ドラゴン再襲来。やっぱりそうなりますよね編

第1話 やったぁ。私もファテマちゃんに乗れる!

 そして馬車を乗ること九時間。ファテマとアイリスが待つ街へ戻って、二人がいるダンの宿屋に来た。

 ファテマがロビーで出迎えてくれた。アイリスはすでに寝てしまっていたようだ。流石に深夜なのでしょうがない。


「ロキよ。早かったではないか。ホントに三日で戻ってくるとは思っていなかったぞ。」

「あはは。それにはちょっと、うーん、いろいろと訳があってね。」

 苦笑いするロキ。レイムはニヤニヤしながら言う。

「いやー、ロキさんったらか弱い私を護ってくれるために公爵に歯向かっていったのよねぇ。カッコよかったわよ!

 すごくクサかったけどね! フフフッ。」

「我ながら、かなり中二クサいことをしたと思ってるけどな。今となってはこっぱずかしい限りだよ。ちょっと黒歴史状態かな。」

 比呂貴は恥ずかしそうにしているが、まんざらでもなさそうである。


「ハハハ。まあ、その勇姿はまた今度ゆっくり聞かせて貰うとして、今日はもう遅いし、馬車旅で疲れておろう。今日はもうゆっくり休むが良い。」

 ファテマが優しく声を掛けてくれる。それに対して比呂貴が答える。

「うん。そうするよ。」

 そうして、比呂貴は部屋に行こうとする。すると、フロントマンが声を掛ける。


「あ、ロキさん。すいません。

 前の部屋はいったんチェックアウトしているんです。で、別の人に貸しちゃってて。

 あと、シングルの部屋もロキさんように一部屋はあるんですが、もう一人の方の分までは無いんですよ。どうしましょうか?」


「あ、そうだったんだ。わざわざ確保して貰っちゃってありがとうね。じゃあ、ツインの部屋はある?」

「あ、あります!」

「じゃあ、そこで良いよ。レイムもそれで良いよね?」

「私は構わないわ。ある程度ロキのそばにいないと魔力貰えないしね。」


 その二人のやりとりにファテマがニヤニヤと答える。

「ほうほう。まだ出会って間もないというのに、この旅で随分と親しくなったようじゃな?

 ちと妬けちゃうのう!」


「なっ!? ぜんぜんそんなこと無いよ!

 オレはファテマさんとその尻尾に一途なんで!」

「わっ、私だってアイリスちゃん一筋なんだからね!」

『この返しも相性ピッタリではないか!』

 ファテマはそう思いながらジト目で二人を見つめる。


 翌日。

 みんなは比呂貴とレイムの部屋に集まっていた。

「で、これからのことなんだけど………。」

 比呂貴が開口一番言う。それに対してファテマが明らかに期待のまなざしで比呂貴を見ている。期待の高さは尻尾の振り方で理解できる。モフモフな尻尾が軽快に左右に振れている。


 そんなファテマを見てだが、心苦しそうに比呂貴は話を続ける。

「えっと、連合王国に行く前にちょっと勉強する時間が欲しいなあって思うんだけど。ダメかな?

 十日、いや七日あればある程度文字が読めるようにしておくから!

 ドルクマン王国でも、やっぱり文字が読めないといろいろと不便なのがわかったからね。

 だっ、ダメかな?」


「うっ。確かにそれも一理あるのう。しばらくは人族の国にいることになりそうだしな。ロキがこのようじゃと、いざって時に大変なことになってしまうやもな………。」

 ファテマは明らかに残念そうであったが比呂貴の言葉に理解を示してくれた。どれだけ残念そうかと言うと、モフモフの尻尾がシュンとなっていることからも見て取れる。


 そんなファテマたちに比呂貴は提案する。

「実はオレ、ドルクマン王国で先に冒険者登録してきたんだよね!」

 そう言って比呂貴は出来立てほやほやのプレートを見せる。その後も話を続ける。

「レイムの話だと、身分証にもなるってことだから二人とも先に冒険者登録しておきなよ。連合王国に行くときに役に立つかもしれないからさ!」


「ふむむ。なるほどな。確かにそれは良いかもな。そういうものはあっても損はしないし。

 アイリも良いよな?」

「うん。お姉ちゃんが冒険者登録するっていうんだったら私も一緒にやる!」

「じゃあ、私は二人の案内をすれば良いわけね! 任せて!

 って、今度はアイリスちゃんとお出かけね。ムフフ。楽しみでしかないわ!」

 レイムもアイリスを見ながら応える。比呂貴が心配そうに突っ込みを入れる。

「おいおい。調子に乗って浄化されるんじゃないぞ。あと、例の公爵にも気を付けろよ。」

「ええ。わかってるわ。見つけたら速攻で逃げるわ!」


「そういや、昨日もちょっと言っておったかもしれんが、例の公爵とはなんじゃ?」

 ファテマが二人に尋ねる。

「あ、それはね。」

 そう言って比呂貴は大広場で起きた公爵との悶着について説明をした。

「なるほどな。であれば、儂もその公爵とやらを蹴散らしてやろうぞ。ロキにできて儂にできないということはなかろうて!」

「ファテマちゃん! 頼もしい! 好き!」

 レイムはそう言ってファテマに抱きついた。


 抱きつくレイムをあやしながら、ファテマはロキに言う。

「なら、お主は早速勉強に励むが良い。儂らは午後にでも出掛けるとしよう。」

 そしてファテマはあやしていたレイムを今度は片手で持ち上げた。

「ひゃん!」

 抱き上げられたレイムは変な声を上げる。


「ふむ。レイムはとても軽いのう。

 これなら儂の足だとドルクマンまでは、二、三時間程度じゃろ。二人を乗せておってもな。向こうで一泊して冒険者登録を済ませてくることにしよう。」

 ファテマはレイムを下ろしながら言った。

「え? 私もファテマちゃんに乗せてくれるの?」

 レイムは期待の眼差しでファテマを見る。

「当然じゃ。流石に馬車で移動しておっては時間もお金も勿体無いわ!」

「やったぁ! まさかユニコーンに乗せて貰えるなんて考えてもみなかったわ。楽しみ!」


 そんなはしゃぐレイムを見て比呂貴は一言。

「いや、レイムよ。ファテマの背中はただの戦場だぞ? 心して乗ったほうが良い。」

「なっ、失礼な! 二人を乗せていくんじゃ。安全運転で行くに決まっておろう。それにドルクマンじゃ。距離も近いしゆっくりと行くことにするからな。」

 そんな比呂貴の言葉にファテマが反論する。

『ファテマのゆっくりはぜんぜん当てにならんのだが………。』

 比呂貴はもはや心の中で呟いた。


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