番外編 ハル視点
僕が初めて君と会ったとき、君は既にエドマンド様と婚約していたね。一目惚れだった。初めて女性を美しいと思った。僕の周りにいた女は全員糞だったからな。だけど君を好きになってもこの手は君に届かない。
だから僕は君に嘘をつく。笑顔と言う名の仮面を貼り付けて、僕は君と接するよ。
「僕の名前はハル。今日からここで学ぶんだ。よろしくね!」
僕はにこりと笑って言ったんだ。僕の本当の気持ちを悟られないように。すると、君は一瞬驚いたような顔をしたね。そして、笑いたくもないのに笑って。だけど、僕はそんな君が好きなんだ。
君を想うだけでこんなにも胸が痛くなるんだ。だけど僕はそんな気持ちをただ隠すんだ。秘密。絶対誰にも言わない。誰にも教えない。
◇◇◇◇◇
アリーヤ様がハロルド様に襲われた。僕がどうやってこの情報を得たかは秘密だが、僕は急いでアリーヤ様とハロルド様がいると思われる場所へと向かう。大好きなアリーヤ様、待っていて。必ず僕が助けるから……。
アリーヤ様とハロルド様がいると思われる部屋に着いた。スゥッと息を吸って、僕はドアを蹴破る。
……ハロルドサマガアリーヤサマニウマノリニナッテイル。
僕の頭にはその情報しか入って来なかった。頭が真っ白になっていく。あぁ、酸素が足りない。誰か酸素をくれ。
「君さ、彼女が王太子殿下と婚約しているって知らないでそれやってんの?」
その一言を言ったのは覚えている。
気が付いたら僕はハロルド様を倒していた。
そして、アリーヤ様を抱き締める。アリーヤ様の小さな肩が震えていた。思わず、抱き締める手に力が入ってしまう。
……アリーヤ様……何故僕は君を好きになってしまったのだろう。……何故僕は君を愛してしまったのだろう。涙を貯めている君を見ると、思わず口づけして『好き』と言いたくなってしまう。だけどそんなことをして君を困らせたくない。
だから僕は君の『相談役』として側にいることを選んだんだ。
だけどいつか、いつかこの想いを伝えられたなら……。
……駄目だ、君に僕の想いなんて伝えれない。君を困らせるだけだ。
それは僕の、一生叶えられない夢。
◇◇◇◇◇
「ねぇ、ハル!」
君はにこやかに僕の名前を呼ぶ。君は何故こんなにも可愛いのだろうか。
大好きだ。優しくて、可愛くて可憐で素敵な君が大好きなんだ。ねぇ、神様。一つだけお願いです。アリーヤ様に愛を告げられないのは承知です。だから、だから、側にいることを許して下さい。ただただ、側にだけいさせて下さい。
いつか、本当の僕を見せれたら良いな。君にまだ伝えていないことが沢山ある。
だから時間を掛けて、本当の僕を話せたら良いな。
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