第14話 運用管理第六課


 さてと……サキさんとも会話出来たし、そろそろ別のNPCに移動しないと。あまり同じ処にいると、ノルマがこなせないからね。まだ新人なのに、僕の担当ゲームは優に10を超えてるんだ。これって、十分ブラックな気もするけどね。


 実際には一人で10のゲーム世界を同時に見る事は出来ないし、基本的なゲーム・プレイヤーに対する管理・運用は各ゲーム世界に一つ管理用AI『アリス』が配置されているし。だから、僕たちはあくまでもゲームに対する人間性を付加するための隠れキャラであり、通常は殆どありえないけどゲーム世界のバク確認要員なんだよね。


 ほら、最近の通勤電車は殆ど自動運転化されているけど無人車両ではなくて、必ず乗務員が載っているっていうのと同じかな?

 安全確認という『錦の御旗』の元、完全自動システムにも人間のエキスを少し垂らしておく、みたいな感じだね。


 僕達、運用管理第六課は、12人で1チームを編成してて、その12人が3交代シフトで10のゲームを共同で見ている。当然休日や休暇を取る人がいるわけで、そうなると何処かにしわ寄せがくる。

 『経験を積むのも仕事だよー』とかなんとか言われて、大体そのしわ寄せは若い人に来るんだよね、はーっ。


 僕達六課は、割と小さいサイズの仮想ゲームを受け持っている。


 それでも周囲100Kmで、バトルフィールドとして草原と砂漠地帯、それから市街戦を考慮したゴーストタウン、後はゲーム世界の中で休憩するためのレスト・フィールドが何か所……程度かな。

 ゲーム参加者も、平均ログイン・プレイヤーはせいぜい1000人程度。まあ、祝日やイベントがあると一気にその10倍に膨れ上がるので、当然他部門からサポートをもらわないと間に合わない。


 でも、管理五課なんか、百層からなる巨大なバトルフィールドを管理してるので、実質100のゲームを見ているのとおなじだ。平均プレイヤーは1万人だって。もう想像も出来ない世界だよね。

 それぞれのゲーム世界では、それこそ数千人のNPCが独立型AIで行動しているので、プレイヤーのお客さんから見ると、極まれに個性的なAIキャラが居るんだなア、と思うぐらいだと思うよ。


 僕たちが担当しているNPCは大体いつも同じキャラなので、ゲームの常連さんはもしかして気が付いている人が居るかもしれないけどね。でも基本的にNPCの中に運営側の人間が入っているのは教えない事になっている。


 僕達はあくまで黒子に徹するんだよね。僕達が表に出るとすると、それは本当にヤバイ場合だね。ゲーム・プレイヤー同士のけんかと言った、精神的な障害に発展する可能性がある場合や、危険行為に及んでしまう可能性がある場合には、管理センターの許可を得たうえで身分を明かして、仲裁や支援に入るんだよね。


 なんか、昔のテレビ番組でやってた水戸黄門の助さん格さんみたいだよね。最後は水戸の御老公みたいに葵の御紋まで出したりして。まあ、本当はそんな強くは出られないけど。だって、あちらはお客さんだからね。

 どちらかと言うと、ゲームの中の審判みたいなもんで、悪いプレイヤーには、イエローカードやレッドカードを出す係と思ってくれてもいいかな。

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