第7話 親友の笑顔


―――


 かくして、加奈子は俺達の友達になった訳で……


 今日も廉の元へ急ぐ俺の後をついてくる加奈子以外はいつもと変わらず、病院の中までは昨日とまったく同じだった。それが……


「加奈ちゃん!来てくれはったんか?」

 この廉の一言で俺の笑顔は消えた。

 廉は俺なんて目に入っていないって感じで、加奈子の方ばかり見ている。


「友情なんて……脆いものさ……」

「え?何か言った?蒼太君。」

「いや、何でも。」

「あれ?蒼太、来とったん?」

「えぇ、いましたとも。さっきからずっと……君が気づかんかっただけで…しくしく……」

「泣かんといてぇな、蒼ちゃん。嘘やって。ホンマは最初から気づいとったで。なぜなら僕が君を愛しているから。」

「なぁ、加奈子。廉に言ってもええか?昨日の事。」

「何やねん。無視せんといてぇな。」

 廉を無視して加奈子に聞くと、加奈子は無言で頷く。俺は廉にぐいっと近づいた。


「な、何や……?」

「廉。耳の穴かっぽじってよう聞けよ?一回しか言わんからな。」

「何や、何や。良い話?」

 まだ何も言ってないのにはしゃぐ廉を横目で見ながら、深呼吸を一つついてから言った。


「加奈子な、お前の事考えてやってもええって。」

「へぇ~加奈ちゃんが俺をねぇ……ってゔえぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙!?」


 また病院で大声出しよって、こいつは……


「何事だね!?」

「すいません、すいません、すいません、すいません……」

 駆けつけた医者に俺は何度も何度も謝る。医者の余りの迫力に加奈子までもが反射的に頭を下げていた。


「まったく……くれぐれもお静かにね!」

「はい、すみませんでした……」

 半分呆れた感じで言われて、俺と加奈子は小さくなった。

 チラッと顔を見るとこの間も来たあのムカツク医者だ。


 くそっ!相変わらず上から目線で偉そうで気に入らん!……っとまぁそれは置いといて問題は廉だ。


「また壊れとるし……しゃーない。」

 俺はまたまた顎が外れている廉をそっと抱き締めた。

 しばらくして……


「ゔわぁ゙!!」

「おー、気づいたか。」

「蒼ちゃん。俺の愛に答える気になったのね?」

「ちゃうわ、ボケ!」

「ボケって言った……ボケって…」

 落ち込んでる廉は放っといて何が何だかわからなくなっている加奈子に、今俺が廉を抱き締めた理由を話そうか。


「こいつってさ、感情を素直に表に出すやろ?それはそれでええんやけど、厄介な事があって……」

「厄介な事?」

「あんまり感情的になると、ホンマに壊れてしまうねん。さっきみたいにさ。せやからそういう時は俺が抱き締めてやると元に戻るんや。」

「へぇ~凄いんだね。やっぱり二人は深いところで繋がってるんだね。」

「そ、そうかな……」

 加奈子の言葉と尊敬の眼差しに照れる俺。


「ちょいちょい!二人して俺を置いてくな~!」

「あ……ごめん。」

 廉が泣きベソをかきながら俺にくっついてくるのを上手く交わす。すると加奈子がそんな俺達を無視して言った。


「あの…もう一つ話があるんだけど。」

「あ、そうやった!忘れとったわ。もう、廉のせいや。まったくお前は……」

「だから!例の話をしに来たんでしょ。」

「……はい。」

 加奈子は実は怒ると恐いんだな……顔が般若だ…

 今後は怒らせないようにしよう。

 俺は気を取り直して廉の方を向いた。


「例の話ゆうのはな、加奈子の事や。」

「加奈ちゃんの事?」

「せや。実はな、加奈子の友達な、影で加奈子の悪口言うとるんやって。せやから俺らの仲間っつぅか、友達にならへん?って提案したんや。」

「そいで?加奈ちゃんの返事は……?」

「もちろん、OKよ。」

「……やったーーー!」

 俺の代わりに加奈子が答えると、廉が加奈子の手を握って自分の手と共に万歳をする。その時戸惑いながらも頬が少し赤くなっている加奈子を、俺は見逃さなかった。


「何だよ……やっぱり俺はお邪魔虫なんじゃん。」

 そう呟きつつ、俺の顔はニヤけていた。



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