第10話

下から吹き上げる風、それは転移魔符が作り出す転移風とは違う。

先輩によると転移風は嵐のように荒れると聞いた、多分緩やかで優しい風は転移風ではない。

首を傾げていると、サシャルが私に聞いてきた。「この風がなんだか分かるか?」


サシャルの問いに首を降って答える。

「これは、妖精たちの起こす風だ」


オズファットが答えた。

オスファットは妖精フェアリー術士テイマーだった。なるほど。

「それで?」

「妖精たちに連れてって貰う」

「どこに?」

「目的地に」


口を噤んだオズファットのかわりにサシャルが答えた。

「便利だろ?」


オズファットの使える妖精術についてだろうか。

「何が?」

「もちろん妖精術だよ」

「便利なんじゃない?」

「ははっ、まぁもうすぐ準備ができるぞ」

「はぁ」


すると急に風が止んだ。その代わりに手のひらサイズの光る球が私たちの周りを飛び回っている。

「お、見えるのか?」

「これが?」


光る球を指さして言うとオズファットがサシャルよりも早く答えた。

「それは妖精だ」

「妖精」

「へぇー」

「風の妖精シルフだ」

「俺は見えないんだよなぁ」


サシャルは妖精が見えないという。

「当たり前だ」

「なんで?」

「魔力の低い者には妖精は見えない」

「ま、俺は剣士だからなぁ」

「なるほど?」

「そこは知らないか?」

「うん」

「剣士はただの剣士だ。魔力が高くて魔術が使える剣士は魔剣士マギソードマンとかのことだな」


なるほど、サシャルは魔術が使えないただの剣士ってことだ。

「その憐れむような視線をやめてくれ。俺だって魔力を高める訓練とやらをしたさ」

「効果がまるで見られなかったんだよね。僕はサシャルよりかは多いけど、魔術系の職業には向いてなかったし」

「なるほど」



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