第十話
ねぇ、教えて? 私はあの時、どう判断すれば正しかったの? いつもいつも貴方に守ってもらってばかりの私。本当に弱虫な私。
貴方の隣にいる資格は私には無い。
◇◇◇◇◇
「アリーヤ様、着きましたよ。」
うっすらと目を開けると、従者が私に呼び掛けていた。どうやらいつの間にか眠っていたみたいだ。
……何だか私、最近眠ってばかりね。
そんなことを考えながら私は屋敷の中に入る。
「アリーヤ様、お帰りなさいませ。」
玄関の中に入ると、セリーヌが出迎えてくれた。セリーヌの笑顔を見ると何故だか安心する。
「……はぁ。セリーヌ、少し疲れたわ。」
私はそれだけ言ってしまうと自室へ向かった。私は自室につくと、ベットに倒れ込む。
……なんか眠たいな。このまま寝てしまおうかしら。そしたらずっと目が覚めなければ良いのに。
コンコン
お決まりのようにドアがノックされる。
私はベットから起き上がり、返事をする。
「はい、どうぞ。」
「アリーヤ様、知り合いの方が来ています。」
……知り合い? 一体誰かしら。
私はセリーヌについていく。私が通されたのは、応接室だった。
そこにいたのはマンダリンガーネットオレンジの瞳とカナリートルマリングリーンイエローの髪の毛が特徴の少年だった。
「……ハル。」
「アリーヤ様、お加減はいかがですか?」
にこりと微笑んで言うハルは何だか、私には眩しかった。
……何故ハルは私なんかに構うの?
「えぇ、大丈夫よ。心配してくれてありがとう存じます。」
少し憂鬱な気分になりながらもここは公爵令嬢。私は笑顔を貼り付けてお礼を言う。すると、ハルは何故か悲しそうな顔をした。
「僕の前ではそんなに堅苦しくなくて良いんですよ? 笑いたくないのに笑わなくて良い。本当のアリーヤ様でいて下さい。」
……バレてたんだ。私が無理して笑っているということに。
ハルって本当に何者なんだろう。思わず鼻で笑ってしまう。
「えぇ、ありがとう。ハル、ハルも私の前では自然体でいて? 身分とか関係無く私と接して?」
「うん、分かった。お言葉に甘えてそうするね。」
ハルはそう言うとクシャリと笑った。やっぱりハルの笑顔は私には眩しいみたい。私の心が汚れているからかな?
「そう言えば、エドマンド様と何かあったの?」
「エドマンド様?」
私は思わず聞き返した。私、ハルになんにもいっていないはずだよね? と疑問に思いながら、ハルの言葉の続きを待つ。
「うん、一度学園に戻って来たんだけど。なんかそのときの顔、凄く落ち込んでいるように見えたから。」
「…………あ」
……それ、私のせいだ。私があんなこと言ったから。私が何も考えずあんなことを言ったから。
「えぇ、え!? アリーヤ様? どうしたの!?」
「……っひっく、ぐすっ……ル…………ハルゥ……」
私は涙をボロボロ流しながらハルに抱きついた。
「っぐす……ひっく、私のせいだぁ……!」
すると、ハルは私の背中に手を回して優しく撫でた。私が落ち着くまでずっと。
「……それで、どうかしたの?」
私が落ち着くと、ハルは私の目を見て聞いた。
「うん、あのね……」
色々纏まっていない中で説明したから多分、分かりづらかったと思う。それでもハルは、ずっと私の話を真剣に聞いてくれた。
「うん、うん。そっか。正直さ、僕には何と言えば良いか分からない。これはアリーヤ様自身が解決しないといけないことだし。でもさ、側にいることは出来る。だから、なんかあったら今みたいに話して?」
「うん、ありがとう。ハル。」
私の気持ちも落ち着いたことだし、そう言ってハルは帰って行った。
……そう言えば、ハルは何しに来たんだろう?まぁ、結果的には良い感じに終わったからいっか。
◇◇◇◇◇
ここは乙女ゲームの世界。ヒロインの名前はヴィクトリア・ウェンディ・レティシア。十六歳で侯爵令嬢。金髪、茶色の瞳が可愛らしい少女。
悪役令嬢の名前はアリーヤ・シラン・マノグレーネ。十四歳で公爵令嬢。アッシュブロンドの髪の毛とアメジスト色の瞳が特徴で悪役令嬢らしくない顔立ちの少女。
攻略対象は全員合わせて五人。
一人目はこの国の王太子、エドマンド・フロイド・イグネイシャス。十七歳で、銀髪、青目が特徴のイケメン男子。
二人目はハロルド・イヴァン・レーン。十六歳で公爵令息。わたくしと同い年ね。茶髪に黒曜石のような瞳が特徴的。
三人目はジェフ・レイバン・ナサナエル。伯爵令息で十八歳。赤髪で緑色の瞳の可愛らしい少年だ。
四人目はマーティン・オリヴァー・フィランダー。伯爵令息で十四歳。金髪、エメラルド色の瞳が特徴の少年。
そして、五人目はハル。隠れキャラで平民の少年。十五歳。オレンジっぽい髪とグリーンイエローの瞳が特徴の可愛い系男子。
さてとわたくしは誰を攻略しようかしら。ゲームだったら勿論ハルを狙うのだけれど、ここは実際に乙女ゲームの世界だからね。やっぱり、エドマンド様かしら? そう思ってわたくしは早速攻略しようと思ったのに。悪役令嬢のアリーヤ様のせいで、エドマンド様はヒロインであるわたくしでは無く、アリーヤ様の方に行ったわ。せっかく後もう少しで攻略出来るところだったのに。
こうなったら強硬手段行くしかないわね。
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