第3話 お腹がすいていたんだ

 なーんて、天国がいいとか地獄がだめだとかそんな話をしている場合じゃなかった。そうだ思い出した、僕はひじょーにお腹が減っているんだったよ。


 ほんの一瞬気絶していたと思ってたけど、時計を見ると既に2時間ほど経っていた。何のことはない、確かにお腹はすいていてお腹の虫はさっきから勢いよく泣き続けているけれど、実際のところは睡眠不足で意識を失っていただけだ。


 そりゃあそうだ、いくらお菓子大好き、お肉大好きな不健康な体だって、2、3日食べずに仕事をし続けて、空腹で意識を失うほど年寄りじゃあないもんね。


 あ、ごめんなさい。別に老人を悪く言うつもりはないんですよ。


 何やら独り言は続く。


 今の老人たちが作った教育システムや年金システムのおかげで僕たちの世代が貧乏になったとか、やれ、貧弱になったとか、そんな愚痴を言っている訳ではないんですよ。なんか言っちゃってますけど。


 ジローはお腹が空いているので、部屋には誰もいないけど、誰かに不満をぶつけたいようだ。


 決して本意ではないんです。少し本音入ってますけど。


 ジローの不満はドンドン、エスカレートしていく。


 一応、シルバーシートには座らないようにはしてますよ。あ、でも徹夜明けの時はシルバーシートで爆睡してますけど。

 決して老人を軽んじている訳ではないんです。単純に座る処がなかったから一瞬だけ座っちゃっただけで、座っちゃったら意識が飛んじゃっただけなんです。


 ブラック・ジローの毒舌が全開だ。


 疲れた若者も座っていいですよね?


 若者が疲れているのはブラック企業のせいで、ブラック企業が作れる下地を作ったのが今の老人たちで。だから、疲れている若者を老人はいたわってあげるべきで……という勝手な理論を組み立てて、座ってます。ごめんなさい。


 部屋の中でイキナリ頭を下げて、見えない誰かに謝るジロー。


 そんな事より、とにかく意識が戻ってきたから睡眠欲の次は、食欲だ。


「いち、に、さん、ッだー!」

 変な掛け声と共に、右手の拳を高く上げる素振りを見せる。


 あ、ぜんぜん意味わかんないかな? 大昔に有名なプロレスラーがやってたパフォーマンスらしいんだよね。そのプロレスラー、レスリング引退したあと政治家になった後も、あいかわらずそのパフォーマンスを続けているんだってさ。

 会社のプロレス好きな先輩が酔っぱらうと、直ぐにまねするんだよね。


 困ったもんだ、もんだみん。ジローのオヤジギャグのエンジンが全開になって来たようだ。


 良ーし、頭の回転も戻ってきたから、おなかの回転を良くするために近所の定食屋にポキモンGOーだ。

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