第44話 大食の姉

迂闊だった。

近づくべきではなかった。

知性の無い怪物は、己の防衛本能に則り、もう一人の化け物を記憶した。

胸の一文字の傷を与えて来た一人。

そしてもう一人

腹部少し下の部分からの痛みの噴出が止まらない。

この傷と同じだ。

この傷を受けた時も、体液の噴出が止まらなかった。

見えた剣先が、その技が早く。

深く、何より流れるようなその動きが記憶されている。

水路内ではケタケタと笑い声が響く。

食いたい

その本能だけがツインズである、大食の姉が考える全て。

食うためには、力が要る。

あの二人の化け物を倒す力が必要だ。

白の一人技は見えた。早さも大した事は無かった。

だがやられた。

赤の一人の方は見えなかった。

その斬撃が何処から来たのか?

いつ切られたのか?

かろうじて見えた技を白に破られた。

だから。力が要る。

殺し、食うための力が要る。

さぞあの白は、美味い筈だ。

あの赤は、もっと美味い筈だ。

力が要る。

力は技だ。

あの白と赤を倒すために技が要る。

人を殺すための効率化。

この凶刃をあの二人の胸に突き立てるために必要な事。

そして化け物は記憶する。

最強の二人から得た傷を元に。

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