第4話 定食屋Gamazon
アパートから少し歩いたところに、行きつけの定食屋があるんだよね。
ジローは、定食屋に行く前にもう一度水分と糖分の補給のために自動販売機でジュースをゲットする。
甘いものばかり飲んでるから少し体重オーバーになっちゃうのかなあ。イヤ、これはブラックな会社に勤めているストレスから来る体重増であって、決して自分が弱いからではないんだ、体重コントロールなんて、やろうと思えばいつでも出来るんだよ。いつでも出来るからやらなくていいんだ。
とりあえず自分にはそれで納得させているんだよね。会社でストレス受けているのに、自分自身でもストレス作って、自分で自分を追い込んじゃだめだよ。そういうのを前向きな人生っていうんだ。みんなもそうでしょう?
ここは嘘でもいいから「ウン」って言うところだね、もしもこれが小説ならね。
最近は、どこもかしこも全国展開しているファミレスばっかりで、温かいご飯と出来立てのおかずを出してくれるところ(店)が少なくなっちゃったよね。なんであんなに画一的なご飯ばっかり出すチェーン店ばっかりになっちゃんたんだろう?
結局、町の定食屋を守ってくれる人がいなかったんだよね。
だって、定食屋のおじちゃん、おばちゃん達は僕たちに「おいしいおいしい」って言ってもらえるだけでうれしくて、原価ギリギリで、商売ッ気なしで、ごはん大盛、おかず大盛、値段最低で、頑張ってくれたんだもの。
そんなことしてたら、定食屋を継ぐ人はいなくなるし、改装費用も捻出できないし、それこそ一代限りの全力運転だもんね。
安い金利で改装費用を貸し出してくれる近所の信用金庫だって、将来の利益確定プランも出せない(おいしいご飯はだせるけど)定食屋のおじちゃんにはお金貸してくれないもん。
僕たちお客さんだって、大部分がいつもピーピー言ってる貧乏学生だから、『定食屋を続けるためにカンパするぞ』なんてとてもじゃあないけど出来ないしね。
とかとか、ジュースを飲みながら、つらつら考えながら歩いてたら、例の定食屋さんに到着だ。
―― やっと着いたぜ、定食屋Gamazon ――
あの、世界最大の検索エンジンを持っている上に、流通業界も支配している、赤ん坊でも知っている(いや赤ん坊は知らないか)超巨大企業の名前を付けている定食屋。別に、本家からのれん分けしてもらった訳ではなくて、勝手に頂戴した名前らしい。
定食屋の親父さんは、年間売り上げ1兆ドルの会社がこんなちっぽけな定食屋を商標登録違反で訴えたりしないだろう……とか言っていたっけ。
ほんとの処、税務署に登録している名前は、『定食屋』なんだって。名前が無いので、看板の後ろに勝手に名前を書いてるらしい。
まあ、ごはんとおかずがおいしいから、僕的には名前なんか気にしてない。それに、定食屋のおじさん、実際のところGamazonとも無関係ではなかったらしいし。.
さて、今日は営業しているかな。
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