第5話
*
「はぁ……今日も疲れた」
高志は家に帰り、自室のベッドに仰向けになって倒れ込む。
「テストもそうだけど……今月はクリスマスがな……」
高志は紗弥と過ごす初めてのクリスマスの事で悩んでいた。
今まで彼女と一緒にクリスマスなど過ごしたことのない高志にとって、今回のクリスマスは念入りに準備をして紗弥に喜んで欲しいと思っていた。
「うーむ……」
高志は机に座り、メモ帳を広げて考え始める。
クリスマスデートに必要なお金、デートプラン、考えることは多い。
「着ていく服もなぁ……なんかお洒落なのにしたいよなぁ……」
高志はメモ帳に必要な物のリストと、それに掛かる金額を一覧にしてまとめて行く。
デート費用にプレゼント費用、そして自分の身だしなみを整える為の準備費用、どう考えても高志の小遣いでは足りない。
「うーん……絶対足りないなぁ……」
金銭面で悩む高志。
バイトをするにもテスト期間とがっつり被っているので、あまり多くはバイトに入れない。
「短時間で稼げる仕事なんて無いよなぁ……」
高志はそんな事を考えながら、スマホを開いて短期のバイトを探し始める。
工場でのライン作業に、交通量の調査、高志はどのバイトもあまりピンと来ない。
「やっぱりそんな都合の良いバイトなんて無いよなぁ……」
諦めて両親に金を借りようと思っていた高志。
しかし、そんな高志の視線に一件のバイトの募集記事が目に映る。
「ん? なんだこのバイト」
高志が目にしたバイトの内容はこうだった。
【急募! 退屈しのぎの手伝いをしてくれる方募集! 学歴、年齢不問。見事退屈をしのいでくれた方には倍のバイト代をお出し致します】
「なんだ? この胡散臭いバイト……」
しかし、給料は高額だった。
日給二万五千円の単発のバイトは今の高志のとってかなりの好条件。
「場所は……おぉ、ここから近いな……」
バイトの内容はあれだが、背に腹は返られないこの状況。
高志は早速その怪しげなバイト先に電話を掛ける。
「あ、もしもし? すいません、バイト募集のサイトを見まして……はい……はい、そうです……分かりました、じゃあ明日早速……はい、分かりました……」
早速明日バイト先に行くことになった高志、履歴書も何も要らず、とにかく来て欲しいと言われた高志は、少し不安に思いつつも、給料の事を考えてバイト先に行く決意を固めた。
「まぁ、日給二万五千円は破格だしな……それだけあれば……紗弥に良いプレゼントを買ってやれるし……」
高志はニヤニヤしながら頭の中でクリスマスの妄想を繰り広げる。
紗弥がプレゼントの値段を気にするような女の子じゃないと分かってはいる高志だったが、それでも少しでも良い物をプレゼントしたいと金に目が眩んでいた。
「何が良いだろう? ネックレスとか? それともバックか?」
高志は金銭面の安全も確保され、安心してプレゼントを選び始めた。
「紗弥……喜んでくれるかな?」
ただ愛する人の喜ぶ笑顔を思い浮かべながら……。
*
「高志、一緒に帰ろ」
「あ、紗弥ごめんな。今日は用事があって……」
「え? どうしたの? 用事って?」
「あぁ……えっと……」
バイトの日当日、高志は紗弥にバイトの事をどうやって秘密にしようか悩んでいた。
クリスマスデートの資金を集める為にバイトをしているなんて紗弥に知られたら、絶対に紗弥は高志のバイトを止める。
それに、プレゼントはサプライズにしたいので絶対に紗弥に知られる訳にはいかない。
「えっと……ちょっと行くところがあるんだ、今日は先に帰っててくれ」
「うん……良いけど……」
「そ、そんな顔しないでくれよ」
「……うん……大丈夫……でも、ちょっと寂しいな……」
悲しげな表情でそう言ってくる紗弥に高志は心を痛める。
絶対にクリスマスは紗弥にとって最高の一日なるようにしようと心に決め、高志はバイト先に向かう。
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