第Ⅱ章
Ⅱ プロローグ
「うわ~ダルマがいたぞー!」
「押しつぶされる前にやっつけろ!」
そう言ってその辺に落ちている石を投げつけてくる同い年の子供たち。
ホントウザい。
でもそんなことを言おうものなら余計に悪化するから我慢する。
私が耐えれば、いずれこんなこと終わるだろうから。
「やめなよ」
そんな中、変な正義感を振りかざしてくる奴がいる。
私がこういう扱いを受けていると、どこで見ているのか必ずと言っていいほど彼が来てくれる。
認めなくないけれど、彼が来るとどこかホッとする自分が居る。
「ちぇっ、つまんねーの。もう行こうぜ」
彼が登場するといわゆるいじめっ子たちは退散していく。
別に彼は目立つ方ではないんだけど、なぜか彼がやめろというと素直に聞くんだよね。
「大丈夫? しおたん?」
そう言って彼は私に手を伸ばす。
その手を私はいつも無言で払いのける。
彼はそれでも笑顔で声をかけてくれる。
「どうしたの、しおたん? 機嫌悪いじゃん」
「しおたん言うなしっ!」
私は立ち上がり、お尻についた砂を手で払った。
「えー、だってしおたんはしおたんだしなー」
それでも彼はケラケラと笑いながら話しかけてくる。
「ば、馬鹿にしないでよっ!」
本当は嬉しいんだけど、恥ずかしさからいつも怒ってしまう。
「してないよー」
だけど彼はそれでも笑顔を崩さない。
それに対して私はついつい言い返してしまうんだ。
「嘘っ! ホントは私のことデブとかダルマとか思ってるんでしょ」
言っていて自分で胸が痛くなる。
だけど彼はそれでもニコニコと笑う。
「うーん。しおたんって結構可愛いと思うよ。もっと自信持ちなよ」
そう言って頭をポンポンと撫でてくれた。
私は思わず赤面してしまう。
何で私っていつも素直になれないんだろう。
こんな体形でいっつもいじめられているから、天邪鬼な性格になってしまったのは自分でもわかってるつもり。
彼に対してもいっつもそっけない態度をとってしまう。
本当は笑顔で「ありがとう」って言いたいのに。
でもこのあだ名は解せないのよ。なんか焼肉屋さんのメニューとかで出てきそうだし。
決して悪気があって言ってるわけじゃないし、名前をもじってるっていうのは分かってるんだけど。
あと、いつもしてくるこの頭ポンポン。
け、決して嫌って訳じゃないんだけど、同い年なのに、何だか年下みたいな扱いをされているのが私は気に食わないのよ。というか最初に出会った時もそんな感じで扱われたし。
だから、いつも彼がこうしてきたら私はこう言い返しちゃうんだ。
「子供扱いしないでよっ!」って。
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