act.2 転生の証






 赤い戦闘服に剣(つるぎ)。自分の姿がいつもと違う。

そして目の前には異形の存在。全てが異常なのはわかる。しかし、一番の気がかりは……

「バニラ、」

「?」

「なんであんたは俺の名前知ってるんだ?」

バニラという女性が何故、自分の名前が明星晴彦だと知っているのがであった。

「今そこじゃないでしょ!!」

バニラはリチュオルを指刺しながら叫ぶ。

「もう色々ありすぎてなんのこっちゃだけど一番はそこなんだよ!」

先程までの一連で一番の疑問をバニラにぶつける。

リチュオルは二人の光景に呆れる。

「おい、おい! 俺を忘れるな!」

「おっと!」

晴彦、ライツ01はリチュオルを見る。

リチュオルは鎌のような腕を振り回す。

「貴方の名前を知っていた理由は後で話すからそいつを何とかして!」

バニラは叫ぶ。

「なんとかって?」

「腰にかかってる剣あるでしょ。それ使って!」

「剣?」

腰のベルトには細く鋭い剣がある。

「わ、わかった!」

晴彦はそれを手に持つと、リチュオルに向かっていく。剣を持ったことなどないが何故か使い方はわかる。

キィン!キィン!

鎌と剣がぶつかる音がする。

「やっぱり…お前が、あの騎士達の一人か」

リチュオルは一人で納得する。

「おい、王子(プリンス)と回路維持元装置はどこだ?」

「はぁ?」

リチュオルの鎌とライツ01の剣が交差しているとリチュオルが突然言い出す。それが耳に入ったライツ01はリチュオルから離れて剣を下ろす。

「……さっきから俺の知らない話ばっかで……俺にもちゃんと説明しろ!!」

回路維持元装置といい、バニラといい、リチュオルといい説明が不足しているがゆえにライツ01の怒りは爆発する。

「俺は! バニラとはさっき会ったばかりでお前らは事情は知らないの!」

ライツ01は叫ぶ。それを予想外に思ったリチュオルは思わず黙る。

「それに、」

「それに?」

「あんたが鎌振り回したせいで地面とか斬られまくって本当に迷惑なんだよ!」

迷惑。ライツ01にそう一言でまとめられた。

「……」

リチュオルは黙り驚いたが、また一人で納得する。

「ここでお前を殺すと上がうるさいからな。今日は見逃してやる」

リチュオルの姿は消えた。

「え!?」

「一応退けたかな……」

「退いたのは俺だよ!」

ライツ01の怒りは続く。

「ああそうでした、ありがとう」

バニラはライツ01に近付く。

「バニラこの格好は」

「さっきの時計の針を弄ったら変身は解けるわ」

ライツ01は言われた通りにするといつもの明星晴彦の姿に戻る。

「はぁ……」

晴彦は力が抜け座り込む。

バニラに渡された時計のようなものを見る。

「バニラ、これは一体なんなの? さっきの奴とかナントカ装置とかって何?」

先程からずっと不可思議なことが起きている。突然現れたバニラという女にリチュオルという男に、ヒーローに変身した自分にリアクションをする暇もない。

「ご、ごめん。一個ずつ説明するわ、まずは」

「俺の名前を知っていた理由は?」

「…貴方の手に傷跡みたいなのあるでしょ?」

「傷跡? これ?」

晴彦は自分の掌の痣を見せる。

「やっぱりね……」

バニラは痣を睨む。罪悪感を覚えたかのように。

「晴彦くんこの痣ね、私のせいなの」

「バニラの?」

「前世でね、晴彦くんと私は主従関係だったの。だから私敵から晴彦くんを守ろうとしたけど、守れなくて……この痣は敵の攻撃を受けて出来たものなの。どうしても消えない、ね」

「前世の傷……」

自分が十六年見てきた掌の傷は自分に前世がある証だったのだ。前世で受けた傷は生まれ変わっても遺るという話は聞いたことはあるが本当だとは思ってもみなかった。

「私はこの時代に到着した時、すぐにこの街の役所や病院でこの傷のある子供が生まれていないか探したわ。晴彦くんが産まれた病院に忍び込んで産まれた赤ちゃんの資料を漁ったら掌に火傷のような珍しい痣の赤ちゃんのデータ、つまり晴彦くんのデータを見つけたの」

「それで俺の名前を知ってたんだ」

バニラが晴彦の名を知っている理由はこれでわかった。

「あれ? さっきこの時代って言ったけど、バニラってタイムスリップしてきたの?」

晴彦はバニラの説明にひっかかる。

「私は前世の晴彦くんが……死んだ時に未来に転送されたの。晴彦くんや他の騎士の生まれ変わり達を探すために」

「バニラ……」

バニラの言っていることはお伽噺のように気の遠くなるものだったが、嘘や他人事のようには思えなかった。

「俺がバニラが探してる騎士の生まれ変わりの一人なんだね」

「そうよ! この時代に生まれ変わった騎士達と王子(プリンス)を見つけ出すのが私の使命よ」

「じゃあさ、続けて訊くけどナントカ装置って?」

「回路維持元装置。それはね」

バニラは続けて回路維持元装置の説明を始めようとする。しかし、阻まれた。

「明星、何してるんだ?」

「!?」

自分と同じく学校帰りの大場セイラに。



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