「額縁」
私の部屋には額縁があるの。
どこかの職人が彫刻した、綺麗な白い額縁。
これで私の狭い部屋も、ちょっとはお洒落に見えるかしら?
ーーーーー
何の絵を飾っているのかって?
さあ…………気まぐれで変えてしまうから、以前何の絵があったかは覚えてないわ。
今は白い朝日が差し込んだリビングの絵よ。
冷えて張りつめてた空気すら感じるような、見るだけで目が覚める、お気に入りの一枚目なの。
ーーーーー
秋になったから、綺麗な落ち葉を嵌め込んでみたわ。
そのうち枯れてしまうでしょうけど、それまでは燃えるような赤と黄色が楽しめそうね。
……あれ?
いっけない。後ろに前の絵を嵌めたままだったかしら。
染みにならないといいけど……
でも、前の絵だからどうせ捨てるのよね。
このままでいいかしら。
ーーーーー
今度は女性の絵に変えたわ。
なんて綺麗な女性なんでしょう………
目は深い海の色。肌なんて真っ白で、まるで美術館の彫刻のようだわ。
……でも、ちょっと正面を向きすぎね。
視線をそらしても、ずっと見られている気がして落ち着かないわ。
よし!この女性より綺麗な人の絵を見つけたら、嵌め変えるようにしましょう!
それまでは毎日にらめっこしてあげるわ!
ーーーーー
__あなたの絵。
そう……この額縁も、あなたに貰ったのよね。
もうずっと前だったから忘れてしまいそうだったわ。
絵が好きだったあなたが、私も絵が好きになってくれるようにって、額縁だけくれたの。
………元気、かしら。
私なんかよりずっと素敵な人に出会って、幸せに暮らしているのかな。
………。
………………なにか、いい絵ないかな。
ーーーーー
部屋が火事になった。
金属の鏡台も、仕事机も、全部燃えていく。
私の髪も、顔も、どれも燃えていい。
どうか、この、額縁だけは…………
擬人化観測 物体
テーマ「額縁の女性」
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