第10話

「な、なんでそのことを……」


「いや、優一から聞いた」


「あ……」


 繁村の話しを聞いて泉は納得した。

 まさか繁村にまで広まるなんてと思いながら、泉はは繁村に答える。


「う、うん……アハハ、残念ながらね」


「そうか! 残念だな!!」


「なんで満面の笑みなの?」


 泉にそう言った繁村は満面の笑みだった。

 そんな繁村を見て、土井はため息を吐きながら泉に言う。


「ごめんな、こいつの周りは最近幸せな奴らばっかりで、不幸な奴を見ると嬉しくて仕方ないんだ」


「あぁ……そうなの?」


「まぁ……でもこいつも悪い奴では無い……と思うから許してやってくれ」


「う、うん……」


「こいつもどんどん他の奴らに彼女が出来て羨ましいだけなんだ」


「あぁ……赤西や優一の事かな?」


「あぁ、最近繁村は壊れてきた」


 泉が土井とそんな事を話している間、繁村は鬼のような形相で朋香と赤西の事を見ていた。


「最近リア充を見るとこんな感じなんだ」


「相当やばいんだ……」


 それだけを言いに来たのだろうかと泉が思っていると、再び繁村が泉の方を向く。


「泉! 今日はお前にバイトの勧誘に来たんだ!」


「え? バイト?」


「あぁ! お前もきっと気に入ると思うぞ!」


「どんなバイトなの?」


「クリスマスにカップルを棒状の物で叩くバイトだ! 金は出ないがスカッとするぞ!」


「……えっと……あぁ……な、なるほど」


 一体どんなバイトだよ。

 そんな事を考えながら、泉は苦笑いをする。

 土井はそんな繁村を見ながら再びため息を吐く。


「どうする? このクラスの男子の八割は参加するぞ!」


「あ、あぁ……そ、そうなんだ……」


 このクラスの男子って本当にヤバイ……。

 そんな事を考えながら、泉は満面の笑みで迫ってくる繁村に答える。


「ご、ごめん……僕は良いかな? そ、それにその日はクラスのクリスマス会でしょ?」


「バイトは朝からだから大丈夫だぜ!」


(朝からそんなことするのか)


 絶対にそんな事をしたくないと思った泉は、繁村の誘いを断った。

 繁村は残念そうにしていたが、土井は無言でうんうんとうなずいていた。

 きっと土井も誘われて断ったのだろう。


「そうか、泉もクリスマスで浮き足立っているカップルに制裁を加えたいかと思ったんだが……」


 (別にそんな事を思ってないんだけど……)


「仕方ない、それならおーいお前ら! クリスマスはこの15人でバイトに行くぞぉ!」


「「「「おおぉぉぉぉぉ!!」」」


 ちなみに高志のクラスは男女20人づつとなっている。




「なんだって? クラスのクリスマス会?」


 職員室でカップラーメンを食べていた大石の元に、朋香と赤西がやってきた。

 

「はい、でもクラスの人間全員が入る店ってあんまり無くて……だから教室で出来ないかなーなんて……」


「あー、別に良いが……時間も時間だから、誰か先生が一人は付いてないとな……鍵も掛けなきゃだし」


「あ、じゃあ先生で良いじゃん、どうせクリスマスは暇でしょ?」


「赤西、お前の成績表覚悟してろよ?」


「ごめんなさい素敵な先生、お忙しいとは思いますが。、どうかクリスマスの日お時間いただけないでしょうか?」


「都合の良い奴め……」


 大石はそう言いながら、カップラーメンの汁を飲み干し、赤西と朋香に言う。


「まぁ、自分で言うのもなんだが、赤西の言うとおりクリスマスは特に予定も無い、20時までだったら付き合ってやるよ」


「本当ですか! 先生ありがとうございます!!」


「おう、可愛い生徒のためだからな」


「やっぱり暇なんすね、先生も早く彼女作ったほういいですよ?」


「ただし赤西……お前は可愛い生徒じゃない、成績表……楽しみだな?」


「あぁぁ!! ごめんなさい! 調子に乗りました!!」


 話しを終え、赤西と朋香は職員室を後にしていった。

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