第4話



 修学旅行から一週間が経過し、高志達の学校では期末テストが近づきつつ合った。

 高志達のクラスでも修学旅行の楽しい雰囲気から、テスト前のピリピリした雰囲気になっていた。


「高志、そこ間違ってるわよ」


「え? あ、本当だ。ありがとう紗弥」


 高志と紗弥は机を合わせてテスト対策の勉強をしていた。

 

「だから、違うって言ってるでしょ!」


「痛っ! 頭を叩くな!」


 朋香は赤西の席の前に座り、赤西に勉強させていた。 そんな二組のカップルを恨めしそうに見る繁村。


「うぅ……クソォ……あいつらばっかり……」


「繁村、そろそろ醜い嫉妬はやめたらどうだ?」


「俺にだけ言うな! 教室の男共を見てみろ! ほとんどが恨みを込めた視線であいつらを見てるんだぞ!」


「……少し前まで俺もこんな感じだったのか」


 土井は教室の男子生徒を見ながらそんな事を思う。

 

「繁村にもいつか良い出会いがあるさ」


「それっていつだよ……」


「………勉強しなきゃね」


「おい! はぐらかすな!!」


 繁村と土井がそんな話しをする隣で、泉はため息を吐きながら窓の外を見つめていた。


「はぁ……」


「おいどうした泉?」


「ん? あぁ、優一……な、なんでも無いよ。それよりも勉強してる?」


「まぁ多少はな……泉は頭良いから余裕だろ?」


「そ、そんな事無いよ、普通だよ」


 窓の外を眺める泉に優一は声を掛ける。

 優一はため息を吐く泉を少し心配していた。

 修学旅行での由美華との一件以来、泉は元気が無い。 優一は、泉を少し煽りすぎただろうかと反省していた。


「まぁ、なんか悩みがあんなら言えよ、相談に乗るからよ」


「ありがとう、でも本当に大丈夫だよ」


「そうか? それよりも……」


 そう優一が言いかけた瞬間、教室のドアが勢いよく開け放たれた。


「優一さん!」


「……」


「なんで無視するんですか!」


「……はぁ……」


「ため息もやめてください!!」


 教室のドアを開けて入ってきたのは芹那だった。

 真っ直ぐに優一の元に駆け寄ってきた。

 優一は顔に手を当ててため息を吐く。


「お前なぁ……教室には来るなと……」


「なんでですか! 折角のお昼休みなのに!」


「どうせ放課後も来るんだろ……周りを見てみろ、この教室にはカップルを見ると襲いかかってくるモンスターが大勢居るんだよ……」


「ん? そんなのどこに居るんです?」


「お前には見えないだろうがな……いっぱい居るんだよ……」


 優一はそう芹那に言うと、芹那を連れて教室の外に逃げて行った。

 

「優一めぇ~……年下の彼女とイチャコラしやがってぇ~」


「帰って来たら殺す!」


「だが、あいつは喧嘩強いぞ?」


「全員で掛かれば怖くない! それにだ、嫉妬に狂った俺たちがどれほどの力を持っているか、あいつに思い知らせてやろう」


「それもそうだな」


 優一が居なくなった教室では、嫉妬に狂ったモンスター(クラスの男達)が不気味な笑みを浮かべ、優一を亡き者にする作戦を立てていた。


「はぁ……もうすぐクリスマスなのに……彼氏欲しいなぁ……」


「かと言って、うちのクラスの男子はあれだし……」


「「「はぁ……出会いが欲しい」」」


 嫉妬に狂うクラスの男子を見ながら、女子達はため息を吐く。


「由美華は良いわよねぇ……モテるから」


「え? そ、そんな事ないよ!」


 一緒に居た由美華が話しを振られる。


「でも、この前も他のクラスの男子に告白されてなかった?」


「あぁ……まぁ……」


「「「ほらぁ~」」」


「べ、別にそんなんじゃ……」


 由美華はそんな事を言いながら、窓の側に居る泉に視線を向ける。

 修学旅行が終わった後も由美華と泉は、あまり会話をしていない。

 由美華は泉の言葉が引っかかっていた。


『……告白する前の……友達だった時の方がお互い良いだろう?』


「……本当に……これで良かったのかな……」


 そんな事を呟きながら、由美華は泉の方を見る。

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