第10話 みんなで一丸となって

 そして比呂貴はみんなに再確認を取る。

「まずはレイム。確認したいんだけど。」

「なっ、なにかしら?」

「確か、空を飛べるんだよね? オレを抱えて飛ぶことは可能か?」

「うん。それは大丈夫よ。だけど、ファテマちゃんのように早くは飛べないわよ?」

「よし、それで十分だ。」


「次にアイリス!」

「うん。なに?」

「ぶっちゃけ魔法はどれくらい使えるの?」

「えっと、まあ、今ドラゴンが打ってるファイアボールくらいの威力で攻撃魔法は使えるよ。他に水や氷系の魔法も大丈夫だよ。」

「マジか? めっちゃ優秀じゃん!

 だったら、アイリスには囮になって欲しい。ぶっちゃけドラゴンが二体なので同時に相手はできないから、そのうちの一体を挑発して引きつけて置いてほしい。

 できるか?」

「ロキも無茶言うわね。出来る出来ないで言ったら、出来ないに決まってるでしょ!

 でも、この場合、もうやるしかないのは分かってる。頑張るしかないわ。」

「ありがとう。いい返事だ。最高だよ!」


「最後にファテマ!」

「ふむ。儂は何をすれば良いかのう?」

「うん。ユニコーンの姿になってアイリスの足になってあげて欲しい。まずは空を飛んでドラゴンを挑発しながらエンデルから連れ去って欲しい。あいつらの目的が二人である以上、このままここに居られないしね。出来るだけ人のいないところで応戦して欲しいんだ。


 それでその際は、出来るだけファテマは魔力も体力も温存しておいて。オレは後からレイムと一緒にみんなのところへ向かう。

 その後はドラゴンの一体と戦うことになるけど、もし、オレが負けてしまったらアイリスとレイムを連れて一目散に逃げて欲しいんだ。」


「ロキよ。それって。」

 ファテマが何か言おうとしたが、それを遮って比呂貴が続ける。

「現状、オレの魔法じゃ、ドラゴンの背中にでも乗らないと確実に発動できないんだよ。そういう意味だと、レイムにもかなり無茶はさせることになるけどね。」

「うん。私も頑張るわよ。ポンコツ返上するんだから!」

 レイムはポーズを取りながら言う。


「よし、じゃあ作戦と呼べるほどでもないんだけど、実行に移しますか?

 ガチモンのドラゴン退治だ!」

 比呂貴が三人に声を掛ける。その声に三人はニヤリとしながらも真剣な表情で頷く。



 ファテマがユニコーンの姿になりアイリスを乗せる。

「よし、アイリよ。まずは我らから行くとするかのう。」

「うん。お姉ちゃん!」

 そう言って二人は空を飛んでドラゴンの付近まで行く。アイリスは風の魔法を放ちドラゴンを挑発した。


 ドラゴンの一体はファテマとアイリスに気付く。そして一目散に飛んでいき、二人に向かってファイアボールを投げつける。

 そんな中途半端に放ったファイアボールでは流石にファテマには当たらない。ファテマは華麗によける。その後、ファテマはエンデルから逃げるように空を駆けていくのである。

 先ほどファイアボールを放ったドラゴンはそのまま二人に付いて行く。それを見たもう一体のドラゴンも後を追いかけて行った。


「さすがファテマだな。以前、ドラゴンを追っ払っただけあるよ。まんまとドラゴンを連れて行ってくれたな。

 街はまだまだ混乱中だけど、それは流石に王国の役人や兵士さんたちに任せるとして、さて、オレらも行きますかね?」

「ええ、二人にだけ良いカッコさせないわよ。私も活躍するんだから!

 って、私は戦うわけじゃないんだけどね。」

 そう言いながら、レイムは自分の二倍はあるような翼を身体から出した。それはコウモリのような翼であった。


「おおお、凄いな! レイム。

 コウモリのような翼だけど、如何にもサキュバスって感じで似合ってんじゃん。可愛いと思うぞ。」

「ちょっ、何言ってんのよ。こんな時に!」

 レイムは照れながらも比呂貴を抱き抱える。俗に言うお姫様抱っこである。


「アハハ。これってお姫様抱っこじゃん! めっちゃ照れちゃうね。」

 比呂貴が言う。レイムはさらに赤くなりながら言う。

「もう、いちいち変なこと言わないでよ! 集中できないでしょう。ほら、もう行くからね!」

 そう言ってレイムは空を飛んで、二人を追いかけるのである。


 城壁の外の西側は広く草原が広がっていた。そこでファテマとアイリスは地上と空中をうまく使いながらドラゴンの攻撃を避けていた。そして時折アイリスは反撃を行い、なんとか持ち堪えているようである。

 ドラゴンは一体だけが執拗に二人に攻撃をしている。もう一体は近くで見ているだけのようである。

 この光景を見るだけでも、攻撃をしているドラゴンはほぼ前回ファテマが追っ払ったドラゴンで間違いないだろう。


 そして、レイムと比呂貴はファテマとアイリスがいる近辺の上空まで来ていた。

「いやー、実際のところどうやってドラゴンに乗れば良いかはノープランだったんだよねぇ。でも、休んでいる方のドラゴンに近づいて貰ってオレを放り投げてくれたら大丈夫そうだな。これはめっちゃラッキーだわ。」


「ちょっと、放り投げたらとか簡単に言っちゃってくれるけど、あんた結構重いんだからね。そんな簡単に投げられないわよ。」

「いいよいいよ、そんなの適当で。ちょっと上の方から落としてくれれば、後はこっちでなんとかするから。

 オレのことを落としたら後はどっかに隠れててね。」

「う、うん。わかったわ。」


 レイムはもう一体のほうのドラゴンの上空を飛んでいる。一応、ドラゴンには気付かれないように注意しているが、どうやら気付かれることはなさそうだ。ドラゴンはファテマたちの戦闘を集中して見ているようである。

「ようし、良い感じで飛べているよ。もうちょっと、もうちょっと………。

 今だ、レイム離して!」

「わかったわ。気を付けてね!」

 そう言ってレイムは比呂貴を手放した。放物線上に落ちていく比呂貴。そしてドラゴンの背中に見事に着地する。


「ふう。流石はオレ。計算バッチリじゃん!」

 思わず声に出して言ってしまう比呂貴である。そしてドラゴンはそんな比呂貴に気付く。その後、激しく身体を揺らし比呂貴を振り払おうとする。

 比呂貴はせっかくドラゴンの背中に乗ったのに簡単に振り払われるはずもなく何とかドラゴンにしがみついている。


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