知恵の星
遠い宇宙に暮らす星の住民が、研究のため地球に降り立ちました。
その星は科学が地球よりずっと進み、色々な知識をもっていましたが、人間とは違った進化を遂げていました。
地上へ降りた星の民達は、初めは街へ降りて、地球に暮らす人々の文明を探ろうとしましたが、すぐに宇宙船へ逃げ帰りました。
人間の構造や文明は、流石の知恵の星の民達でも理解できなかったのです。
仕方なく、地球の植物や土壌の研究に取りかかりました。
知恵の星には植物がなかったので、美しい緑をみた乗組員達は、目を輝かせて様々なサンプルを採集しては宇宙船に持ち帰りました。
森に生えていたキノコを持ち帰った乗組員が、サンプルを検査機械で調べました。
「これは………こんな奇妙な形のものも生き物なのか!まるで他の生物から養分を掠め取って生きているようだ」
知恵の星には植物がないので、菌類という生物をみたのも初めてのことだったようです。
小さな枯れ葉を持ち帰った乗組員が、サンプルを検査機械で調べました。
「なんだこれは!?この星では何ヵ月も前の生き物の死体が落ちているのか!?」
知恵の星では、どうやら死んだ生物の体は残らず消えてしまう様です。
倒れた大木の皮を持ち帰った乗組員が、サンプルを検査機械で調べました。
「こいつは……うぅ、おぞましい。今まさに他の生物の養分として分解されている死体だぞ」
知恵の星では死体は残らないため、朽ちた生き物が分解され、様々な生き物の中を巡っていることは不可思議な現象でした。
乗務員達が森で拾ったサンプルを調べる中、地球のどこにでもある空気を調べていた宇宙船のリーダーが叫び声を上げました。
「なんて星だ………この惑星は過去に死んだ生物の体が、他の生物に吸収され、分解され、最後には大量の塵として大気にばら蒔かれているんだ」
知恵の星の民達はあまりの恐怖に震え上がりました。魂だけでできた彼らは、体をもつ生物というものが理解できなかったのです。
地球の研究を諦めた知恵の星の民達は、遠い遠い宇宙へ帰っていきました。
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