第6話 続・親友(と俺)の恋
―――
「大西とはあんまり話した事ないんやけど――」
ある日、俺は消しゴム忘れて困ってたんや。授業中やし、しかも数学だから消しゴムないのは致命的やった。
「げー……どないしよ。ツバで消したろか。」
仕方なくツバで消そうとした時、大西が後ろから(後ろの席なのだ)何も言わずに消しゴムを投げて寄越した。
「え?これ……」
俺が振り向いて消しゴムを指差すと、大西はいつも無表情のその顔に微かに笑みを浮かべて、口だけ動かしてイ・イ・ヨって言ったんや……
二人の馴れ初め 完――
「そういう訳なんや……ってオイ!聞いてる?」
まだボーッとしている廉の肩を揺さぶって正気に戻す。廉はハッとして目をパチパチさせた。
「え?何?」
「聞いてなかったんか?じゃあもう一度、俺と彼女の……」
「ええっちゅうねん!ちゃんと聞いてたわ、アホ!」
「あらそう?ならええわ。」
「それにしても蒼ちゃんが大西をね~余りの事にビックリしてもうたわ。でも大西っていつも一人でおるし、笑わへんし、喋らへんし。取っつきにくい感じやけどな。」
「何を言うか!」
「わおっ!」
「女はな、優しいのが一番なんや。大西以外のクラスの女子どもはそれが欠けとる。」
「何や。それじゃ加奈ちゃんもかい。」
「加奈子は……根はいい奴やと思うけど、外見が…派手やし。」
「人は見かけによらないって言うやろ。」
「そりゃそうやけど……」
「まぁこの話は置いといて、大西の事や。」
「な、何や。反対するんかい。」
「いや。俺は蒼ちゃんが選んだ人やねんやったら何も言わん。頑張れや。」
「……サンキュー」
思いがけず嬉しい言葉をかけられて、俺は目を逸らしながら照れ笑いをした。
(廉。俺もお前の恋、応援するで!)
―――
次の日、俺は加奈子を裏庭に呼び出した。昨日の事を謝る為に。
「あの…さ、昨日はごめんな。俺……」
「いいよ。」
「え?」
「本当に好きな人いるんでしょ?だったら諦めてあげる。昨日の事も許すわ。」
「あ、どうも……」
まったく……こういう『してあげる』的な発言が気にくわんのや。お前は女王様か!ってツッコミたくなる。
「廉君の事……考えてあげてもいいよ。」
「え、ホンマか!?」
「うん。」
俺は嬉しさのあまり、二回目の『してあげる』発言をスルーした。
「何で急にそう思ったん?」
「昨日、病院で話してる時気づいたの。あぁ、この人は実は真面目で気遣いのできる優しい人だって。だから……」
「真面目で気遣いのできる、か。そうやな。あいつは普段はああだけど、俺なんかより優しい奴やで。」
「蒼太君の事ちゃんと考えてて、蒼太君も廉君の事考えてて……いいなぁ、そういう友情。絆があるって感じ。」
加奈子がふっと悲しい瞳をしたのを、俺は見逃さなかった。
「どうしたん?」
「あ、ごめん……ただ…あたしには見かけだけの友達しかいないなぁって思って…」
「そんな事あらへんよ。加奈子人気者やんか。」
「そうかな……みんな、あたしのいない所であたしの悪口とか言ってたりするから……」
「そんなん…わからんやろ?」
「聞いちゃったの。みんな集まってあたしの事悪く言ってたのを……」
「……せやったら俺らの仲間にならん?」
「へ?仲間って……」
「俺と廉と加奈子。三人やったらきっと楽しいで。」
「……しょうがないわね。いいわ、友達になってあげる。」
「はぁ~……相変わらずやなぁ。」
三回目の女王様発言に呆れながらも、本当は嬉しい気持ちでいっぱいだった。
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