第20話 みんなの出番 2

「え!」


 ぐぁおふぉん、ぐふぇ、ぐふぁ、ぐふぉ。

 じゅるじゅる。じゅるん。

 べちょ。


 やばい。スマフォの画面を見てビックリした拍子に、食べてたスパゲティの具材が変な所に入ったようだ。口と鼻から色々なものが飛びててしまい僕のテーブルの上は阿鼻叫喚な状態になってしまった。


「どうした! ジローちゃん」


 僕の素っ頓狂な悲鳴で店のマスターが慌てて奥の厨房からフライパンを持ったまま飛び出してきた。

 店の常連さんも、どうしたんだ? と言う感じで一斉にこちらを見てる。


「ヘヤ、はいひたほほはいへふ(いや、大した事は無いです)」

 と言ったつもりだけど、またそこで咳き込んで、その後は言葉にならない咳ばかりがでて、目からは涙も出てきちゃった。

 うわー恥ずかしいなあ、もうこの定食屋さんには一生来られないじゃん、とか思ってしまった。


 取り敢えず鼻をかんで、口の周りもティッシュで拭いて水を一杯飲んでから、から咳を何度か繰り返したら、やっと落ち着いた。


「ゴメンねマスター、驚かせちゃったね。なんでも無いんだよ、別にモーニングのせいじゃあ無いからね」


 なんとか落ち着いてから、スマホの連絡用画面を見直して僕の担当してる『銃の世界』がある事を確認し、その詳細情報を見るために改めに緊急連絡画面から詳細情報画面に切り替えた。


 なになに、システムが『メンテナンスモード』になったり元の『ゲームモード』に戻ったりを高速で繰り返している? プレイヤーから見ると、特に変わった事は無いように見えるけど、これって凄いヤバい状態なんだ。


 『メンテナンスモード』ってプレイヤーが存在しない世界、イヤ言い換えるとプレイヤーが居てはいけない世界なんだよね。だってプレイヤーが勝手にゲーム世界で相手を見つけてファイトなんてされたら、システムのメンテナンスができないじゃ無いか。


 僕たちのようなシステム管理者と連絡出来る人間なら、メンテナンスで触ってはいけないオブジェクト(ゲーム世界でターゲットにしてる動物や怪物のことだよね)が『どれ』かを確認出来るけど、一般プレイヤーはそんな事は知ったことじゃ無い。


 もしもプレイヤーAさんがオブジェクトBのHPを100削ったとしても、オブジェクトBがメンテナンス対象の場合は分解不能オブジェクトになっているから、オブジェクトBのHPは減らないんだ。だから、プレイヤーAさんがどんなに頑張ってもオブジェクトBの怪物は倒せない。

 元々は簡単に倒せるような弱い種類のオブジェクトも、メンテナンスモードではゲーム世界最強の怪物になってしまう。そりゃあそうだよね、システムが味方なんだもん、無敵だよね。

 そのために、メンテナンスモードにはプレイヤーさんは入れないんだよね。


 ここで言いたいのは、メンテナンスモードではプレイヤーさんはいない前提でシステムが設計されていることなんだ。だから、もしもプレイヤーさんがいる状態でメンテナンスモードに入ると、プレイヤーさんは自分専用の仮装端末を開く事が出来なくなる。


 これって、自分のアイテムを取り出せなくて不便だけど、本当に一番まずいのはログオフできない事なんだ。

 大事な事だからもう一度言うね。


――『メンテナンスモード』では、プレイヤーはログアウト出来ない ――

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