第2話 親友の真実
―――
病院に着くと、俺は廉を救急外来の待合室の椅子に座らせて、自分もその隣に座った。
「ごめんな?迷惑かけて……」
廉は顔を俯かせてポツリと呟く。心なしか声が震えているような気がしたけど……気のせいやろか。
「あのなぁ……大切な人の為にする事なら、迷惑になんてならんのや。よく覚えとき。」
「蒼太……」
「霧島さん。診察室にどうぞ。」
「あ、はい。」
扉から顔を出した看護師の呼びかけに短く答えて、廉と俺は診察室の中に入った。
「やあ、廉君。」
「どうも……」
「あれ?知り合い……?」
笑顔で廉に挨拶する医師と浮かない顔の廉を交互に見る。するとその医師が俺の方を見てにっこり笑った。
「廉君のお友達?」
「はい……」
「初めまして。細川といいます。呼吸器専門医なんだけど、今日は当番で救急外来に来てるんだ。……さて廉君。また発作が起きた?」
「……えっとその前にこいつに事情話してもええですか?痛みはもう治まったので。」
「あぁ、いいよ。」
あっさりとそう言うと、気を利かせてか後ろのカーテンを開けて出ていった。
「蒼太、ごめんな。俺、お前に隠してた事あんねん。」
「……え?」
「実は病気やねん。小さい時から肺が悪くて、関西からこっち来たんもこの病院に通う為やったんや。あの細川先生はああ見えて凄腕らしくてな、母ちゃんが色々調べてくれてこの病院が俺の病気には一番ええって言うから地元の病院から移ってきたんよ。それからずっと先生にお世話になってて……」
「そう、やったんや……」
全然気づかんかった。っていうかそんな素振り見せなかったし、サッカーだって普通に……ってそう言えば部活休みがちだったなぁ……
「おい蒼太?大丈夫?」
「あ?あ、あぁ……うん、大丈夫。」
「良かった。じゃあ先生呼ぶから、蒼太は廊下で待っとって。」
「え!?っと……うん、わかった。じゃあ待ってるから……」
きっぱり言われて後ろ髪を引かれながらも、俺は診察室を出た。
―――
それから三日後――
「……そうたくん?…蒼太君!」
「……え?あ、何?」
「どうしたの?元気ないじゃない。」
「いや別に……何でもない。気にせんといて。」
「そう?ならいいけど。」
「で、何?何か用?」
「あたしも別に……」
「そう。ならええけど。」
「じゃね。」
「あぁ。」
クラスの女子のリーダー的存在の長崎加奈子が、俺の前を横切って友達の輪の中に戻っていく。俺はそんな彼女を見るともなしに見ていた。
「どうしたの?加奈子。蒼太君に何か用事だったの?」
「別に……」
「でもさ、この教室も随分静かになったね。」
「廉君がいないからね。」
「でも蒼太君可哀想。あれから三日、ずっとあんな感じだよ。」
「心配だよね……」
女子達の会話に居たたまれなくなって勢いよく席から立ち上がると、俺は鞄を持って教室から出た。
そしてそのままこの間の病院へと向かった。
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