第14話



 紗弥は最近の高志の行動に違和感を感じていた。

 スマホで高志にメッセージを送った後、紗弥はため息を吐いて高志のベッドに横になり、枕を抱く。


「はぁ……なんか修学旅行から帰ってから高志と居る回数が減ってるような……」


 そんな事を呟いていると、部屋のドアが少し開きチャコが中に入ってきた。


「にゃ!」


「ん? どうしたの~チャコちゃん」


「ゴロゴロ~」


 チャコは喉を鳴らしながら、紗弥の側にやってきて体を擦り付ける。


「はいはい、甘えたいのねぇ~」


「にゃぁ~」


「はぁ……高志もこれくらい甘えてくれても良いのに……」


 紗弥はそんな事を呟きながら、チャコの体を撫でる。 本当は自分が高志に頭を撫でて欲しい、そんな事を考えながら、紗弥は高志の帰りを待つ。

 そして、数十分後……。


「ただいまぁ~」


「あ、帰ってきた」


 一階の玄関から高志の声が聞こえ、紗弥はベッドから立ち上がり、チャコを抱っこして一階に下りていく。 

「おかえり」


「ただいま、チャコもただいま」


 そう言って高志は紗弥に抱っこされているチャコの頭を撫でる。

 

「今日は何してたの?」


「ん……あぁ……ちょっと優一と話しがあってさ……そ、それより今日も勉強するだろ? 早く部屋に行こうぜ」


「う、うん」


 怪しい……。

 紗弥はそんな事を思ってしまった。

 話しを反らされた感じがするし、なんだか慌てている感じもあった高志。

 そんな高志に対して疑いの視線を向けてしまう紗弥。 好きな人を疑うなんて事はあまりしたくはない紗弥。 しかし、明らかに怪しい。


「えっと……古文の範囲はこんなもんか……次は……」


「ねぇ高志」


「ん? どうした紗弥?」


 高志の部屋で勉強を始めて一時間が経とうとした頃、紗弥は高志に尋ねた。


「今日は那須君と何をしてたの?」


「え……えっと……ちょっとファーストフード店で話しをな……」


「へぇ~、どんな話し?」


「ど、どうでも良い話しだよ」


「ふぅ~ん」


「さ、さぁ勉強しようぜ! 来週はテストだからな!」


「……」


 また話しを反らされてしまった紗弥。

 そんな高志をますます怪しく思ってしまう。

 まさか浮気?

 なんて事を考えてしまう紗弥だが、高志に限ってそんなことは無いかと別な事を考える。


「ねぇ高志」


「な、なんだ?」


「私に隠してる事……ある?」


「え……な、なななないよ……」


「じゃあなんで目が泳いでるの?」


 そう言われた高志は目を泳がすのをやめ、真っ直ぐに紗弥を見る。

 

「こ、これが嘘を付いている目に見えるか?」


「………うん」


 そう紗弥が言った途端、高志は机に顔をぶつける。


「そ、そんな風に見えた?」


「いや……あの……私も信じてるけど……なんか言動とか怪しいし……」


「ほ、本当に何も無いから!」


「ホント?」


「本当だって! 信じてくれよ!」


 必死にそう言ってくる高志を見て、紗弥はチャンスだと思った。


「じゃぁ……信じてあげるから……」


「な、なんだ?」


「明日は一緒に帰ろうね」


 紗弥は満面の笑みで高志にそういう。

 最近は一緒に帰れて居ない高志と紗弥。

 そろそろ一緒に帰りたいと思った紗弥は、高志にそう提案する。


「あ、あぁ! そんな事なら喜んで!」


「じゃあ、この話はおしまい。勉強しなきゃね」


「あぁ、そうだな!」


 高志と紗弥は勉強を再開した。

 




 次の日、高志は昨日紗弥と約束した通り、一緒に帰ろうと放課後は何も予定を入れなかった。

 

「高志、帰ろ」


「おう、約束だもんな」


「手もつないでね」


「分かってるよ」


 そんなイチャイチャした二人をクラスメイトはいつもの光景だと感じながら、暖かい目で見守る。

 しかし、一部の男子生徒は……。


「高志めぇ……いつもイチャツキやがってぇ……」


「うひひひ!! オレ、タカシ……コロス」


「ふふふふふふ……この藁人形で……呪って……」


 最近では前以上に嫉妬に狂う男子生徒が増えてきた。 その理由はクリスマスが近いこともあるのだろうが、シンプルにそろそろ彼女を作らないと、高校三年間が彼女無しで終わってしまうという焦りを感じている生徒が多いからだろう。

 男子生徒達が嫉妬の視線を高志に向けていると、赤西と朋香がイチャツキ始める。


「ほら、早く帰るわよ」


「えぇ……」


「なんでそんな嫌そうな顔するのよ!」


「だって……どうせ帰ったらまた勉強だろ……間違えるとお前殴るし……」


「そうしないとアンタが勉強しないからでしょ!!」

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