第十七話
「や……やっと王都に着いた……! これでアリーヤを助けれる……!」
少し窶(やつ)れた感じで言うエドマンド様。二日間お風呂に入っていない為、エドマンド様のサラサラだった銀髪が、少しごわごわとしている。
額には大粒の汗が宝石のようにキラキラと輝いている。そんなエドマンド様は男の僕から見ても、とても格好良かった。きっと色んな令嬢達が黙っていないだろう。
「それじゃあエドマンド様、図書館へ行きましょう」
「えっ!? ケフェティの実を探さなくて良いのか!?」
目を丸くするエドマンド様は何処か可愛らしかった。だからアリーヤ様もエドマンド様に惚れるんだろうな。
だけど今はそんなことはどうでも良い。アリーヤ様の体を治さないと。
「……それを調べに行くんだ。いいから黙って着いてきて。」
僕はそれだけ言うと、さっさと地図を見ながら図書館の方へ向かう。そんな僕を見たエドマンド様は慌てて着いてくる。
「ハル……ハル。凄いな!! 暫く来ない間にこんなに変わるなんて!」
目を輝かせて言うエドマンド様は一段と注目を浴びていた。居心地が悪いったらありゃしない。今の僕の顔はムスッとしているだろう。
「あの~……」
突然後ろから声が掛けられた。振り返ると、栗色の髪に青い目をした少女と、黒色の髪に茶色の目をした少女が立っていた。二人の少女の頬はうっすらと紅く染まっている。
……あぁ、成る程。つまり、エドマンド様狙いか。
少女の格好からして、平民だろう。だがしかし、服装から貴族と分からないのだろうか。平民は基本的に学園内、又はやむを得ない場合以外は貴族に話し掛けてはいけない。
なのに何故……あっ! そうか。僕達学園の制服のまま隣国に来たんだ。忘れていた……。仕方無い。図書館に行く前に服屋に寄ろう。
「あの……もし良かったら一緒にお茶でも……」
栗色の髪の少女が言う。だが僕はそれを微笑んで遮る。エドマンド様の腰に腕を回すのを忘れずに。
「ごめんね。僕達これから用事があるんだ。」
瞬間、少女達は顔を赤らめた。……あ、これはエドマンド様を見ての反応だな。少しムカつくな。
「……え、どうしよう。二人供格好良すぎなんだけど……!」
二人の少女は何やらボソボソと言っている。一体何の話をしているのだろうか。多分、僕の頭には『?』が浮かんでいた事だろう。
「申し訳無いが、私達は急いでいるのだ。では失礼する」
エドマンド様はそう言うと真っ直ぐ行ってしまった。……図書館とは反対の方向に。
「ハル、何をしているのだ? 早く図書館へ行くぞ」
この人は何を言っているんだ? 僕は取り敢えず返事をする。
「……エドマンド様、図書館はそっちじゃないよ」
「えっ!?」
「ぶはっ!!」
エドマンド様の反応が面白くて思わず笑ってしまった。「えっ!?」ってなんだよ。「えっ!?」って。チラリとエドマンド様の方を見ると、少し頬を染めていた。
「……ごほん。まず図書館に行く前に服屋に行きましょう」
「……? あぁ」
新しい服を買って着替えないと。流石に制服のままでは不味い。
こうして僕達は服屋に行くことになった。
◇◇◇◇◇
服屋の中に入ると色々なタイプの服があった。僕達が求めるのは『上質だが平民らしい服』だ。僕はその事をエドマンド様に伝える。するとエドマンド様はコクリと頷いた。
「だが平民らしい服装ってどんなのがあるのだ……?」
……まずそこからか。仕方無いので僕がエドマンド様の服を選ぶことにした。
「エドマンド様はスラッとした体型だからそうだな。……これと、これとこういうのが似合うと思う」
そう言って僕がエドマンド様に差し出したのは、紺色のベストに白いシャツ、黒のズボンだ。
早速エドマンド様はそれを着る。……うん。僕の見立ては良かったみたいだ。エドマンド様の服はこれで決定にしよう。
次は僕の服だ。僕の服は茶色のベストに白いシャツ、紺色のズボンだ。微妙にエドマンド様とお揃いっぽくなるがそれは仕方無い。僕は支払いを済ませるとさっさと買ったばかりの服に着替える。
よし、これでやっと図書館へ行ける。
「エドマンド様、図書館に行こう」
「あぁ!」
僕達は服屋を出て、図書館へと向かったのだ。
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