第11話 親友の作戦
―――
――昼休み
裏庭で昨日書いた手紙片手に廉を待つ事、二時間……嘘です、20分。
「はよ来んかい!昼休み終わってまうで。俺まだ弁当も食ってへんのにやな……」
言い終わって急に不安が押し寄せてきた。
もしかして何かあったんか?病院抜け出してくる時、痛みが激しくなって……
「廉!今行くで!」
俺はダッシュで病院へ向かった。途中であらぬ想像をしながら、そしてそれを否定しながら……
「廉!大丈夫か!……ってあれ?」
「蒼ちゃん!?どないしたん?そんなに慌てて。」
病院に着くと廉はベッドの上ですごろく(一人で)をしていた。……何故?
「どないしたんじゃない!何しとんのや、学校に来んで……しかも何ですごろく?」
「まっ!何て事おっしゃるのですか、うさぎさん。すごろくをバカにしちゃいけませんで。一人でも結構楽しいんやよ。」
「え?そんなに楽しいの?俺も今度やってみ……ってちっが~う!?誰がうさぎやねん!俺は何でお前がここにいるのか聞いとんねん。」
「何でって入院してるんやけど?そんな事くらい貴方が一番わかっているはずですが。」
「そういう事やなくて……今日はお前が考えた作戦『手紙で告白しちゃおうぜ!』あー自分で言ってて恥ずかし…の実行日で、お前がここ抜け出して学校来る言うから俺ずっと待ってたんやけど。」
「あーーーーーー!!?」
「な、何や…ビックリさせんなや、もう……」
「俺、忘れとったわ。ごめん……」
「そんなこったろーと思ったわ。」
走ってきたのと廉の大声にビックリしたので、俺はへなへなと椅子に座り込んだ。
廉を見るとすっげー落ち込んでる。そんなに落ち込むなら忘れるなっつぅの!
「どないしよ、蒼ちゃん……」
「しゃーない。放課後に実行するっきゃないな。いいか?今度はちゃんと来るんやぞ!」
「いやに乗り気やな。最初は恥ずかしがってたくせに。」
「なっ……!べ、別に?お前が何が何でも今日告白しろ言うから仕方なくやな……」
「ま、そんな事はどうでもええわ。必ず行くからお前ははよ学校戻り。五限目始まっとるで。」
「はいはい。じゃあ、必ずな。」
「わかってますって。」
少々不安は残るけれど、俺は学校に戻った。
―――
「遅れてすみませ~ん……」
結局20分くらい遅刻して教室に辿り着いた俺は、そーっと後ろのドアから滑り込んだ。
「こら!霧島!何してたんだ。」
「すいません。ちょっと廉の病院に様子を見に……」
「そうか……まぁ、友達を心配する気持ちもわからんでもないが、今度からは気をつけろよ!」
「はい!」
思い切り手を上げて返事をすると先生は苦笑いをした。その途端、俺の腹が『グ~~』と鳴った。あんまり怒られないで済んだのと、自分の気持ちを分かってもらえて嬉しくて安心したのかもな。でもちょっと恥ずかしい……
「何だぁ?」
「あ、すいません。俺まだ弁当食ってなくて……」
「早く食ってこい!!」
「いえっさーー!」
先生の有り難いお言葉に再び手を上げると、弁当を手に取って教室を出た。その時、大西と目が合った。大西はしばらく無表情で俺の事を見ていたが、急に笑顔になってじっと見つめてくる。な、何でそんな可愛い顔で見つめてくるんだ~!ドキドキするぞ、ドキドキしちゃうよ~~廉助けてくれーー!!
「じゃ……じゃあ行ってきます!」
どもりまくりながらそう口走って俺は屋上に向かった。
「あーービックリした……大西が笑ってるとこ見んの二回目やな……」
小さく呟いて弁当を一人淋しく食い始めた俺だった……
――待ちに待った放課後
「ええか?大西が来る前に下駄箱に入れてくるんやぞ。」
「わ、わかっとるわ。そ…そんな事……」
「何ビビっとんねん、大丈夫か?」
「だ、大丈夫、大丈夫。ハ……ハハハ…」
「早よ行かんと大西来てまうで。」
「い…行ってくる……」
「頑張れや!」
廉の応援も碌に耳に入らない。すんげぇ緊張してる、俺。手紙を持つ手に力が入るし汗もダラダラ出てくるし、どーしよ…
「あれ?何してるの、蒼太君?」
「え?」
後ろから声を掛けられ振り向くと、そこには……
「お、大西……」
「どうしたの?何してるの、こんなとこで。」
「あ、いやその…決して大西の下駄箱に用があるなんて事はないですから…じゃ!」
支離滅裂な事をわめきながらそのまま逃げだした。あーー何やってんだ、俺は…ふがいない……
「れーーーーーんーーーーー!!」
ロッカーの陰に隠れていた廉が出てきて、俺を引き込む。俺は廉に抱き着いた。
「何やっとんねん。自分で白状する奴がおるか、アホ!絶対変に思ったで、大西。」
「アホとはなんや、アホとは。俺は一生懸命やったんや。あれで…精一杯なんだよ!」
「……しゃーないな。別の方法に切り替えよ。」
「別の、方法……?」
「お次は『電話で告白大作戦!』や。」
「で、で、電話あぁぁぁぁ!?」
「何や、何か文句でも?」
「文句大ありや。電話なんか手紙よりあかんやろ。だ、だ、だって直接話すんやろ?そんなん出来るわけ……」
「…っつぅ……!」
興奮して喋ってる俺の横で廉が胸を押さえて蹲る。慌てて顔を覗き込んだ。
「廉!おい!大丈夫か?」
「へ、平気や……」
「とにかく病院戻ろう。続きは落ち着いてからや。」
廉をおぶって昇降口を抜けて病院まで急ぐ。
「廉…病院まで我慢しろよ。」
小声で背中の廉に話しかけても廉は何も言わなかった……
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