第9話 蜘蛛とスライムですが何か?
「ネ゛〜グ〜ロ゛〜?」
そこに立っていたのはほぼ般若の顔でこちらを睨んでいるリリス姉であった。
「え〜とっ?こ、これはですねぇ〜?」
な、なにか良い言い訳を考えなければ!!
そ、そうだ!!
「え〜とっ、なんか偶々扉が開いてたので興味本位で入ってしまったんですよ〜」
普通に考えておかしな話のように感じるがこれでいい。
何故なら俺の本当のステータスを知るはずがない、知れれるはずもない。…‥俺が力加減間違えなければの話だが。
しかし、今までにそれほどの問題を起こしたこともないし、この状態なら先程の言い訳のほうが怒られるだけで俺を探ろうとはしないはずだ。
だが、俺の予想とは裏腹にリリス姉は怒るでもなく俺の言い訳に共感するわけでもなく只、無言で真顔のままこちらを見ている。
え?何この状況?あれか?眼と眼があったらポ○モンバトル的なノリなのか?
その状態が約五分続いていた
そろそろ何か話さないと気まづすぎて息苦しくなっているんだが…‥
先に口を開きこの静寂を破ったのはリリス姉の方であった
「あ、そ。なら早く出ていきなさい。こんなところを見られたらネクロ怒られるわよ」
「え…」
え?怒鳴らない…?どうしたリリス姉よ…風邪でも引いたか?
「どうやって入ったかは知らないけどネクロがここにいた事は黙っててあげるわ。」
「い、いや、だから扉が開いてt…」
「その代わり!!あたしがここに来たことも黙ってなさい。それが交換条件よ。」
なんだ?リリスがいつにもなく潮らしい。
「ど、どうしてそんなことを言い出すんですか?いつもは…」
「いいから、早く出なさい!!!!」
「は、はい!!」
リリス姉の気に触れたのか、一瞬で魔法館から叩き出されてしまった。
それにしてもなぜリリス姉は魔法館に?扉はちゃんと鍵がかかっておりその鍵もおふくろが持っている筈でスペアなど存在しない…‥
うん、深く考えるのやめよう。
これ以上考えてもこんがらがるだけだ。
◇◆◇◆
追い出された後、俺は森を探索していた。
この間のような魔法を試打する場所なんかを探すのではなく、【空間把握】を常時発動しながら歩いている。
この森は魔物が出ると聞いたが俺は一体も見ていない。今後、魔物とあったときの対処を間違えないように今からでも魔物に慣れる必要がある。
しかし…‥あれから一時間経ってるのに魔物、一体もいないんですけど!?
おかしい…【空間把握】が把握できる距離は今のところ俺を中心とした半径20メートルだ。
もちろん、歩いた道は被っていないしその間そこまで強力な魔力反応もなかった。
まさか…この森に魔物いない?
いや、流石にそれは有り得ないか。魔物なんて高密度の魔力と核さえあればどこからでも発生するって言うし俺の考え過ぎか。
そう思い、一旦屋敷に帰ろうとした時に【空間把握】に反応があった
「お、反応あり…移動はしていない……反応自体は強くない…だが人生で初めて合う魔物だ…油断はできない」
とりあえず俺は気づかれないようにそっと近づき様子を見るがそこにはこれといったものはなく目立つのは小さな茂みしか無かった。
しかし、その茂みをよく見ていると時々、ガサゴソという音が聞こえてきて中に何かいるみたいであった。
気になってしょうがないので無防備に茂みを掻き分けてみたら中にいたのは…‥
「銀色の…‥蜘蛛?」
そこには関節肢以外が銀色に輝いた蜘蛛が一匹いた。
だが、よく見ると足は一本欠け、表面はボロボロ。
明らかに瀕死状態である
早速鑑定してみると
【アース・タラテクト】
Lv 2
«種族» タラテクト種(特殊個体)
«体力» 143/1123
«魔力» 89/721
«物理攻撃» 892
«魔法攻撃» 195
«物理防御» 804
«魔法防御» 319
«速さ» 214
«スキル»
・粘糸Lv3 ・鋼糸Lv2 ・網糸Lv2 ・鋭爪Lv2 ・鋭牙Lv2 ・属性魔法Lv2(土)
«称号»
・特殊個体
_________________
【メタル・スライム】
Lv 3
«種族» 粘体粘着性生物スライム
«体力» 98
«魔力» 235
«物理攻撃» 69
«魔法攻撃» 84
«物理防御» 978
«魔法防御» 482
«速さ» 389
«スキル»
・加速Lv4 ・軟質化Lv2 ・硬質化Lv3 ・纏Lv3
«称号»
・纏われるもの
一体の魔物かと思っていたら二体だった。
しかもどういうこと?スライムが蜘蛛にひっついてんの?
だがまぁ体やステータスを見る限り二体とも瀕死だ。
治療してやるか?
万が一襲ってきても俺の人外ステータスなら死にはしないだろう。
「とりあえず…【治療魔法ヒール】」
【ヒール】は名前の通りの光属性魔法初級の治療系魔法だ。
魔法を扱える人間の中でも光属性を持つものは決して多くない。
なので普通怪我をしたら魔法を使って治すのではなくて回復薬などの薬師が作った薬で治療する…らしい。
おふくろの受け売りだから詳しくは知らんが。
最初は威嚇する体力もないのかされるがままにされていた二匹だが自分の体力が回復しているのだと分かるともっともっととでも言うかのように身をこちらに寄せてきた。
魔法をかけ続けていると銀色のスライムの表面はピカピカになりツルッツルし始め、蜘蛛は欠けていた足がピッ◯ロのように生えた。
そして二匹の体力がMAXになるくらいには二匹共すっかり元気になっていた。
一旦スライムを蜘蛛から剥がしてみる。
「よっこらしょ…ってスライム重っ!!…って!!」
スライムが予想より重かったのも驚きだが何より驚いたのが蜘蛛の見た目が…可愛すぎる…
なにこれ!?ぬいぐるみ!?めっちゃ目クリクリやん…しかも足短!!さっきの半分くらいの長さじゃん!!
まぁ…いっか…
治療していくらか経った後、蜘蛛たちはとある方向を指…?指しているのがわかった。
「なんだ?そっちの方向になんかあるのか?」
そう言うと蜘蛛は頭を上下に振りスライムは体全体でヘドバンのような動きをしていた。
「しょうがないな〜。……そういえば今思ったんだがお前ら俺の言葉は理解できてるんだろ?ならあった方が便利じゃないか?名前?」
二匹はお互いに顔を合わせまたこっちを見て首を傾げる。
な、なんか…かわいい…
しばらく二匹の顔を見て脳内フォルダに記憶した後、俺は蜘蛛に”ジョー”、スライムに”プルル”という名を名付けた。
一旦勢いでスライムにリ◯ルと付けてしまいそうだがなんかどっかから怒られそうだからやめておいた。
二匹が指していた方向にしばらく歩いてみるとそこにとあるものがあった」。
それは______巨大な黒く、強固そうな門であった。
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