第8話 魔法館

朝に珍しく目が覚める。




「……懐かしい夢を見た気がする…」




もう戻らない日々なんだよな…




「ふぅ…よし!!今日もいっちょ頑張りますか。」








朝食を食べ、各々が仕事や趣味なんかに勤しむ中ネクロはとある場所にいた


そこはネクロの母であるアリアが今までに集めた魔法関係の本、道具、素材などが保管してある場所。


屋敷の人間は”魔法館”と呼んでいる。


建物の大きさは屋敷の二割を占め、位置的には離れと言った方がいい。


さて、俺はその魔法館の前にいてどう入るか検討中なのだが……先ず入り口には物理的にも魔法的にも施錠されている。どちらも無理に壊して修復することは恐らくは可能だが鑑定されると一瞬でバレる。


《空間把握》で、この建物にはこの扉しかないことはわかったが……ん?この建物はレンガに近い石材を使用し、積み上げられた形をしている。その石材一つ一つにも付与魔法エンチャントがかけられ絶大な防御力になっている。


…‥…なら石材と石材の間は?


確かに石材自体は壊せないが間から抜き取ることはできるはずだ。


そう思い早速実行する。




先ずあれが動くかどうかを確認せねば。


最初に【空間固定】で石材の間をギリギリ通せるくらいの細い棒を空中に出現させる。


それを石材の間に通せればよかったのだが人生そううまく行かねえな。


通すも何もそもそもに動かねえ…


まぁ【空間固定】って言ってるんだから当たり前といえば当たり前だが…‥…‥


んん〜?新しい技でも作るか?


ネクロは悩みながらその場を回っている。しかもブツブツと独り言を言って。傍から見たら完全な不審者である。




「空間…‥空…‥スペース…‥空気…‥‥あ!」




ネクロは何かをひらめき早速実行に移す




「空間を固定したら動かないが空気なら‥‥‥‥」




先ず空間を指定し固定する。これは自体は空間固定をやるときと何ら変わらないが注目すべきはその大きさだ。


今までの最大は直径が10メートルくらいの球だったが今回は一辺が20メートルの立方体を作る。


ぐっ‥‥‥‥魔力をそれなりに消費してるな‥‥‥‥


次にそれに魔力を込め続け圧縮する。




「圧縮、圧縮、空間圧縮〜〜!!!」




ネクロはどこかで聞いたことあるようなセリフを言いながら立方体を縮めていく




ちょうど手のひらに収まる程度の大きさになった時に圧縮をやめる


圧縮をやめた瞬間に立方体は、ぽてっと地面に落ちた


落ちたことからもわかるようにこの立方体は”空間固定”で作ったものと違い自由に動かせる




石材をどうにかする前に色々と試しておくか






◇◆◇◆






失敗した‥‥‥‥


俺は今、木の枝の間で逆さ吊りになっている。


何故こんな状態になってしまったのかというと”空間圧縮”で作った立方体を投げたり、上に乗ってみたりして一通りのことを調べ終わったから”空間圧縮”を解こうとした。


それが間違いだった。


立方体の中には体積にて約64000000倍に圧縮した空気というか空間が入っている。


知っての通り空気を圧縮すると気圧の変化で熱くなる。


本来閉じ込めている立方体の表面にも結露が起き、水滴がつくはずなのだがそこは魔法でできた物質だからか圧縮する前と変わらない。


そして一番問題なのが圧縮された空気にかけている圧をすぐに解除すると空気は元の体積に戻ろうとして急速に膨張する。


それは中に閉じ込めた際の圧力に比例して。




つまり何が言いたいのかというと、空間圧縮で作った立方体をそのまま解除したら、熱風の比ではない量の熱を持った爆風を超至近距離で浴びてしまい五,六メートル


吹っ飛んだ。




防御力が無駄に人外じみているおかげで怪我や傷は殆どない。


次は気をつけて元の大きさに戻してから解除しよう。




さて、俺がしたかったのは木の枝の間に吊るされることじゃない。魔法館に秘密裏に入ることだ。


俺は木から降り魔法館の裏に行く。




「【空間圧縮】」




最初に空間圧縮で要となる”杭”を作る。それもとびきり頑丈に作る。


先程作った立方体ではなく四角錐、それを四個作る。


できたら魔法館の壁の中から適当なレンガを一つ見繕い、角に垂直になるように杭を打つ。


ハンマーが無いから手の平で押す。


こうするとレンガの周りに隙間できる。


そこに空間固定で板を挟む。


そして杭に更に上乗せで魔力を込め形を変える。


目指すは針のような形から細いバールのような形だ。


魔力を込め始めると杭はググッとその形を変える。


それを四つ全てに施し、しっかりと引っかかったら一気にレンガを引っこ抜く。”空間固定”で支えているので周りのレンガが崩れることはない。


レンガを引っこ抜いてできた穴には木の壁…というよりも本棚の背が見える。




「あちゃ〜ここははずれか〜。んじゃ次」




先程とは逆の順番でレンガを穴に入れる。


次はそこから約10歩位行ったところレンガを抜く。


そこには本棚の背はなく代わりにテーブルとその上に置かれた観葉植物があった。




「ここからなら入れるかな…?」




空いた穴を更に広げていく。


ちょうどネクロがぎりぎり入れるくらいの大きさになった頃、ネクロは中に入り、また穴を埋めていく。




「よし、やっと中に入れたな。」




魔法館の内装はよくある図書館って感じで三階建てだ。


今日、ネクロが魔法館に入った理由はうるさい姉から逃げるわけではない。


ネクロの目的、それは__




「さ〜てっと、とりあえず探しますか〜、魔法書を」




魔法書…‥それはその名の通り魔法について書かれた書である。




「おっと早速あった。えっと…『火属性魔法について』?」




ネクロは本棚から一冊の赤い本を取り出す。


内容は、火属性系の攻撃魔法、防御魔法、応用魔法etc.…


一冊三十分程度の時間で読み進めて行き水属性、土属性、風属性の他にも精霊魔法についてわかった。


記憶力はいい方だと思うが忘れたらまた来ればいいか。




嵌め込み式の小窓から入る陽の光の感じでもう夕暮れだということが分かった。


早々に切り上げようとして来た時と同じようにレンガを抜き取ろうとしていたその時_____




ガチャッ




と、鍵がかけられているはずの扉が開いた。


そして開けれれた扉から入ってくる陽の光を後光のようにしながらそこに立っていたのは____






「ネ〜ク〜ロ〜?」






暴君、リリス姉だった


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