番外編 エドマンド視点
そなたは最近、人が違うように変わった。前までは、すぐに怒って泣いていたのに。
◇◇◇◇◇
「エドマンド様、どちらのお茶が良いでしょうか?」
そう言って、にこりと笑うアリーヤは可愛かった。思わず、返事が遅れてしまった。
今日はアリーヤの屋敷で『二人きり』でお茶会をしていた。
「あ、あぁ。私はそちらのお茶にしようかな。」
「分かりましたわ。」
……か、可愛い!アリーヤは何故こんなに可愛いのだろう。
「……エドマンド様? どうかしたのですか?」
アメジスト色の瞳で心配そうに見つめてくるアリーヤ。私は咄嗟に返事をする。
「いや、何でもない。心配掛けてすまない。」
「いえ、大丈夫ですわ。エドマンド様が何も無いのならいいのです。」
そう言ってふわりと微笑むアリーヤは可愛かった。
そなたを欲しいと思ってしまう私は、欲望にまみれているのだろうな。そう思い、内心苦笑する。
でも、人間は不思議だな。私は前まで、ヴィクトリアが好きだったはずなのに。アリーヤに苛められているヴィクトリアを見ると、いつも怒っていたはずなのに。
「アリーヤ、そなた今好きな男性はいるのか?」
気が付くと、そんなことを言っていた私は内心慌てる。
「好きな男性……ですか? 私にはお慕いしている人はいません。」
「そうか。」
……これはチャンスだな。私がアリーヤに求婚しても、断れる確率は低いということだな。
と言っても私はこの国の王太子。王太子が求婚すれば、中々断られることはない。
だが、アリーヤに求婚する前に、父上の許可を取らなければならない。
そうと決まれば早速、父上の許可を取ろう! ……あ、でももう少しアリーヤといたいな……。
「そうだわ! エドマンド様、これを見て下さい!」
嬉しそうに笑ながら言う彼女が差し出して来たのは、腕に付けているブレスレットだった。
「……それは何だ?」
思わず、首を傾げて聞いてしまう。すると、アリーヤは丁寧に説明してくれた。
「ジェフ様から頂いたのですわ。私、このブレスレットがずっと前から欲しくて、それを知ったジェフ様が私に下さったのです。」
ジェフとは確か、赤髪が特徴の伯爵令息だったはずだ。
……そなた、そいつから貰ったものを身に付けているのか?
少しムッとする私は独占欲が強いのだろうと自覚してしまう。後日、アリーヤにブレスレットやらネックレスやら色々と贈り物をしたのはまた別の話だ。
気が付くと、日が沈み掛けていた。名残惜しいが帰らなければならない時間だ。
「エドマンド様、馬車までお見送り致しますわ。」
「あぁ、頼む。」
アメジスト色の瞳で此方こちらを見つめてくるアリーヤは夕暮れ色に染まっていて、とても美しかった。
思わず、抱き締めたい衝動にかられる。
そんな気持ちを無理矢理押さえ付けて、馬車に乗り込む。
「本日はありがとう存じます。」
アリーヤが腰を90度に折って、挨拶をした。
馬車がゆっくりと走り出す。私は後ろ髪を引かれる思いで、屋敷を後にした。
……王城に帰ったら父上にアリーヤに求婚したいと言おう。
そんな決意を胸にして私は前を真っ直ぐ見据えた。
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