第13話 続・親友の後押し


―――


次の日――


 俺はいつもより重い気持ちで学校に着いた。

「おっす、蒼太。」

「あ……おっす。」

 薫からの挨拶も軽くかわして席につく。

「どうしたんだ?」

「別に……」

「どうだ?今日のショートコント、そろそろやるか?」

「今日はいい……」

「そっ……か。」

 ごめん、薫。今はそんな気になれないんや。告白の事考えると持病の神経性胃炎が……あぁ、痛い……


「蒼太君。」

 その時、俺の名を呼ぶ可憐な声が……振り返れば思った通りの人物がいた。

「大西!ど、どうしたの?何か用?」

「昨日、明日直接言うって言ったでしょ。今話聞くよ。」

「うえ゙ぇ゙?い……今ですか?」

「え?ダメ?」

「いや、喜んでお受けしましょう!わたくしで良ければ。ささ、こちらへ……」

 俺は大西を裏庭へ案内した。そして大西に背を向けて大きく深呼吸した後、ついに言った。


「お…俺は君の事、す、す、好きや!」

 言った!!言えたぞ。さぁ、反応はどうだ?チラッと大西を見る。大西は赤い顔を下に向けたまま黙っている。


「あ……あの、大西?」

「え?あ、ごめんなさい。」

 ん?今の『ごめんなさい』はどういうごめんなさいなんだ?やっぱり俺、フラれるの……?


「あたしも…実は蒼太君の事……」

「……へ?」

 今のは……何?大西は何を言ったんだっけ?確か『あたしも』って言ったよね。いやいや、今のは聞き間違いや。もう一回聞き直そう。うん、そうしよー。


「あの……つかぬ事をお聞きしますが、今何ておっしゃったのですか?」

「え?あ…あたしもって……」

「そ、そんな事おっしゃっていいのでございますか?」

「だって……本当の事だもん。」

「いや、だってさっき『ごめんなさい』って……」

「あ、あれは…違うの。告白に対しての『ごめん』じゃなくて……」

 大西はさっきより顔を赤くしている。そ、それじゃあ……


「本当に俺の事好きなの?」

「……うん。」

「ほ、本当に……?」

「何回も言わせないでよ……!」

「あ……じゃ、じゃあ…ふ、ふつつか者ですが、よろしくお願いします。」

「いえ……こちらこそ。」

 そう言ってお互いに頭を下げた時、こつんと額がぶつかる。俺達は顔を見合わせてプッと吹き出した。


「何か俺ら変だな。」

「ふふ……そうね。」

 その時チャイムの音が鳴った。

「やべっ!急ごう!」

「うん!」

 無意識に大西の手を掴んでいた。一瞬時が止まったようになったけど、大西がすぐに笑顔で握り返してくれたから俺も笑顔になる。

 そして踵を返して校舎の中へと走っていった。


『こんな暗くてつまらないあたしの事、好きになってくれてありがとう!』


 途中で大西がそう耳打ちしてくる。俺はニヤけそうになるのを堪えながら返した。


『それは大西が誰よりも優しいからやで。』


 そう言った時の大西の顔は今までで一番可愛かった。


 廉……!俺、やったで!早速今日の放課後、報告に行くからな!!


 俺は病室でまた一人すごろくでもしているだろう廉の事を思い浮かべながら、舞い上がりそうな気分を必死で抑えていた。



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