第4話 親友の本音
―――
次の日、俺は学校が終わってすぐ、部活も出ないで廉の所へ走った。
「よぉ、廉!」
「蒼太!今日も来たんか?って部活は?」
「まぁ息抜きも大事って事で。」
「息抜きし過ぎてレギュラー選ばれんかっても知らんからな。」
「大丈夫に決まってるやないか。俺やで?」
「凄い自信やな……」
「まぁな。」
「比べて俺は……レギュラーは諦めるしかないな。」
「え!?」
「だってそうやろ。こんな事になって……」
「廉……」
廉がしゅんとなるから俺もつられて俯く。
「せっかく二人一緒にレギュラーになれそうやったのに、ホンマごめん。」
「謝んなって。」
「……なぁ、蒼太。」
「ん?」
「昨日さ、細川先生と何話してたん?」
「え……?」
いつものトーンだったがその内容に驚いて思い切り顔を上げた。廉の真っ直ぐな瞳に出会ってちょっとたじろぐ。
「な、何って…えっと……」
「ははっ!蒼ちゃんってホンマに嘘つけへんよな。」
「廉?」
「あはは!」
突然腹を抱えて笑い始めた廉を訝しげな顔で見ると、今度は真顔になってベッドから起きた。こっちを向く。
「何?」
「聞いたんやろ?俺の病気の事。」
「あ、うん……勝手な事してごめん……」
「ええって。俺の方こそごめん。何も言わなくて。」
「いや……」
「元々18歳まで生きられるか微妙やったんやて。こっちに引っ越してきてすぐ、母ちゃんと細川先生が話してたん聞いてしもて。」
「…………」
思わず無言になる。それでも廉は変わらない調子で話し続けた。
「それ聞いて俺、諦めたんや。どうせ中学では友達もできんやろし、いつそうなってもいいように俺は俺を諦めようとした。でも……蒼太。お前に出会った。」
「……え?」
「思いもせんかったで。同じクラスに関西人がいてるなんて。友達なんて作るつもりなかったのに、つい声かけてもうた。」
「そういや、そうやったな。急に話しかけてくるからビックリしたけど。」
四年前、俺たちが初めて会った時の事を思い出して二人して顔を合わせて微笑んだ。
「人見知りの俺の一世一代の勇気やったんやで。まさしくあれや。清水の舞台から飛び降りる覚悟だったって事や。」
「必死の形相やったもんな。」
「あ!バカにしたな!」
「してへんよ。」
「いいや!今の言い方は絶対バカにしてた!」
「してへんて!」
「ええ加減認めろ、こら!……ゲホッ!ゲホッ!」
「おい、大丈夫か!大きい声だすからやで……」
俺をどつこうとして大声を出した拍子に咳き込む廉。慌てて背中を撫でてやった。
「すまん、もう平気や。」
「ホンマか?」
「うん。ありがとう。」
「あぁ。」
「なぁ、蒼太。お前に言わんかったんは、お前を信じてないとか頼りにしてなかった訳とちゃうからな。」
「何や、急に。」
「やってお前さっきから、『何でもっと早く言ってくれへんかったんや~!』って顔しとるから。」
「は!?そんな顔してへんし。」
無意識に顔に手をやると廉は何がおかしいのか、くすくす笑った。
「お前に言わんかったんは、また俺の事で迷惑かけるんやないかって思って……」
「せやから!何べん言うたらわかんねん!お前は俺のっ……」
「『大切な人』やろ?」
「ぐっ……」
「今のは言わせたくてわざと言うた。こんなに想われてなんて幸せ者なんや、俺って。」
「廉……」
「ん~?」
「お仕置きじゃぁぁ!!」
「ひゃはははは!!」
廉のイタズラに恥ずかしくなった俺の『足の裏こちょこちょの刑』を受けた廉は、ベッドの上でしばらく悶絶した……
でも今までずっと知らなかった廉の本音が聞けて、俺は良かったと思った。
迷惑かけるんやないかと言いたい事我慢しないで、俺には何でも話して欲しい。
『苦しい』とか『痛い』とかでもいい。
『何でもない』『全然大丈夫』なんていう上部だけの言葉なんていらないんやから。
廉はまだ諦めていない。俺にはわかる。せやから俺も諦めない。一緒に頑張っていきたい。助けになりたい。
今日廉に会って話をして、改めてそう感じた俺だった。
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