第12話 比呂貴チートスキルに目覚める
三日後の朝。比呂貴は目覚める。
「うわぁ。良く寝てしまった。」
比呂貴は何事も無かったかのように起きる。
「あ、ロキ! ようやく気が付いたのね?
もう、三日もずっと寝てたから心配しちゃったわよ。」
横でずっと看病してくれていたレイムが答える。他にもファテマとアイリスもいたが、比呂貴のベットにもたれ掛かって寝ていた。
「ファテマちゃん、アイリスちゃん。起きて、ロキが目を覚ましたわよ。」
「うっ、うーん。」
「ふぁあ。眠いよ。」
二人は目をこすりながら起きてくる。まだ寝ぼけているようである。だんだん目が覚めてきたファテマが比呂貴に声を掛ける。
「そうだ。ロキじゃ! どうなったんじゃ?」
「おはよう。ファテマ。どうやら心配掛けちゃったみたいだね。」
「ロキぃ! もう、ホントにお主は心配掛けさせよってからに。」
ファテマはちょっと涙目でホッとしたようである。そんなファテマと比呂貴を見てアイリスも一段落付いたようである。
「まあ、外傷は無くてひたすら眠っておっただけじゃから大したことは無いとは思っておったが、でも、ずっと寝ておるからちょっとは心配したんじゃぞ。」
さらにファテマは言葉を続ける。
「ごめんなさい!
でも外傷って、流石にあちこちケガはしてたよ。って、あれ? 全部綺麗に治ってる?
どういうこと?」
「それはこちらが聞きたいわ!」
ファテマは比呂貴にツッコミを入れる。
「ん? もしかして!?」
そう言って比呂貴は自分のお尻を触り始める。
「うわぁ。マジか? 三十歳くらいから悩んでいた切れ痔も綺麗に治ってるよ。もしかするともしかして?
ねえ、誰か刃物持ってない?」
「こんなんで良かったらあるけど?」
レイムはカミソリを取り出した。
「ありがとうレイム!」
そう言って比呂貴は自分の指を切り出した。
ジワリと滲み出す血。
「ちょっと何をしておるかロキよ。気でも狂ったか?」
ファテマが心配そうにする。
一分ほどしたら煙が出てきて修復が始まった。
「うわぁ。やっぱり!
実はドラゴンとの戦闘中に大量の返り血を飲んじゃったんだよね。それの影響でドラゴンの特性の一部が覚醒しちゃったのかも。かまいたちが急にレベルアップしたのも魔力数値があがったんだな。」
比呂貴が自己評価で分析を始めた。それに対してファテマが言う。
「なんじゃと?
別にドラゴンの血を飲んだからと言って能力に覚醒するとか聞いたこと無いぞ?」
「うん。私も聞いたことないわ。」
レイムも相槌を打つ。
「オレの特異体質のスキルってことかな? 血を飲むとその種族の特性が覚醒するっていう。まるっきしチートだな。」
「だったら、私の血も飲んでみる?」
レイムが言う。
「あ、いや、お断りします。レイムの血を飲んじゃったらポンコツまで覚醒しちゃいそうだ。」
「アハハ。それもそうね。ポンコツが覚醒しちゃったらとても面倒だわ。って、なにサラッと酷い事言ってるのよう!」
レイムは比呂貴をポカポカ叩く。
「そういやドラゴンはどうなったの?」
比呂貴はそんなレイムを置いといてみんなに尋ねる。
「それは比呂貴がやっつけたよ。ちゃんと二体ともね。」
レイムが答える。
「いやー、本当に凄かったぞ。一体目のドラゴンは首を刎ねて(はねて)地面を抉り(えぐり)、二体目のドラゴンはカチコチに凍らせて粉々に木っ端微塵じゃ!」
ファテマは嬉しそうに身振り手振りしっぽもモフモフさせて説明してくれた。
「ふう。なるほど。それを聞いてさらに安心したよ。まさか首都エンデルにドラゴンなんだもん。肝が冷えたよ。
でも、さすがに建物も倒壊してたし犠牲者はそれなりに出たよな………。」
「ふむ。そうじゃな。
でもそれはお主の責任ではないぞ。むしろ良くやったと思う。」
「いや、みんながしっかり時間を稼いでくれたお掛けだよ。っていうか、アイリス! めっちゃ凄いじゃん!
