幸せ令嬢はお姫様

 ――それから少しして。

 私達は今、とある場所にいた。

 大きなベルが鳴り響き、外では鳩が待っている。

 そんな明るい朝、私はその個室にいた。

 白いドレス――ウェディングドレスをまとって。


「……よう、綺麗だな」

「ノエルこそ」


 私に話しかけたノエルも、白いタキシードを着ている。

 その姿は、とても様になっていた。


「……なんというか、気恥ずかしいな。俺がこんな格好するなんて」

「ははっ、でも、かっこいいよ。さすが、私の旦那様だ」

「……お前こそ。まるで、一国のお姫様みたいだぜ。ま、公爵令嬢ならそれも当然か」

「……ふふっ、ありがとう」


 私は彼に笑いかける。

 今日は私達の新しい門出の日。

 結婚式なのだ。


「それじゃあ、行こうか、レイ」

「うん、そうだね……あなた」


 私は差し出された彼の手を取り、ゆっくりと立ち上がる。

 そして、静かに歩き出し、扉の前に立つ。それから少しして――


『それでは、新郎新婦入場』


 司会の声が聞こえると共に、扉が開いた。


「レイ、おめでとうーっ!」

「おめでとうございます、お嬢様っ!」

「レイーっ、よかったねーっ!」

「レイ様ーっ! お美しいーっ!」


 ヴァージンロードを歩く私に、アレックスが、ダグラスが、アレクシアが、クレアが声をかけてくれる。

 これほど幸せなことはない。

 私は心からの笑顔を浮かべた。

 そして私達は牧師の前に立つ。前世と同じ結婚式スタイルだ。


「新郎ノエル、あなたはここにいる新婦レイを、健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しいときも、妻として愛し、敬い、いつくしむことを誓いますか?」


 故に牧師も、聞き慣れた誓いの言葉を聞く。


「誓います」

「新婦レイ、あなたはここにいる新郎ノエルを、健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しいときも、妻として愛し、敬い、いつくしむことを誓いますか?」

「誓います」


 そして私も、当然のように応える。


「それではおふたりに伺います。今日という素晴らしい日にお二人は夫婦となりました。今日という日を忘れず、これからどんな困難もふたりで乗り越え、幸せを分かち合い、幸せな家庭を築くことを誓いますか?」

「「はい、誓います」」


 私達は声を揃えて言う。


「では両者、近いのキスを」


 牧師のその言葉で、私達は向かい合う。

 お互いに見つめ合う私達。

 これからみんなの前でキスをする。

 そのことにちょっとの気恥ずかしさを持っていた私に、ノエルが言った。


「レイ……綺麗だ。さっきも言ったが、まるでお姫様だ」

「……あなた」


 その言葉に、私は頬を赤らめ、そして涙が出そうになるくらい嬉しくなった。


「……いくぞ、レイ」

「……うん」

 そして、ノエルが私の肩に手を置き、顔を近づける。

 私もそれに答え、目を閉じて唇を差し出す。

 そうして、私達は結ばれた。

 私はその日から、彼だけのお姫様になった。

 幸せな、お姫様に。

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【完結】悪役令嬢は王子様!? 御船アイ @Narrenfreiheit

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