第16話 H/W管理四課のユウさん
ぶひー、ぶひー、ぶひー。
あ! 今度はH/W管理チームからの定時報告メールだ。
なに、なに……。今日の27時から定期メンテナンスを行うので10分前にはプレイヤーがいないかどうか、最終確認をして欲しいとのことらしい。
おいおい、一日は24時間で27時なんて無いだろう?! って言う突っ込みが来る前に説明しておくね。
僕達は、夜間の時間帯も3交代で働いているから、3時とか言われても、午前3時なのか午後3時なのか、分からない事が多いんだよね。それで、午前3時の事を24時以降の時間をイメージしやすくするために、27時って呼んでいるんだ。
同じように、25時とから26時とか、当たり前に資料には出て来るんだよね。でも、そんな調子でいると普通の世界でもついうっかり使っちゃって、知らない人はびっくり仰天。
まあ定期メンテナンスっていっても、このゲーム世界が止まる訳ではないんだけどね。ただし、もしも万が一トラブルが発生するとログイン中の人間にどんな影響があるか分からないので、危険回避という意味でプレイヤーさんにはしばらくの間ログアウトしてもらうんだ。
お! 今日の定期メンテナンスは、H/W管理4課のユウさんが行うみたいだな。この人は、僕と同期の人なんだよね。研修中はよく一緒に夜中のラーメンを食べに行ったもんだよね。
じゅるじゅる。
おっといけない、思い出したらよだれが溢れて来るよー。
入社年度は同じだけど、ユウさんは大学院を出てるので僕より少し年配なんだ。でも、すごく気さくな人で全然年齢差なんか感じないんだ。
なんでも、大学院では超並列量子コンピュータとかいう、ここのシステムと同じ種類のコンピュータを研究していたらしい。その縁もあって、この会社に来たって話してくれたのを覚えているよ。
なんでも、ここのシステムは、64000台の超並列量子コンピュータの上に仮想マシンが載っていて、その仮想マシンの上に複数のVRMMO専用のOSが載っていて、さらにその上に仮想ゲーム世界が載っている、多層構造のシステムになっているんだよね。
H/Wのメンテナンスと言っても、64000台の内の一部分を停止させて定期的なメンテナンスを行うだけだから、仮想ゲーム世界では何が行っているかも分からないはずなんだよね。
普通のプレイヤーは、システム管理者から自分の仮想端末に「メンテナンスなのでログアウトをお願いします」とか言うメールが来たらその時間はログアウトするんだよね。
だけど、世の中には『天邪鬼』という人が居て、端末の連絡機能をわざと停止したり、無視したりする人がいるんだよ。
ゲーム世界を管理しているAIは、そういう人間の気持ちなんか分からないから、連絡を受けないでログインしている人への対応はしないんだ。
それに、システム管理チームの人たちもゲームの外から監視は出来るけど、ログインしている人たちをシステムから強制的にログアウトさせる事は原則禁止されている。(強制ログアウトはプレイヤーに対してかなりのストレスになるらしいので、本当の緊急事態以外は行っていないんだよね)
なので、結局僕達がゲーム世界の中をウロウロして、ログアウトをお願いする羽目になるんだよなあー。
まあ、システム管理者は、ログインし続けている不届き物が何処にいるかは調べられるから、僕達に連絡が来て、ログアウトをお願いするって寸法だよね。
はあー、大変だー。
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