欲しい、と。残りのセブンシスターズのメンバーにも俺が伝えるって、凄い剣幕でした」
定食屋のおじさん、実はお兄さんと知り合いだったんだ……。
「何よりも、僕が一番近くでジロー君の誠意ある行動を見ていたのだから、会社の対応が明らかに不当なのは理解出来ました。僕は、直ぐにセブンシスターズの緊急会議を招集して、この件に関して社長に圧力をかけたのです。当然、オブザーバーの定食屋のご主人にも参加してもらいました」
……しかも、なんか凄い影響力のある人なの?
「あのー、一つ聞いても良いですか? 定食屋のおっちゃんて、そんなに凄い人なんですか?」
「彼は超が三つ付くぐらい優秀なエンジニアですよ。『だった』と言うべきかな」
そこでお兄さん、一呼吸おいてからシステムの内輪話と定食屋のおじさんの凄さを話始める。
「実は量子コンピュータは、まだ不安定な部分が多いんです。それを、超並列にまとめ上げる技術は世界最大のコンピュータ会社であるアルファベット3文字のあそこの会社しかありませんでした。彼は、そこの優秀なエンジニアで、僕たちが設計した超並列量子コンピュータを実用化まで育ててくれた恩人なのです。喧嘩して会社を辞めてしまいましたが、未だに僕たちがお願いしてメンテナンスチームのリーダーとして非常勤ですがヘルプしてくれてるんですよ。彼がいなかったら、今のシステム運用なんかとてもじゃぁないけど出来ません」
「えー! キッチン奥でゲーム三昧じゃあ無かったんだ。定食屋のおっちゃんて、ホントは凄い人だったのね!」
僕はビックリして、携帯電話を落としそうになってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます