第3話 冒険者登録とお待ちかねの魔力検査
翌朝。
軽く朝食を済ませた三人は早速冒険者登録に来ていた。混み始める前だったので書類提出はすぐに完了した。
そしてもう一つの目的である魔力検査である。
「ロキが言ってたんだけど、アイリスちゃんって完全属性の特異体質なんだよね?」
「うん。そうみたい。まあ、お父さんがそう言ってただけだから実際のところはわからないけどね。
でも、ちゃんと検査するんだからわかるよね。私も楽しみなんだ。」
「ふむ。ではアイリは楽しみに取っておいて、先に儂からやろうかのう。」
そう言ってファテマは水晶玉に手を当てる。
「ファテマさん。内の属性は風・空・地です。外の属性は光です。魔力は百三十です。」
係りの人が読み上げた。
「ふむ。まあこんなもんじゃろうか?」
「良かった。ファテマさんよりも魔力低かったら魔族の立場が無かったわ。しかも私、サキュバスの中でもちょっと低いと思うしね。」
レイムがホッとしながら答える。しかし、その一息も束の間であった。
「え? これは本当ですか?」
係りの人は一度目をこすってからもう一度水晶を覗き込む。そして震え声で言う。
「えっと、アイリスさん。内の属性は火・水・風・地・空。外の属性は光と闇。完全属性の特異体質です!」
その言葉にみんながぞろぞろ集まってきた。
そして係りの人は魔力を言う。
「魔力は百七十です!」
『オオオオォォ!』
周りが一斉にどよめき始めた。
「がーーーん! 私魔族なのにアイリスちゃんに魔力値負けちゃったよ!」
でもレイムは何やら嬉しそうである。
「あ、ありがとうございました!」
レイムはお礼を言って、二人の手を引いて急いでその場を立ち去った
そして人目を避けてちょっと遠くのカフェに来ていた。
「アイリスちゃん! やっぱり完全属性の特異体質だったね! 凄いわ! 初めて見たよ!」
「え。うん。まあ、ありがとうね。」
アイリスは苦笑いで答えた。
「なるほど。これはドラゴンに狙われてもしょうがないということじゃな。」
ファテマはボソッと答える。
「うん。まあ、完全属性の特異体質ってのはパパの部下の魔法で知ってたんだけどね。魔力数値は初めて知ったかな。
結構高いのね!
でも、お姉ちゃんの言う通りでドラゴンに狙われているみたいだからもっともっと強くならなきゃね。」
「うむ。儂もいろいろと力になるぞ。一応、儂はドラゴンを追っ払ったことがあるからな!」
ファテマとアイリスは力強く会話している。
「あっ、そっか。それで村を………。
私ったら何を浮かれちゃってんだか。ゴメンね。二人とも。」
レイムはバツの悪そうにしている。
「別に良いわよ。私も自分の事をちゃんと知れたからね。ちょっとは感謝してるよ。」
アイリスは笑顔で答える。
「あ、アイリスちゃん! やっぱり貴女は女神だわ!」
そう言ってレイムはアイリスに抱きつこうとするが、軽くあしらわれるのであった。
もはや漫才化している二人を横目にファテマは提案する。
「ふむ。せっかくここまできたからのう。どうせなら儂の村まで行ってみたいんじゃがどうじゃろうか?
もちろんエルフの村もな。一族が残してくれた財産を確認したいのと、やはり惨状も見ておかねばな。」
「そうよね。お姉ちゃん!
実は私も自分の村がどうなったのかは気になってたんだ。お姉ちゃんから言ってくれて良かった。行こうよ!」
アイリスも答える。そしてレイムはと言うと、
「えっと、村に行くことは良いんですが、いや、とても賛成なんですが………。
ちなみに、村へはどのくらい時間掛かるんですかね?」
「うーん。そうじゃな。ここまで来るくらいのスピード感であれば四時間強というところかのう。
まあ、そこそこゆっくりペースじゃったからな。もっとスピード出せば早く着けるんじゃが。」
「なっ!?
いやいやいやいやいや、もっともっともーーーっとゆっくりペースで良いので、ほんとにゆっくり行きましょう。なんなら野宿しても良いから!
じゃないと、今度こそ私消えちゃうよ!」
「もう、レイムったらだらしないわね。あれよりも遅かったらぜんぜん楽しくないじゃん!
せっかくお姉ちゃんがユニコーンの姿で空を飛んでるのに、私だってたまにしかないんだからね!」
「うっ、天使かと思いきや、悪魔だったアイリスちゃん。魔族の私より立派に悪魔だわ。」
観念したレイムであった。とりあえず来た時のスピード感で村へ行くこととなった。
ファテマとアイリスは冒険者登録所で冒険者のプレートを受け取り、そしていよいよファテマとアイリスの故郷である村へ向かうのであった。
すでに三人はドルクマン王国の城門の外に出て人目の少ないところにいる。
「ファテマちゃん。くれぐれもほどほどでね。まあ、私は半分意識が無い状態だからどうでも良いと言えばそうなんだけど。」
レイムは仏の表情で言う。もはや魔族の威厳はそこにはない。その後、アイリスがレイムにしゃべりかける。
「レイムはなぜか知らないけど、私の事が好きなんでしょ?
私がレイムに抱きついていてあげるからしっかりしなさいよ。私はお姉ちゃん以外に触れたり触れられたりするのは嫌なんだけど、でもまあ、レイムはサキュバスだけあるのか、結構抱きつき心地は良かったんだよね。」
「え? ホントに? なんなら、普段からずっと抱きついてくれても良いよ!」
「いや、それは結構。丁重にお断りします。」
「でもまあ、本当にもったいないんだけど、移動中はぶっちゃけそれどころではないんだけど………。」
そんなふたりの漫才にファテマが割って入る。
「じゃあ、そろそろ行くとするかのう?」
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