第2話 空の旅。それはまさに………
そして午後になる。宿屋の入り口で比呂貴はみんなを見送る。すでにファテマはユニコーンの姿になり、レイムとアイリスを乗せている。
「では行ってくるぞ!」
ファテマが挨拶を交わす。
「うん。行ってらっしゃい。気を付けてね! くれぐれも安全運転で!」
「わかっておる。」
そう言ってファテマは飛び立っていった。あっという間に見えなくなる。
「凄いスピードだ。レイムたちは大丈夫かな………。
さて、オレは勉強でもしますかね。」
比呂貴はボソッと独り言をこぼして自分の部屋に戻っていく。
『さて、文字の勉強だが、数字はだいたいわかってきた。十進数での表記だし、数えやすいしわかりやすい。
あと、文字は基本的に表音文字っぽいね。英語と同じだ。会話は日本語で通じているんだから基本的には単語を覚えていけば良いだけのはず。でも、会話が成立しているのに文字がわからないって違和感が半端ないな。』
そして、絵本と教材とあとは、まだ見てもわからない辞書を見比べながらどんどんと読書をしていく比呂貴であった。
『この調子で読書をしながら、文字の書き写しとかしていたら自然とわかってくるでしょう。頑張れオレ。負けるなオレ。勉強そのものは嫌いじゃないからな!
少なくともレイムにバカにされないくらいにはなっておかないと………。』
そう言って比呂貴はファテマたちが帰ってくるまで勉強をしているのであった。
一方でファテマたちはというと、一時間ほど走って少し休憩をしていた。
「ゲレゲレベレーーー。」
レイムは道なき道のところで壮大にリバースしていた。
「レイムよ。まだ走って一時間ほどじゃぞ? 情けないのう。」
「ふぁっ、ファテマさん。スピードが半端ないっす。気持ち悪いっす。こればっかりはロキの言うことの方が正しかったわ。」
「何を失礼な。アイリは別にピンピンしておろう?」
「そうだよ。お姉ちゃんの背中、めっちゃ気持ちいいじゃん。私、お姉ちゃんと空を飛ぶのって大好きなんだよね!」
アイリスは特段何も無かったように普通にしている。意外とスピード狂なのかもしれない。
「せ、せっかくアイリスちゃんに抱きついて貰っているポジションなのにぜんぜんそれを感じ取ってる余裕が無いんだけど………。
むしろ、いろいろと命の危険が………。」
「ちょっと、レイム。またそんなこと思ってるわけ。マジでキモいわ。」
アイリスが軽蔑たっぷり虫を見る眼でレイムを見ている。
「ファア。そのゴミを見る目も可愛いよ! あ、でも、今はホントかなり無理!」
そう言ってレイムはまたリバースを始めた。
「というか、そろそろ行きたいと思っておるんじゃが。」
ファテマがレイムにいう。
「無理無理無理! ぶっちゃけまだ平衡感覚戻ってないよ!」
「ちょっとレイムってば情けないんじゃないの?
じゃあ、今度は私に捕まってて良いから早く行くよ!」
必死に拒否るレイムにアイリスはトドメの一言を浴びせる。
「え? マジで? それなら耐えられるかも!?」
間違いなく耐えられるはずもないのだが、アイリスにそそのかされて出発した一同である。
もう一度休憩を取って、そしてなんとかドルクマン王国の城門までたどり着いた。なんだかんだで四時間くらい掛かって到着した。
「もう、私吐けるものが残っていないわ。これから吐くのは体液よ体液。ってか、頭がグルグルしてりゅぅ。」
レイムはフラフラしながらつぶやく。
「って、レイムよ。お主にしっかりして貰わなんだら儂ら右も左もわからんぞ。」
「ほら、レイム。しっかりして!」
二人はレイムのケツを叩くように言う。
「わっ、ワタシの屍を乗り越えていって!
って、確かに冗談を言っている場合ではないわね。まだ、頭がぐらぐらしてるからゆっくりでお願いね。」
「ふむ。わかっておる。」
そして、三人はフラフラしながら城門内に入っていく。
「ふう。だいぶ意識がはっきりしてきたわ。ホントにもう死んじゃうかと思ったわ。道中あんまり記憶が無い………。
まあ、そんなことは置いといて宿よね。三人だし家族向けの宿の方が良いわね。」
そう言って2軒ほど回ったが満室だった。結局のところ前回比呂貴と泊まった宿に来てしまった。
「ツインのお部屋なら空いておりますが如何しますか?」
「あ、じゃあそれで!」
レイムはその部屋にすることにした。
「いやー、ゴメンね。閑散期なのに微妙に混んでるよね。」
レイムが申し訳なさそうに二人に言う。
「まあ、それはしょうがない事じゃ。レイムのせいではあるまい。」
「じゃあ、私はそこのソファーで寝るから二人はベットを使って!」
「何を言っておる。儂らは二人でひとつのベットを使うからレイムはもう一つのベットを使うが良い。
一番図体が大きいし、それに疲れておるじゃろう?」
「え? ファテマさん優しい!
でも、一緒に寝るんだったら、私、アイリスちゃんと一緒に寝たい!」
「そんなの却下に決まってるじゃん。相変わらずレイムってマジでキモいよ。」
アイリスは速攻で無慈悲に言い放つ。
「で、ですよねぇ。ハハハ。でもいつか私も一緒に寝てやるんだから!」
変なところで前向きなレイムである。
その後はさすがにみんな疲れていたらしくすぐに眠りについてしまった。
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