番外編 ハロルド視点

 そなたと初めて出逢ったのは八年前。私はそなたに一目惚れした。


 まるで真珠のような肌に桜色の頬、サラサラのアッシュブロンドの髪が全ての美しさを物語っていた。六歳とは思えぬ凛とした表情。まだ十歳の私にはとても格好良く見えた。


 私は早速アリーヤ様の情報を集めた。アリーヤ様に接近するために。


 だが、アリーヤ様の情報は皆無に等しかった。あったとしてもあまり良い噂は聞かなかった。周りからも「アリーヤ様だけは止めた方が良いです」と耳にタコが出来るぐらいにさんざん言われた。それでも私はアリーヤ様を諦めきれなかった。


 六年前までは―――――……。








 ◇◇◇◇◇








 あれは私が学園に在籍して二年が経った頃。ある少女の噂が耳に入ってきた。彼女の名前はヴィクトリア・ウェンディ・レティシア。伯爵令嬢らしい。


 彼女を見て私は、私は………




 彼女に目移りしてしまった。




 それから私はアリーヤ様じゃなくてヴィクトリア様に関しての情報を集めた。ヴィクトリア様に求婚するために。


 そしてあるお茶会のとき。アリーヤ様はエドマンド様に謹慎を言い渡された。ヴィクトリア様をいじめた処罰として。


 周りの令息令嬢達はアリーヤ様をバカにして嘲笑っている。本来なら、私も嘲笑っている(あちら)側だろう。なのに、なのに何故か私の胸は少しチクッとした。




 そんなあるとき、アリーヤ様からお茶会の招待状を頂いた。僕は迷わず行くことにした。アリーヤ様のお茶会に。


 だが、一体何がおこるのだろうか。その直後だった。アリーヤ様がヴィクトリア様に謝ったのは。


 瞬間、私の世界が輝いて見えたんだ。




 やっぱり私にはアリーヤ様しかいないんだ。私はアリーヤ様が好きなんだ。愛しているんだ。




 だから私はヴィクトリア様ではなくて、アリーヤ様に求婚しようと思ったんだ。だけどそなたは……アリーヤ様はエドマンド様と婚約した。


 だから私は強行突破することにしたんだ。私は、アリーヤ様を襲った。アリーヤ様は涙を流す。嫌がられているのは分かってた。だが、抑えられなかったんだ。アリーヤ様が可愛すぎて。


 気が付くと、ハルとかと言う男が来て、私は呆気なく倒された。そして、僕は捕まった。




 今は王城の牢獄にいる。まぁ、当然の結果だろう。王太子のフィアンセを襲ったのだから。


 私の罪は重い。ただずっと、手足を拘束されて時が流れるのを待つだけ。


 本来なら王太子のフィアンセを襲った罪で最低でも一年の拘束だが、私の場合公爵令息として三ヶ月の処罰になった。


 後二ヶ月。後二ヶ月でここから出られる。


 でももうどうでも良い。私はきっと、腫れ物扱いされるのだろうから。


 だけどね、どうしても諦めきれないんだ。そなたが好きで好きで愛しくて……。狂おしいんだ。


 でもそれはもうおしまい。私の心に蓋をして鍵を掛けるよ。




 アリーヤ様、ありがとう。そなたのお陰で私はほんの少しだけど恋愛というモノが分かったよ。




 もう同じ過ちは繰り返さない。

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