第9話 続・親友のエール
―――
次の日、眠い目を擦りながら教室に入ると女子が喧嘩をしていた。
「加奈子!あんたどういうつもりなの?あたし達の事友達だって言ったじゃない!!」
「何が友達よ。あんた達があたしの悪口言ってんの、知ってるのよ!」
「そ、そんなの嘘よ!友達の悪口言う訳ないじゃない。バカにしてんの!?」
「バカになんてしてないわ。本当の事言ったまでよ。」
「……ならあたし達も言ってやるわ。あんたのそういう上から目線がずっと前から気に入らなかったのよ。自分が中心じゃないと気が済まないし、男には媚びるし。蒼太君の事だってうちらに内緒でコクるなんて一体どういうつもり?」
「なっ……!そんな事あんた達に関係ないでしょ!!」
加奈子とグループの中で一番仲の良かったはずの美咲の口喧嘩は段々激しくなっていき、手がつけられない状態になってしまった。
でも何で俺の名前が出てくるんや?ん~~……疑問だ…
「おい、蒼太。止めてこいよ。」
「は?何で俺?」
「だって何か知らんけどお前の名前出てるし。」
「……しゃーないな。止めてくるわ。」
「頑張れや。生きて帰ってこいよーー」
「おう、死ぬ気でやったるで!……ってこぇ~事言うなや。」
とまぁ、隣にいた薫と即席漫才をやってから俺は二人を止めるべく間に割って入った。
「ちょいちょい二人共。そこら辺で終いにせぇや。授業も始まるし。」
「蒼太君!何で止めるのよ!」
「邪魔よ!あっち行って!」
「ど、どうどう……加奈子も美咲も落ち着いて。ちゃんと話せばわかっ……」
「落ち着いてなんかいられますかってんだ!あたしは友達なのに裏切られたんだぞ、この加奈子に!」
「友達だって思ってたんやったら、何で悪口なんか言ったん?」
「え…それは……」
「そんなのは友達って言わんのや。」
「友達だって悪い所が見えてくれば悪口も言いたくなるでしょ。それのどこがいけないの?」
「悪い所を本人に直接言えてからこそ、本物の友情なんや。いつも深いところで繋がっとって離れていてもお互いを信頼し合える。それが友達なんやと違う?」
「…………」
「美咲。あたし達もこれからそういう友達になろうよ。」
「え……?」
加奈子が俺の影から一歩進み出ると、意を決したように話し出した。
「ごめんね、みんな。あたしってこういう性格だから、上から目線だったり偉そうにしていないと人と話したり出来なくて……ほら、ガキ大将っているじゃん?あれの女版って感じ。自分が中心にいれば、一人ぼっちにはならないから。だからみんなには今まで凄く嫌な思いさせてたね。謝ったって簡単に許される事だとは思わないけど、……ごめんなさい。」
静かに頭を下げる加奈子。それに対し女子達はざわついたけど、美咲だけはじっと真っ直ぐ加奈子の姿を見つめていた。
「でももし許してくれるのなら、うわべだけの関係じゃなくて本当の友達になりたい。」
「加奈子……こっちこそごめんね。」
「え!?」
美咲の言葉にパッと顔を上げた加奈子は、目にいっぱい涙を溜めていた。
「あたし達の方こそ謝らないと。だいぶ酷い事言ったけど、本心とかじゃないから。これからもよろしくね。」
「……もちろん!!」
加奈子と美咲が固い握手を交わすと、他の女子達がワーッと集まって今度はわいわい騒ぎだした。ちらほら泣いている子もいる。
何か良くわからんが仲直りしたらしい。は~疲れた……
「しかし廉よ、わざわざ言わんでも加奈子は大事な事に気づいとったで。」
今頃病院でやきもきしているであろう廉に向かって、俺はそう呟いた……
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