第5話
君の声が聴こえなくて、君を探し求めた。沢山歩いて、歩いてもがき苦しんだ。悲しくて、悲しくて、沢山泣いた。
大好きな貴方はここにはいない。
◇◇◇◇◇
何故、こうなったのだろう。私、何かしたかしら? ただ、魔法の練習をしたかっただけなのに……。
……そう言えば、まだ皆には言ってなかったわね。何故、こうなったのか。
えっと、説明すると。私は、いそいそとベッドに潜り込んだ後、魔法書を読んでいた。
「上位白魔法……上位白魔法……あ、あった! えっと、『リアトミー』……効果は相手が掛けたまたは、掛けようとした攻撃魔法を打ち消すこと。また、打ち消すとともに体力を回復させる。」
……これ、かなり強力な上位白魔法ね。よし、やってみよう!
私は息を吸って、呪文を唱えようとした。が、よく考えれば私、攻撃されてないわ。どうしようかと、考え込む私。
すると、
コンコン
とドアがノックされた。誰だろうと思いながら返事をする。
「はい、どうぞ。」
「アリーヤ様、失礼致します。」
そう言って入って来たのはセリーヌだった。私は思わず、アメジスト色の瞳を輝かせる。
「セリーヌ! いいところに来たわ!」
「え、えぇ……? な、何でしょうか?」
ピンクスピネルの瞳に戸惑いを乗せながら、聞いてくるセリーヌはとても可愛かった。が、そんなことはどうでもいい。
「ねぇ、セリーヌ。私、魔法の練習をしたいの。『リアトミー』という魔法を使いたいのだけれど……よく考えれば私、攻撃されていないのよね。」
「『リアトミー』!? アリーヤ様、『リアトミー』だけは絶対に止めて下さい! いざという時、大変なことになりますよ?」
真剣な顔で言うセリーヌは少し怖かった。思わずこくこくと頷いたが、何故『リアトミー』が駄目なのだろう。
「セリーヌ、それじゃ何が良いのかしら?」
「それでしたら……『サードニード』はどうでしょうか?」
私は小頚を傾げながら、セリーヌの説明を待った。
「これは、上位黒魔法で、風魔法です。風が刃となって、目の前のものを切り裂きます。例えば……」
セリーヌはバルコニーに出た。私はそんなセリーヌの後を着いて行く。セリーヌは庭にある、目の前にある木を見据えた。
セリーヌはゆっくりと手を目の前に持っていく。そして、小さく、息を吸った。
『サードニード』
セリーヌが呪文を唱えた瞬間、目の前の木の葉は、無残にも全部無くなった。
……流石上位黒魔法。凄いわね。
「アリーヤ様もやってみますか?」
そう言って微笑むセリーヌ。私はセリーヌがやっていたみたいにゆっくりと手を目の前に持っていく。
そして、呪文を唱える為に、息を吸う。
『サードニード』
ぶわぁぁぁ!!!
……え、えぇ!? 何?
混乱していると、庭にある目の前にある木が、木端微塵こっぱみじんになっていた。
「えっと……魔法は成功した、ということで良いのかしら?」
セリーヌに聞いてみる。すると、セリーヌは信じられないものを見た、というような顔をしていた。
「……アリーヤ様、学園以外では魔法禁止です。」
「でも……」
言い訳をしようとした。
「禁止です。」
「……はい。」
こうして私は、学園以外では魔法禁止になった。私の憧れの魔法が……。
残念に思いながら私は、ベッドに潜り込む。目を瞑ってじっとしている。そうしているうちに、いつの間にか居なくなってしまった。
◇◇◇◇◇
「……リーヤ様、アリーヤ様!」
目を開けると、セリーヌがいた。どうやら、いつの間にか眠ってしまったようだ。セリーヌに起こされるのはこれで何回目だろうと思いながらベッドから身を起こす私。
「アリーヤ様、大変なことになりました!」
切羽つまった感じに言うセリーヌ。一体何があったのだろうか。
「セリーヌ? どうかしたの?」
「エドマンド様が、エドマンド様が……!」
セリーヌはそうとう焦っているのか、中々本題に入らない。
「セリーヌ? エドマンド様がどうかしたの?」
「先程、エドマンド様から手紙が来たのですけど……。アリーヤ様と婚約したいと……!」
……エドマンド様が私と婚約したい……?
「えぇ、えええぇ!? え、嘘。えぇ、ほ、本当に!?」
何が何だか分からない。混乱してきた。お、お父様に聞いてみないと。
「セリーヌ、今すぐお父様のところに行くわよ!」
「それが……サーモンド様は今、その事で王城に言っています。」
サーモンド様とは、私のお父様の事だ。
……流石お父様。行動が早いわね。このあと、どうすれば良いのかしら。
私は途方に暮れるしか無かった。
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