学期末とサマーバケーション
体育祭、期末テストというイベントが終わり、ついに学校は一学期の終わりを迎えた。
講堂で学園長の挨拶を聞き終え、クラスで最後のホームルームを終えた私は、自分の寮へと戻り実家に帰る段取りをしていた。
「よし……こんなものかな」
私は大きなカバンに必要なものを入れ終えると言う。
服に休暇中にこなす課題などなど。
案外コンパクトに収まった。
「これぐらいならダグラスの手を借りずに運べるかな。まあ、彼だって運ぶものがあるだろうし頼るのも心苦しいしね」
他に何か忘れ物がなにか確認する。
……よし、問題ないな。
私は最終確認を済ませるとカバンを手にして部屋を出る。
そうしてカバンを持って談話室に行くと、既に準備を終えていたらしいアレクシアとクレアが楽しげに話していたところだった。
「あっ、レイ。レイも終わったの?」
「レイ様お疲れさまです」
「やあ。二人共終えるのが早いね」
私は二人に笑いかけながらカバンを置き、椅子に腰掛ける。
「あーあ、これでしばらくレイと会えなくなるのかー。寂しいなぁ」
「アレクシアは町娘だから気軽に貴族の私達のところにこれないものねぇ。そういう私も公爵家のレイ様とはさすがに身分が違うから気軽に遊びに行く、っていうのはあんまりできないんだけど」
「昔はよく来てくれたじゃないかクレアは」
「そうですけどー、今はちょっとむずかしいって言いますか……」
クレアは拗ねたように言う。そういうものなのだろうか?
「うーん大変だよねー。いっそのことレイのところに長くお泊りとかできたらいいのに」
「えっ? 別にいいけど」
それぐらい両親は許してくれると思うんだけど。
私は軽い気持ちで言った。
だが――
『えっ、ええええええええええええええっ!?』
帰ってきたのは、想像以上の驚きの声だった。
「いっ、いいんですかレイ様!?」
「だ、大丈夫だと思うけど……お父様もお母様も二つ返事で答えてくれそうだし。そんな驚くこと?」
「……レイって時折自分の身分のことに無頓着になるよね。ああでも、親御さんがそういう人達なのかな」
「ん? なんだなんだ?」
「どうかしたのかい?」
「……るせぇな」
と、そこにダグラス、アレックス、ノエルが男子寮の方からやって来る。
どうやら彼女らの驚きの声は外まで届いていたらしい。
「ちょっと聞いてよダグラス! レイ様、私達に泊まりに来ないかって言うんだけど!」
「……あーなるほど。まあ、たしかに旦那様も奥様もお嬢様の言うことなら二つ返事でいいって言いそうだなぁ。でもお嬢様、一応公爵家の娘がそうほいほいと家を宿舎みたいにしちゃいけないんですよ」
ダグラスが呆れたように言う。
むむ、そんな非常識なことだったとは……
「……ごめんダグラス。ちょっと軽率すぎたかな? 私としては、夏休みをみんなで過ごせたら楽しいと思ったんだけど」
「そうでしょうけど……」
「なら、こういうのはどうだい?」
と、そこで提案してきたのはアレックスだ。
「実は王家で持て余している別荘があってね。とある島にある素敵な別荘なんだけど、みんなで少しの間そこで過ごすっていうのは」
「あっ、いいね! そういうの! みんなでしようよそれ!」
合宿みたいだ!
私はそう思って言った。
思えば前世では部活の合宿で民宿に泊まったりしたなぁ。いや、王家の別荘だから民宿なんかと一緒にしちゃいけないんだろうけど。
「……その頭数に、俺も入ってるのか?」
「え? もちろんだけど」
ノエルは私がそう返して視線を向けるとバツが悪そうに顔を反らした。
むむ、まだ彼は倉庫でのことを引きずっているのだろうか。案外尾を引くタイプなんだな……
「……来るよね? ノエル」
なので、私は念を押す。ちょうどいい。これはちょっと距離を縮めないとだめなのかもしれない。
「じゃあ決まりだ。家への説明は各自済ませて、問題ないなら手紙でやり取りして細かい日程を決めよう!」
「お嬢様、なんかノリノリですね」
「……ふふっ、そうだね」
私は少しばかり訝しむダグラスに笑いかけた。
まあ、楽しみだからね。
こういうことは久しぶりだし。
私ははやる気持ちを抑えようと努力しながらも、口元が緩むのを感じていたのであった。
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