あんな魔法をガツガツ使えるなんて!」
「え? ちょっと急に話を振らないでよ。恥ずかしいじゃん。」
比呂貴にべた褒めされたアイリス。かなり照れている。はっきり言って可愛い。
「そういや、話し込んでで今さらだけど、ここってどこ?」
比呂貴は話題を変えた。
「王国の城内にある個室の医務室だよ。あ、私、お医者さん呼んでくるね。」
レイムはそう言って外へ出て行った。
ほどなくて、レイムと医者と看護師らしき人がふたり、合計三人が部屋に入ってきた。そして医者が比呂貴に言う。
「大丈夫でしたか? いやー、本当に良かったです。
特に外傷はありませんでしたので、私としては特に何もせずこの部屋で休んで頂いていたのですが、気が付かれて本当に良かったです。」
「いえいえ、心配をお掛けしました。」
そう言って、比呂貴はベットに座ったままだったがお辞儀をした。
「もう、街は大盛り上がりですよ。新たな英雄の誕生だってことに。」
医者はさらに言う。
「そうじゃぞ! お主が倒れてから儂らもいろいろと大変じゃったんだからな!
色んな人からいろんなことを、あれこれ聞かれていて疲れたわい!」
医者の言葉に反応してファテマは答える。
「え? そんなにですか?」
「そんなにです。英雄の誕生だとかいろいろと言われていますよ。
それでですね。気が付かれたら国王がお会いしたいとおっしゃっています。謁見をお受けして頂けませんか?」
医者は比呂貴に依頼する。
「なんと、そんな国王に拝見できるなんてとても光栄です。ぜひともお願いします。」
「承知しました。それではその旨報告致します。準備が出来ましたらまたお呼び致しますね。
そう言えば、お腹は減りませんか? ぜひ食事でも召し上がりながらお待ちください。」
「ありがとうございます。三日ぶりなので柔らかい食事を頂けると助かります。」
「わかりました。料理長へはその旨伝えましょう。あと、お嬢さま方も一緒に食べますかね?」
医者の言葉に三人は各々頷いた。
そして食事を終えてのんびりしとしていた四人。そこへ従者らしき人が数名入ってきた。
「皆さま。お手数なのですが、これから着替えをお願いします。国王の謁見は原則皆さま王国の正装をして頂くことになっております。」
「あ、着替えるんだったらついでにお風呂も入れないの? 流石にちょっと匂うかも。」
比呂貴は従者に依頼する。
「ええ、それはもちろん構いません。それでしたらロキ様はこちらへ。後の三人のお嬢さま方はあちらへ。」
いったん別れる四人。一通り準備をして謁見の間の入り口で再び四人が揃う。謁見の正装はというと、ギリシャ神話に出てくるようなそんな衣装だった。かなりこじゃれた感じである。
「ちょっと、ファテマとアイリスってばぶかぶかじゃん。でも、それも可愛いかも。」
比呂貴がふたりを見て感想を言う。すると、従者が申し訳なさそうに弁明した。
「も、申し訳ありません。本来、お子様が謁見の間に入るなど想定しておらず、サイズは大人用しかありません。
通常の方法で衣装を製作すると三十日はかかるもので、急いで大人用から仕立て直したのであります。」
『あっ、別に責めているわけじゃないんだけど………。』
比呂貴は苦笑いしており、今度はレイムに声を掛けた。
「レイムは、流石サキュバスだな。そういう系の衣装はホントになんでも似合うな。」
「フフフ。そうでしょうそうでしょう! もっと誉めてもいいですよ。ロキさん!」
レイムはドヤ顔で謎のポーズを取っている。そんなレイムに比呂貴はボソッとツッコミを入れる。
「せっかくカッコいい衣装着てるんだから、ポンコツは表に出しちゃダメだからね。」
「なっ!? そんなことしないわよ! 相変わらず一言多いわね!」
「儂らは置いといて、お主もなかなか似合っておるではないか!」
ファテマはそう言って、何故か比呂貴の腰辺りをグーで軽く殴った。
「そうね、私もそう思うわ!」
アイリスもそう言って、ファテマと同じように比呂貴の腰辺りを軽くグーで殴る。
「なっ、なぜ殴られる!?」
比呂貴は理不尽さを感じでいた。
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