第9話



 翌日、高志は昨日の瑞稀の事を考えながら学校に登校していた。

 高志にとっての当たり前のこの日常が瑞稀には無い。 そのことを考えると、高志はなんだか瑞稀が可愛そうに思えた。


「よう高志」


「優一か、勉強してるのか? お前赤点ギリギリだろ?」


「まぁ、ぼちぼちだな……最近勉強しろってうるせーのが居るからな……」


「あぁ、芹那ちゃんか……あの子優秀らしいからね」


「あぁ、なんで一年が二年の問題を理解出来るのかがわからねーよ」


 朝の教室で高志と優一はテストの事について話しをする。

 優一はあまり勉強は得意では無い、いつも赤点ギリギリか、赤点を取る。

 高志は平均よりも少し上の点数を取る程度で、紗弥はクラスで二番目に点数が良い。

 その他は、泉は紗弥に続いて三番目にクラスで点数が良く、その下に由美華が続く。

 朋香はクラスで五番目くらいで、以外にもこのクラスで一番点数が良いのは、卓球部の土井だったりする。 赤西と繁村は優一とあまり変わらない。


「赤点なんて取ったら、芹那ちゃんとクリスマス一緒に過ごせないぞ?」


「誰があの変態とクリスマスを過ごすなんて言ったよ」


「あれ? 違うの?」


「ま、まぁ……暇つぶしくらいには考えてたが……」


 歯切れ悪くそう答える優一に高志はニヤニヤしながら言葉を掛ける。


「ほ~そうなんだぁ~」


「んだよ! 文句あるか!」


「別にぃ~、修学旅行の時もちょくちょく電話掛けに行ってたし、なんだかんだ行って……」


「あぁぁ!! うっせぇ!」


 優一は高志の言葉に耐えきれなくなり、怒って自分の席に戻ってしまった。


「素直じゃねーなー」


 そんな優一を見ながら、高志はそう呟く。





「うぅ~テストやだぁ~」


「もう、そうやって私に抱きつくのやめて」


「うぅ~しかも紗弥が冷たい……」


 朝の教室、高志と優一が話しをしている一方で由美華と紗弥は席でじゃれ合っていた。


「テストやだぁ~」


「そんな事言っても仕方ないでしょ。それにテストが終わったら冬休みだし、クリスマスや年末年始もあるのよ」


「そうだけど~」


 いつも通りに紗弥と話す由美華。

 しかし、それはあることから目をそらすだった。

 こうやって話しをしている分には、そのことを考えなくて済むので、こうして紗弥に抱きついたりしている。


「紗弥~クリスマスはやっぱり八重君と?」


「うん、多分」


「はぁ……それじゃあ邪魔するのもあれよね」


「クラスでクリスマス会やるんでしょ?」


「そうだけど~、私は紗弥と居たかった~」


 由美華はそう言いながら、紗弥の机に頭を乗せる。


「ねぇ……それよりも泉君の事は良いの?」


「え……」


 由美華が必死に目を背けようとしていた事を紗弥は尋ねてきた。

 正直由美華はどうすれば良いか分からなくなっていた。


「話しは出来た?」


「なんて話せば良いか……分からなくて……」


「そう……」


 由美華は俯いてそう答える。

 今までこんな感情を男子生徒に抱いたことの無かった由美華。

 修学旅行でのこともあり、なんと話し掛けて良いのか分からなかった。


「まぁ、無理をしろとはいわないけど……由美華から話してあげないと、泉君話しづらいと思うわよ」


「うん……そうよね」


「それに、困ったら私に何でも相談して、友達でしょ?」


「うん……ありがと」


 由美華は紗弥にお礼を言いながら、横目でちらっと泉を見る。

 泉は繁村と何やら話しをしている様子だった。





「泉!」


「えっと……繁村君どうしたの?」


 泉は突然繁村に声を掛けられ少し驚いていた。

 朝から凄い勢いで泉の方にやってきた繁村、その後ろにはため息を吐く土井がおり、泉は一体何のようなのか気になっていた。


「お前、振られたって本当か?」


「え……」


 泉はなんでそのことを繁村が知っているのか不思議だった。

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