第3話
あの時の貴方は、どんな思いをして私を見ていたのでしょう。
◇◇◇◇◇
私が教室に入ると教室の中がざわめき出した。
……流石にその反応、見飽きたわ。
私を内心苦笑していた。けれど、私も公爵令嬢。優雅な微笑みを張り付けて、自分の席に座る。
……そう言えば、学園について説明していなかったわね。
えっと、ここは王族、貴族、平民とか関係無く入れる学園だ。十歳になった子供達が難しい試験と面接にクリアした者だけしか入れない超名門学園。そして、二十歳になると卒業試験を受けて、受かった者だけが卒業できる。因みに私は学園一位で入りました。
……え、何?どや顔は止めろ、と。何で私がどや顔してるって分かったのかしら?
それは兎も角、私は先生が来るまで魔法書を読むことにした。
……ん? この世界に魔法があるのか? って? 当たり前じゃない。ここは異世界よ? じゃなきゃ、私がやってられないわ!
「アリーヤ様、おはようございます。」
顔を上げると、目の前にはマーティン様がいた。私を微笑んで挨拶を返す。
「マーティン様、おはようございます。今日も天気が良いですわね。」
私がそう言うと、マーティン様はエメラルド色の瞳を輝かせる。その笑顔が眩しくて、私はスッと顔を剃らす。
……それにしても、何故私が学園に来なきゃ行けないのかしら。家に帰りたいなぁ……。
そう思っている内にビアンカ先生が教室に入って来た。
「皆様、おはようございます。」
『おはようございます、ビアンカ先生。』
生徒が一斉に言う。それを見たビアンカ先生は満足そうに笑った。思わず、私もつられて笑ってしまう。
「さて、今日皆様が勉強するのは上位白魔法です。」
シトリン黄色の瞳を輝かして言うビアンカ先生は本当に魔法が好きなのだろう。
白魔法と言えば、回復魔法だ。初めて習う上位白魔法に私は期待を寄せる。
魔法を習うのは大体十歳から十五歳まで。(個人によって変動する。)十、十一歳は下位、十二、十三歳は中位、十四、十五歳は上位魔法を習う。
「まず、白魔法について少し説明します。白魔法とは、主に回復魔法です。今日習う呪文は『アグドリーゼ』です。」
『アグドリーゼ』
ビアンカ先生は手の平を上にして、呪文を唱えた。すると、蒼白い光が先生の手の中で舞う。
私は思わず魅入ってしまう。
……私も、私も早くこの魔法が使えるようになりたい!
「この魔法の効果をご存じの方はいますか?」
バッ!
私は真っ先に手を上げる。それを見たビアンカ先生は、少し苦笑して私を指名してくれる。
「はい。この魔法の効果は、怪我を治せることです。また、他にも、温暖効果があります。」
「えぇ、その通りです。よく出来ました。」
ビアンカ先生は笑って私を誉めてくれた。
……やったね!
「さて、それでは四人グループを作って下さい。」
ビアンカ先生はヘルメス・ブルー薄い紫の髪を軽くとかしながら言った。
私のグループは、マーティン様他、子爵令嬢、侯爵令息になった。この中で一番、爵位が上なのは私みたいだ。
「それでは、グループで協力して魔法を成功させて下さいね。」
ビアンカ先生のこの一言で教室が少し騒がしくなった。まぁ、魔法の呪文を唱えるのだから当然だろう。
「えっと、一度、呪文を唱えた方が良いのかしら?」
私はグループの皆に聞こえるように言った。が、反応したのはマーティン様だけだった。
……そうよね、私みたいな悪役令嬢の話、誰も聞かないか。
「……アリーヤ様、お手本を見せて頂いても宜しいでしょうか?」
気遣ってくれたのか、マーティン様が声を掛けてくれた。内心、感謝しながら、私は呪文を唱えるために息を吸った。
『アグドリーゼ』
小さく、ハッキリと呪文を唱えた。すると、先程ビアンカ先生が見せてくれたような蒼白い光が私の手の中で舞う。
つまり、呪文が成功したのだ。私の頬が、徐々に紅潮していくのが分かる。
「アリーヤ様、流石です! 凄いですね!」
マーティン様がエメラルド色の瞳をキラキラさせて誉めてくれる。私は思わず満面の笑みを浮かべる。
「……可愛い。」
「え?」
侯爵令息が何やら言ったが上手く聞き取れなかった。私が聞き返すと侯爵令息は、頭をブンブンと物凄い勢いで振り、「何でもありません!」と言った。
……一体、何だったのかしら?
バンッ!
「きゃっ!」
何かが私に当たった。私は床に倒れる。きっと、先程の音が私に当たったものの正体だろう。
「アリーヤ様!! 大丈夫ですか!?」
マーティン様が叫ぶのが聞こえる。
……あれ、おかしいな。何だか、眠くなってきたな。
「……リーヤ様! ……リーヤ様……ヤ様…………」
マーティン様が叫ぶ中、私は意識を失った。
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