悪魔と王子
「ガアアアアアアッ!」
最初に仕掛けてきたのはバフォメットだった。
バフォメットの強靭な右腕が私めがけてものすごい速さで振り下ろされる。
「ふっ!」
私はそれを避ける。
そして、すぐさま跳ね床に深くめり込んだその腕を剣で斬る。
「はっ!」
手首を的確に斬る。
だが、バフォメットの手首はそれで切り落とされること無く、噴出するのは赤い血のみ。
「流石に硬いか……!」
バフォメットはその私によって斬られた腕を横薙ぎにして私に振るってくる。
「ふんっ!」
私はそれを宙返りして避ける。
そして片手で魔法によるエネルギー弾を空中から浴びせかける。
ドドドドドンッ! とバフォメットの体に魔法弾がぶつかる。
だが、それでもバフォメットはうめき声一つ上げずに私に向かってさらなる左の豪腕を振るう。
「ちいっ!」
今度の私はそれを避けきることができず、魔法障壁を出して防ぐ。
だが、その圧力に少しのけぞる。
そこからバフォメットは自分の背後に二つの緑色の魔法陣を出してくる。そしてそこから、極太の魔法によるビームが飛んできた。
「させるかっ!」
私も相対するように、背後に二つの紫色の魔法陣を展開して同じようにビームを射出する。
緑と紫のビームは拮抗し、空中で大きく爆発する。
その爆炎の中を私は飛び、バフォメットの首元を斬る。
「だあっ!」
「グモオオオオオオオオオオッ!?」
そこでようやくダメージが入った声がした。
なるほど一応悪魔も人と同じところが急所らしい。
「ならばっ!」
私は戦法を変える。人間と同じ急所をとことん着く作戦だ。
脳天、首元、心臓。
それらに次々と魔法弾、及び剣を放つ。
「だあああああああああああああああっ!」
私の攻撃は苛烈にもバフォメットに向かっていく。
奴に一切反撃させないための攻撃だ。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
それにバフォメットは雄叫びを上げる。
効いている。
私はそう思った。
だがその次の瞬間――
「ガアッ!!」
「っっっ!?」
バフォメットの体が赤く発光し、爆発するような魔法の衝撃が私を襲った。
それにより、私は壁に叩きつけられる。
「がっ……!?」
そのまま私は床に落ちる。
全身の骨が折れそうな痛みを感じる。だが、折れてはいない。今の私はそんなやわではない。
「……だあっ!」
私はそこからすぐさま体制を立て直し、剣を片手にバフォメットに突撃する。
今度は体に先程の衝撃に爆発で相殺するように創り上げた魔導炸裂障壁をまとって、である。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
バフォメットはやはりまたも体を発光させ魔法の衝撃を飛ばしてきた。
それに対し私の魔導炸裂障壁は反応し、打ち消す。
そしてそのままの勢いで私は翔け、心臓に剣を突き立てた。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」
どうやらバフォメットの魔法の衝撃は自分の防御魔法を代償にしていたらしく、防御力が弱まっていたのか、剣はすんなりと悪魔の心臓に突き刺さった。
好機っ!
「はああああああああああああっ!」
私は次々と剣を手元に召喚し、心臓に何本も何本も剣を刺していく。
「ガウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
それには流石に堪えられなかったのか、バフォメットは地面に倒れ伏す。
これこそ止めの時だ!
私は倒れたバフォメットの頭に胸から飛び移り、そして、同じように剣を突き立てていった。
「ガ……ガガガガ……ガガ……!」
バフォメットの醜い断末魔が聞こえる。
それと同時に、『緑衣の女王』を覆っていた炎が消える。
私は勝ったのだ。高位の悪魔に。
「……ふぅ」
私は思わず息を吐く。
これほどまでの強敵は、初めてだった。
三年間魔物相手に特に苦戦なく戦ってきた私にとっては、初めての苦戦であると言っていいだろう。
私は疲労感に包まれながらも『緑衣の女王』を処分するために書が祀られている祭壇へと歩み寄った。
「これで……終わる……」
私はそう思い、書を手にした。
そのときだった。
「――――っ!!??」
私の頭を強烈な痛みが襲った。
あまりの激痛に私は声も出せず、そのまま床に倒れ、意識が遠のいていった……。
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