第3話




 放課後の教室、朋香は一人で教室にいた。

 スマホを弄りながら、自分の席に座っている。


「悪い……待たせた」


「遅い! どんだけ私を待たせるのよ!」


「しょうがねーだろ? 先生の手伝いしてたんだよ」


 朋香は赤西を待っていた。

 修学旅行でお互いの気持ちを知った朋香と赤西は、修学旅行が終わってから、一緒に帰る事が多くなっていた。


「腕、大丈夫なの?」


「あぁ、ギブスは後二週間くらいで取れるって言ってたな」


「そう……早く治ると良いわね」


「そうだな……これじゃあ色々不便でなぁ」


 他愛も無い話しをしながら、赤西と朋香は放課後の街中を歩いていた。


「どっか寄り道して行かね? 俺腹減ってさー」


「良いけど、どこ行くの?」


「そこら辺のファミレスで良いよ」


 赤西の提案で近くのファミレスに入る二人。

 放課後と言うこともあり、ファミレスにはちらほら学生の姿もあった。


「えっと……何を食べようかなー」


「ドリンクバーとポテトで良いでしょ?」


「うーん……俺、ストロベリーサンデーも頼もうかな……」


「お腹減ってパフェ注文するって……アンタ女子?」


「良いだろ別に!」


 赤西達はそれぞれ注文を頼み、商品が来るまでドリンクバーの飲み物を飲みながら待っていた。


「はぁ~修学旅行も終わったなぁー」


「そうね、あとちょっとで二年も終わりだし……三年になったら受験があるし……」


「そ、その前に……く、クリスマスがあるな」


「ん? そうね?」


「ちょ、丁度……その日からふ、冬休みだしな!」


「そうね」


「だ、だからさ! あの……クリスマスは俺と!!」


「そうね、クラスのクリスマス会の準備しなきゃね」


「え?」


「この前その話になったじゃない、折角だから皆でクリスマス会しようって……それでなんか知らないけど、私たちが幹事することになったじゃない」


「あ……そう言えば……」


 そこで赤西はこの間の事を思い出した。

 数日前、赤西と朋香のクラスではクリスマスをどうするかで話題になっていた。

 一部を除き、クラスのほとんどがクリスマスを一人で過ごすか、友達と過ごすかだった。

 そのため、どうせならクラスの皆でクリスマス会をしようと言うことになったのだった。


「あんたも良いって言ったじゃ無い」


「そ、そういえば……そうだったな……」


 赤西は男子に脅され、半ば強制的に幹事にされてしまったのだった。


「アンタが幹事になったから、私も女子から煽られて幹事になったんじゃない」


「そ、そうだったな……すまん……」


「良いわよ……でも、どうしようかしらね……二十人以上が入れる大部屋を用意しなきゃだし……」


「そ、そうだな……ハハ……はぁ……」


 クリスマスを朋香と過ごそうと考えていた赤西は、数日前の自分を恨む。

 付き合い始めて始めてのイベントに赤西は気合いを入れていたのだが、それが無駄になってしまった。


「アンタもちゃんと考えなさいよ」


「あ、あぁ……分かってるよ……」


 がっくりと赤西が肩を落とした瞬間、店員が赤西達の席に商品を運んできた。


「ほら、来たわよ」


「あ、あぁ……そうだな……」


 赤西は肩を落としながら、パフェを食べ始める。


「あ、美味い……お前も食べる?」


「え、良いの? じゃあ遠慮無く」


「ほらよ」


「え!?」


 スプーンでパフェをすくい、赤西は朋香の方にスプーンを向ける。

 朋香は突然の出来事に驚き、顔を赤らめる。

 しかし、赤西はショックで少しぼーっとしているせいか、自分のやっていることに気がついていない。


「あ、あんた! こ、ここでそれは……」


「え? 早く食えよ……溶けるぞ」


「わ、分かってるわよ! も、もう……馬鹿……」


 朋香は顔を真っ赤にして、赤西のスプーンに乗ったパフェを食べる。


「あ、ありがと……」


「へ? なんだ、もう少し食べるか?」


「も、もう良いわよ!!」


「ん? なんで怒ってんの?」


「怒ってないわよ!! 馬鹿!」


「怒ってんじゃん……」


 その後も二人はファミレスで放課後の時間を過ごしていた。

 隣のクラスの誰と誰が付き合ったとか、あの先生が課題が多いだとか、他愛も無い話しが続く。


「ねぇ……」


「ん? なんだ?」


「私達って……付き合う前と何か変わった?」


「え? まぁ……いつも喧嘩しなく……なってないな……あ、でも一緒に帰るなんて前は無かっただろ?」


「そうだけど……なんか……恋人同士っぽくない感じしない?」


「そうか? 色々しただろ? 恋人っぽいこと」


「ま、まぁ……したけど……アンタ、それ以降はしたがらないじゃない……」


「へ?」


 顔を真っ赤にして言う朋香の言葉に、赤西は一瞬フリーズしてしまった。

 

「え……あ、あの……き、希望したら出来るんですか?」


「な、なんで聞くのよ!」


「い、いや……そんな言い方だったし……そ、それに……無理にして嫌われたくないし……」


「そ、そんな事で嫌いになんてならないわよ……あ、アンタがスケベなこと知ってるんだから……」


「え? じゃあ……良いの?」


「こ、ここではダメよ!」


「さ、流石にここではしねーよ!!」


「も、もう! スケベ!!」


「なんでだよ!!」


 時間も遅くなり、赤西と朋香はファミレスを後にした。


「はぁ……店決めないとなぁ~」


「まぁ、まだ時間はあるし、大丈夫よ」


「そうだな……」


「ねぇ……」


「ん? なんだよ?」


「早く腕直しなさいよ……」


「はぁ? だから分かってるって……」


「そ、そうしないと……手繋いで帰れないじゃない……」


「え……あ……お、おう……」


 朋香の言葉に、赤西はかなりきゅんときてしまった。 

「と、朋香!!」


「な、何よ、急に……」


 赤西は朋香の方を向き、顔を真っ赤にして朋香に近づく。


「お、俺……お前ともう一回……キスしたい!!」


「なっ……」


 赤西の言葉に朋香は顔を真っ赤にする。


「……い、今?」


「そ、そうだ!」


「……ちょっと来て!」


「え?」


 朋香はそう言うと、赤西を人気の無い裏道に連れて来る。


「ここなら……良いよ」


「え……あ、あの……本当に良いの?」


「良いって言ってるでしょ!」


「は、はいぃ!!」


 しつこく確認したのが気に触ったのか、朋香に怒られてしまう赤西。

 赤西が朋香の肩に優しく触れると、朋香の体はビクッと震えた。


「緊張……してるのか?」


「う、うるさい……馬鹿……」


「だ、抱きしめて良いか?」


「し、したいように……すれば……」


 そう言って顔を真っ赤にして顔を反らす朋香。

 赤西はそんな朋香を抱きしめる。

 すると、朋香が赤西に耳元で囁く。


「……本当は私もしたかったの……」


 その言葉に赤西は更に心臓をドキドキさせながら、朋香の唇に自分の唇を重ねた。

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