第10話 親友の計画


―――


「色々あって忘れてたけど、大西の事はどうすりゃええんやろ……」

 その日の放課後、また廉の病院に来た俺はこう言った。


 もちろん加奈子と美咲達の事はいの一番に話した。その時の廉の反応はうざいくらいだったから割愛するが。

 ってそんな事より何か廉が凄いニヤニヤしながらこっち見てるんですが……


「な、何や?そんな不気味な顔して……」

「どうしたん、蒼ちゃん。急にそないな事言うて。」

「いや、特に意味はないねんけど。」

「ははーん、わかったで。俺と加奈ちゃんが余りに仲良いから羨ましくなったんやろ。」

「……んー、まぁそうかもな。」

「って肯定するんかい!」

「ぐ……っ!」

 力強い裏拳をくらって椅子の上で蹲る俺を余所に、廉はまたしても不気味な笑みを浮かべた。そのまま近づいてくる。恐いんやけど……


「今度は何?」

「いい事思いついてん。」

「いい事って?」

「聞きたい?」

「うん、めっちゃ聞きたい。教えて。」

「あのな……やっぱ教えなーい。」

「だあぁぁぁっ!?」

 絶妙な間に椅子から大袈裟に転げ落ちる。すると廉は若干呆れた表情で俺を見下ろした。


「リアクション大きすぎや。」

「ほっとけ!……っていうか教えてぇな。お願いします、この通り。」

 そのまま床に土下座してお願いする。連は何故か胡座をかいて腕を組んでいる。偉そうでムカつくけどここは我慢、我慢。


「しょうがないなぁ。よく聞きたまえよ、霧島君。一回しか言わんからな。」

「はい!」

 何か……『取り引きを申し込みにきた気の弱いサラリーマンと、どっかの嘘くさい社長』っていう感じやな……


「名付けて『蒼ちゃんのドキドキ・ワクワク告白大作戦!!』イエーイ!」

「いえーい!……ってえ゙え゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙~~!?」

「うわっ!地震、地震!蒼ちゃんの大声でこの病院がただ今地震の被害に遭っています!」

「……ぜえぜえ……な、何でそんなこ…告白なんておっしゃるのでござるのですかい?」

「蒼ちゃん……日本語変になっとるで。」

「あぁ、すまん……でも何でそんな急に…俺こう見えてシャイなんやで?そんな告白…なんて滅相もない!」

「そう言うと思ってこの廉様がいいアイデーアを考えました。」

 外人っぽく発音よくしながら、ベッドの下から便箋を出してきた。


「そ、それは……」

「そう!『手紙で告白しちゃおうぜ!』あ、これサブ・タイトルな。」

「手紙かぁ~……それやったら大丈夫かもな、俺でも。」

「じゃあ早速書いてみよー!」

「でもこれうさぎ柄……恥ずかしくて書けんわ、こんなもん……」

「バカ言うねぃ!うさぎちゃんをバカにするな!うさぎちゃんやって頑張って生きとるのやぞ!!」

「は、はい……すみません…」

「つべこべ言わずに、はよ書け!」

「はい!師匠!」


 俺は廉の勢いに乗せられて、人生初のラブレターなるものを全力でしたためた……




―――


 次の日の朝、こっぱやく廉の電話に起こされて、何があっても絶対に告白しろ!って言われた……


『それと俺も病院抜け出して駆けつけるから、昼休み裏庭で待っててや。』

 そう最後に言って勝手に切りやがって廉の奴……ってか、病院抜け出したらあかんやろ!


 と思いつつも、来てくれる事に本当は感謝していた。

 最近調子いいしちょっとくらい大丈夫やろ。後で二人仲良く怒られればええ事やし。


「おっす!蒼太。」

「あ、おっす!薫。」

 教室に入って一番に挨拶してくれた薫と朝のショートコントでもしようとした時、昨日喧嘩していた加奈子と美咲が話しているのが耳に入ってきた。


「へぇ~、蒼太君は諦めて廉君が気になってるんだ。」

「うん。廉君って思ってたより真面目で良い子なんだよ。元気だし明るいし素直だし、あたしにはないものいっぱい持ってる。」

「そっか。加奈子じゃ蒼太君は似合わないって前から思ってたんだよね~」

「何それ、言うわね~あんただって似合ってないよーだ。」

「わかってるよーだ。」

 そう言ってお互いに舌を出して笑う。俺はそんな二人を見て微笑んだ。


 お互い思ってる事、言えるようになって良かった、良かった。

 俺は心の奥底からそう思った。



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